米食事宅配大手ドアダッシュ(DoorDash)が最大級の取引先である米小売り大手ウォルマート(Walmart)との提携を解消する。
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米食事宅配大手ドアダッシュ(DoorDash)は、ウォルマート店舗からの食料雑貨宅配事業について、2018年から続いてきた同社との業務提携を解消する。内情に詳しい関係者が明らかにした。
匿名を条件にInsiderの取材に応じた関係者によれば、ドアダッシュはウォルマートとの提携関係を「すでに双方にとって有益とは言えず」、さらに「長期契約パートナーとの事業に集中するため」解消する判断を下したという。
同関係者によると、ドアダッシュは8月初頭、ベントンビル(米アーカンソー州のウォルマート本拠)に提携解消を要請する書面を送付。30日の予告期間を経て、9月初旬には提携関係が終了する見込み。
ドアダッシュにコメントを求めたが拒否された。一方、ウォルマートの広報担当は提携関係について、「解消することに両社が合意」したことを認め、「過去数年にわたる提携と当社顧客に対するサポートに対してドアダッシュに感謝します」とコメントした。
ドアダッシュとウォルマートは2018年4月24日に提携を発表。ウォルマートがオンライン受注した食料雑貨を店舗からピックアップして宅配するアトランタ都市圏(米ジョージア州)限定の実証事業からスタートし、その後全米にサービスを拡大した。
ウォルマートはドアダッシュとの提携をはじめ、サードパーティの宅配サービスを活用しつつ、自社のデリバリー部門の構築を進めてきた。
最新の動きとして、ウォルマートが8月18日、自社展開する宅配サービス「スパーク・デリバリー(Spark Delivery)」で、店舗からのピックアップおよび宅配業務を請け負うギグワーカーの手配管理を担ってきたデリバリー・ドライバーズ・インク(Delivery Drivers Inc.)を買収することがInsiderの取材で明らかになった。
ウォルマートの広報担当によれば、スパーク・デリバリーはウォルマートが手がける宅配案件の75%を占め、アメリカ全世帯の84%にサービスを提供している。
また、全米最大の食料雑貨店チェーンであるウォルマートは、食料雑貨の宅配市場まで独占する。
ブルームバーグ・セカンド・メジャーのデータ(2021年6月20日付)によれば、全米の食料雑貨宅配に関する売上高シェアは、ウォルマートが48%を占めてトップ、米食品宅配大手インスタカート(Instacart)の45%をわずかに上回っている。
一方、ドアダッシュは2016年12月から、同社のオンデマンド物流プラットフォームおよび宅配スタッフを提供する加盟店向けサービス「ドアダッシュ・ドライブ(DoorDash Drive)」の拡充を図ってきた。
ドアダッシュのマーチャント(加盟店)は「ダッシャー」と呼ばれる配達ドライバーを労力なしで調達でき、宅配を希望する顧客は(ドアダッシュの介在を意識することなく)マーチャントそれぞれのウェブサイトやアプリから普通に注文するだけで済む。
2022年初頭の株主向け資料によると、2021年第4四半期(10〜12月)、ドアダッシュ・ドライブおよび加盟店企業のウェブサイトやアプリに注文機能を実装する「ストアフロント(Storefront)」のアクティブ利用店舗数は前年同期比70%増加したという。
ドアダッシュの提携先は、チポトレ・メキシカン・グリル(Chipotle Mexican Grill)のような飲食店チェーンにとどまらず、大手コスメ専門店セフォラ(Sephora)、レストラン向けPOS(販売時点情報管理)ソフトウェアのトースト(Toast)、最近ではフェイスブック上でマーケットプレイス機能を提供するメタ・プラットフォームズ(Meta Platforms)など多様な業界に広がっている。
ウォルマートはドアダッシュの提携先としても最大手企業の一つだった。
(翻訳・編集:川村力)