リンクトインには、実在しないコンテンツが蔓延しているという。
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- Twitterのボットアカウントに注目が集まる中、リンクトインでもフェイクアカウントの問題が密かに広がっていると専門家が指摘している。
- 仮想通貨取引所のバイナンスのCEOは、リンクトインでは何千人もの人が彼のもとで働いていると偽っていると述べた。
- FBIは6月、リンクトインを利用した仮想通貨詐欺について調査中であることを認めた。
ここ数カ月の間、SNSの偽アカウントに関する議論は、イーロン・マスク(Elon Musk)のTwitter買収の件に集中していたが、専門家は別のSNSプラットフォームにも害になる可能性のある偽アカウントが蔓延していると警告した。それがリンクトイン(LinkedIn)だ。
仮想通貨バイナンス(Binance)のチャンポン・ジャオ(Changpeng Zhao)CEOは2022年8月、「リンクトインには、バイナンスの従業員だとプロフィールに書いている人が7000人もいる。だが、本物はわずか50人程度だ」とツイートした。彼はこれらのアカウントを「詐欺師」と呼び、フォロワーに注意するよう呼び掛けた。
リンクトインには「バイナンスの社員」というプロフィールが7000件あるが、そのうち実在するのは50件ほどだ。リンクトインに確認する機能があればいいのにと思った。というわけで、リンクトインには「私が採用責任者だ」という詐欺師がたくさんいる。気をつけて。
実際に、単に経歴をよく見せるため以上の目的で使われることもある。
FBIは6月、リンクトインにおける仮想通貨(暗号資産)詐欺について現在捜査中であることをCNBCに認め、これを「重大な脅威」と表現した。
サイバー犯罪の専門家でアーコス・ラボ(Arkose Labs)のチーフ・クリミナル・オフィサーを務めるブレット・ジョンソン(Brett Johnson)は「デートサイトであれ、リンクトインのような仕事用サイトであれ、我々は訪れるすべてのウェブサイトが登録しているメンバーについて審査していると思い込んでる」と述べた。
ジョンソンは、7000人分におよぶバイナンス従業員という偽プロフィールは「仮想通貨詐欺の一部」の可能性があると見ている。そしてユーザーは「リンクトインを訪れてバイナンスと関係のある人物と繋がっていると考えている。しかし、そうではない。リンクトインはすべてのプロフィールを確認する時間はなく、実際には何も検証していない」と述べている。
スタンフォード大学でSNSでの影響力操作を専門とする研究者、ジョシュ・ゴールドスタイン(Josh Goldstein)は2022年初めに、スタンフォード・インターネット・オブザベートリーのレネ・ディレスタ(Renée DiResta)とともにわずか数週間で、リンクトイン上にAIが生成した1000以上の偽アカウントを見つけ出した。ゴールドスタインによると、これらのアカウントの職歴や学歴は偽りだという。
「これらのアカウントの裏にいる人々が職歴や学歴を偽り、(アカウントを)情報環境に溶け込ませて、リンクトインユーザーへ送るメッセージをより説得力のあるものにしようとしているのだ」と、彼は語った。
「これは、我々の調査で焦点にしているAIが生成したプロフィール写真の使用よりも広域な問題になりかねない。プラットフォームやブランドの評判やユーザーの信頼を損ねる可能性もあるからだ」と、ゴールドステインは付け加えた。
ゴールドステインとジョンソンは、リンクトインは新しいユーザーがある企業での職歴を追加したとしても、その雇用主に通知することはないと指摘した。
リンクトインの広報担当者は、Insiderへのコメントの中で、同社は偽のプロフィールに対処するために努力していると述べている。
「我々は、リンクトイン上での偽アカウントの使用や偽情報などの詐欺行為を認めないという非常に明確なポリシーを持っている。我々は、利用者の安全を守るために日々努力している。これには人間によるレビュー、ユーザーからの報告に加えて自動および手動防御への投資が含まれる。それにより、今回のような偽のプロファイルをより適切に特定し、コミュニティから削除することができる。コミュニティを安全で信頼できるものにするために我々が行っている取り組みについては、ここで詳しく紹介している」
ジョンソンは、リンクトインの偽アカウントの広がりの背景にあるデータについて知りたいと述べた。
「偽プロフィールがどのくらいあるかを知りたい。その数は人々が予測するよりずっと大きい傾向にあるた。だから、これは本当に知るべきことなのだ」とジョンソンは語った。
(翻訳:Makiko Sato、編集:Toshihiko Inoue)