日野自動車の商品トップページには、お詫び文が掲載されている。
撮影:小林優多郎
日野自動車は8月22日、緊急で記者会見を開催。
3月から続くエンジン認証不正問題について、新たに小型トラックに使用していた小型エンジン「N04C(HC-SCR)/2019年モデル」にも不正が見つかったことを明らかにした。
これにともない、日野自動車は、同日より新たに不正が発覚したエンジン搭載の小型トラック「日野デュトロ」 (2019年5月発売以降のモデル、国内市場向け)の出荷を停止するとした。
※なお、同エンジンはトヨタ自動車株式会社 小型トラック「トヨタ・ダイナ」および「トヨタ・トヨエース(2020年3月まで販売)」にも搭載されている。
日野デュトロは「ヒノノニトン」としても知られている、日野自動車の代名詞とも言える車種だ。同車種は積載量が2トンと1.5トンの2パターン存在するが、このうち1.5トンの車種についてはトヨタ製のエンジンを搭載していることから生産は継続される。
7月末時点での不正行為の対象台数は、7万6694台にのぼる。
続く不正「認識が不足していた」
日野自動車の商品サイトには、「出荷停止」の文字が並んでいた。
撮影:三ツ村崇志
日野自動車は、8月2日に、一連の不正行為について特別調査委員会による調査結果を報告したばかり。2003年から約20年にわたり、排ガスなどのデータを偽って提出していたことが明らかになっていた。
今回新たに発覚した不正は、8月3日から実施されていた国土交通省による立入検査の中で明らかになったもの。
調査委員会の結果が出たあとに、新たに不正が確認されたことについて、日野自動車の小木曽聡社長は
「特別調査委員会および自社の調査検証結果をご報告した後に、国土交通省からの指摘で追加の不正行為が判明したことは、大変重大かつ深刻であり、弁解の余地もございません」(小木曽社長)
と述べ、謝罪した。
今回新たに発覚した不正は、エンジンの認証取得に関する排ガスの測定試験における不正だ。
日野自動車によると、本来は複数の測定点ごとに2回以上の計測を実施した上で算出されたデータの提出が求められていたところ、各測定点で1回分の測定データをベースに算出した値を国に申請していたという。
なお、測定回数が規定に達していなかったものの、技術検証の結果、該当エンジンでは排出ガスの規制値を超過している可能性は薄く、現状ではリコールも考えていないという。
記者会見で説明する、日野自動車の小木曽聡代表取締役社長。
会見の画面をキャプチャ
特別調査委員会による検証でもこの不正が発覚しなかった点については、「そもそも測定回数は足りていた(複数回測定していた)という認識」であったため、特別調査委員会に問題意識が共有されていなかったとしている。
「過去の不適正な事例がたくさんあった時代に、規程類に関する整備があまりできていなかったことで、ここに対する認識が不足していました」(小木曽社長)
また、記者会見では、過去の社内の管理状態の悪さにも触れ、「今回の追加案件のようなことは起こりうる状態でした。これを8月2日の段階で全部出せなかったことは、メーカーとして大きな問題だと思っている」と、早急な企業体質の改善への危機感を示していた。
日野自動車では、3月に大型・中型車種に搭載されているエンジンの不正が発覚して以降、すでに多くのラインナップが出荷停止の状態に陥っている。今回の不正によって、新たに小型トラックにもその影響は拡大。
影響台数の累計は、3月の公表時点で約12万台。8月2日の特別調査委員会の段階で、約57万台。そして、今回の不正発覚で約64万台にのぼる。日野自動車によると、国内生産台数の6割に影響が及んでいる状態だという。
なお、業績についての影響は
「(生産停止の)期間がどうなるかにもよりますので、国土交通省に内容の監査・検査をしっかりしていただきながら、ご指示に従ってまいりますので、現時点では期間が読めておりません。
業績については明確にアナウンスできる情報が揃い次第、公表させていただきたいと思っています」(小木曽社長)
と語った。
また、日野自動車は、3カ月以内に、8月2日までに公表した不正問題と合わせて、過去・現在の経営陣について責任の所在を明らかにし、厳正に対処するとしている。
なお、日野自動車の親会社となるトヨタ自動車・豊田章男社長は、新たな不正発覚を受けてコメントを発表している。
「日野自動車が、新たな不正の発覚により、ステークホルダーの皆様の期待や信頼を、再度、大きく損なう事態に至ったことは、同社の親会社としても、株主としても、極めて残念に思います。
長期間に亘りエンジン認証における不正を続けてきた日野は、ステークホルダーの皆さまに認めていただけるのか問われている状況にあると思います。この認識のもと、日野がステークホルダーの皆さまの信頼に足る企業として生まれ変われるのか注視し、見守ってまいりたいと思います」(豊田章男社長)
(文・三ツ村崇志)
編集部より:豊田章男社長のコメントを追記しました。 2022年8月22日 19:57