コロナで生まれた「K字型回復」、その全容とメカニズムに迫る

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K字型回復は、相反する傾向を持っている。ある職業や階層が裕福になる一方で、他の階層は貧乏に向かっているという経済状況を指す。

Lightspring/Shutterstock

  • K字型回復とは、特定の業種や個人が景気後退から脱却する一方で、その他の低迷が続く異常な景気回復シナリオだ。
  • K字型回復は事実上経済を二分するものであり、階級、人種、地域、業種間で軋轢を生む。
  • K字型回復は既存の分断や富の格差を明るみに出したうえ、こうした不均衡を一段と悪化させる可能性がある。 

エコノミストは景気後退後の経済動向を予想する際、アルファベットの頭文字を取って◯字型回復と呼ぶことがある。

例えば、U字型回復、V字型回復、W字型回復という言葉を耳にしたことがあるだろうか。これらのアルファベットは、景気回復期の動向をアナリストがグラフに描いたときの形状に由来する。

ここ数十年、さまざまな景気回復を説明するときにこうした◯字型回復という表現が使われてきたが、最近新しいアルファベットが仲間に加わった。これがK字型回復だ。

K字型回復とは何か?

K字型回復とは、景気後退後の回復シナリオの1つであり、経済のあるセグメントが再び成長し始める一方で、ほかのセグメントでは苦戦が続く状況を指す。

この状況をグラフに図示したときに現れる、2つに分岐する斜めの線がアルファベットの「K」に似ていることからこの名がつけられた。

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2方向に乖離するK字回復は、経済と社会の体系的な不平等を示している。

Yuqing Liu/Business Insider

他の◯字型回復と比較するとK字型回復は、将来の経済状態がセクターによって異なる厄介な現象である。

つまり、経済全体が幅広く回復するのではなく、富裕層が素早く回復軌道に乗る一方で、その他ほとんどのセクターが取り残されるのだ。

K字型回復という状態は極めて異例だ。従来景気が落ち込むときは、全ての業種や地域全体が痛みを感じるものであり、最終的に景気が回復する時も同様である。

ある業種や地域への影響がそれ以外よりも大きいことはあっても、国民全体が一体として景気循環の変化を経験するものなのだ。

いったいなぜK字型回復では、景気後退という現象に対してセクターがまちまちな反応を示すのだろうか? 一説によると、景気後退前からすでに存在していた社会的・経済的な格差が、景気後退やその他経済的な打撃を受けて一段と悪化するからだ。

つまり、経済は本質的に二分されているが、景気後退が起きると社会的階級や地域、世代、業種間で、あるいはそれらが相まって亀裂が生じる可能性があるのだ。

K字型回復が特に問題なのは、こうした回復軌道によって経済が分断され、うまくいっている者とそうでない者の格差が断続的に拡大していくことだ。

そしてついにはK字型回復が、経済格差というもともと社会の中に存在していた問題をさらに悪化させるのである。

これまでにK字型回復が起こったことはあるか?

数十年間にわたりV字型、U字型、W字型といった回復軌道は見られたが、K字型回復という概念は、2020年の新型コロナウイルス感染拡大の最中に注目されるようになった。

米国が、回復ペースが経済セグメントによって異なる景気後退に陥ったことは間違いないが、新型コロナウイルスが引き起こした景気後退という独特の性質が、このK字型の回復基調をとりわけ際立たせた。

コロナ不況が近代米国史上で最も非対称な景気後退だったことを考えると、これは驚くに当たらない。

新型コロナウイルス感染拡大がもたらしたK字型回復

新型コロナウイルス感染拡大は経済に明白な亀裂をもたらしていることから、K字型回復という説が一般に受け入れられているのはもっともだ。

この二極化は、失業者とそうでない者、中小企業と大企業、コロナ禍でも好調な業種で働く者と操業停止に追い込まれた業種で働く者など、さまざまな切り口で捉えることができる。

全米商工会議所のスザンヌ・クラーク(Suzanne Clark)会長は、2020年のコロナ禍からの回復期に業種間で大きな分断が生じたと述べている

ハイテクや一部小売業、ソフトウェアサービスなどいち早くコロナ禍から「回復した業種」がある一方で、旅行、娯楽、観光、飲食等なかなか回復できず「支援が必要な業種」があると言う。

シンクタンクのピュー研究所のレポートも、階級、世代、民族間で深刻な分断が生じていることを示唆している。パンデミックの打撃を最も受けたのは、低所得家庭、若年層、黒人、ヒスパニック系だった。

さらに、高所得者や在宅勤務が可能だったサラリーマンと、現場で働かざるを得ない低所得者層や時間給労働者と間でも格差が生じた。

K字型回復 vsその他の回復

最初に述べたとおり、エコノミストが最近、景気回復の分類に新たに加えたのがK字型回復である。

その他の回復についても簡単に見ておこう。

V字型回復:経済が急激に落ち込んだ後に急回復する。景気の底は長期化しない。

U字型回復:経済が急激に落ち込んだ後、しばらく景気低迷が続き、その後最終的に回復する。

W字型回復二番底としても知られる。経済が急激に落ち込んだ後、一時的に回復するがその後再び後退する。

L字型回復:深刻な景気後退に陥り、回復するまでに何年もかかる。

結論

K字型回復とは、景気後退に陥った後、経済のある部分が再び成長軌道に乗る一方、その他の部分が遅れを取る現象を指す。K字型回復は、新型コロナウイルス感染拡大による景気後退から経済が回復の途にあった2020年に、特に顕著だった。

[原文:What a K-shaped recovery means, and how it highlights a nation's economic inequalities

(翻訳・中山桂、編集・長田真)

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