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シェアサイクル「ダイチャリ」が5年で急成長した理由…新型のシェア専用自転車も投入

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ソフトバンク系ハローサイクリングのアプリをダウンロード・登録して使う「ダイチャリ」。この1年で累計ユーザー数は2倍近くに増加した。

撮影:湯田陽子

シェアサイクル大手「ダイチャリ」が急成長している。

ダイチャリは、シナネンモビリティPLUSが手掛けるシェアサイクルサービスで、5年前の2017年8月に提供を開始。その後、急激に実績を伸ばし、2022年6月末には累計利用回数が1300万回以上、累計ユーザー数では74万人を突破した。

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【図1】2022年の実績は、累計利用回数で2021年の約649万回から約1310万回に、累計ユーザー数では2021年の約41万人から約74万人に増加した。

提供:シナネンホールディングス

シナネンモビリティPLUSは8月22日、5周年を迎えるに当たって記者会見を開き、最新の状況を報告するとともに2022年度中に投入する新型車両を発表。ステーション数の拡大や利用者限定のサービスなど、今後の事業戦略についても語った。

いまや「国内最大級」。秘訣は「データ分析」だった

シェアサイクルとは、「ステーション」や「ポート」と呼ばれる専用の自転車貸出・返却場所であれば、好きなところで自転車を借りたり返却したりできるサービスのことだ。

サービスを利用するにはアプリを使うのが一般的で、国内ではソフトバンク系のHELLO CYCLING(ハローサイクリング)とドコモ・バイクシェアがアプリを提供する2大プラットフォーマー。ダイチャリはハローサイクリングに対応しており、1都3県(東京、埼玉、神奈川、千葉)と大阪府を中心に展開している。

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【図2】ダイチャリなど、ハローサイクリングのプラットフォームを利用するシェアサイクルの特徴。

提供:シナネンホールディングス

ハローサイクリングのステーション全国5000カ所のうち、5割超の2600カ所をシナネンモビリティPLUSが設置。同社の親会社シナネンホールディングスによると、ダイチャリ単体でドコモ・バイクシェアのステーション数を上回っており、「自社調べでは、ステーションの数で国内1位」(同社広報IRチーム)という。

さらに、2022年6月末にはダイチャリの台数が1万台を突破し、「国内最大級のシェアリングサービス」(シナネンモビリティPLUS)となった。

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【図3】ステーションの数では国内1位(2022年6月末現在)。ハローサイクリングのステーションの過半数を占めている。

提供:シナネンホールディングス

「国内最大級の規模にまで成長できた大きな理由は、運営ノウハウの蓄積。ユーザーが使いたいときに使える状態にしておくことが非常に重要になるので、それを実現するために(利用状況などの)データ分析にかなり力を入れてきた」

8月22日の会見で、シナネンモビリティPLUSの三橋美和社長はそう語った。

シェアリングサービスのステーションは、駅やコンビニ、公共施設、商業施設などさまざまな場所に設置されているが、コンビニ各社の協力も大きいと三橋氏は話す。

「セブンイレブン、ファミリーマート、ローソンの3社に協力いただけたのが非常に大きい。競合他社同士で協力し合うことはなかなか難しいと聞いていたが、ステーションを相互利用するシェアサイクルサービスに関しては協業しようという意識がとても強く、それが大きく影響した」(三橋氏)

コンビニのほか、商業施設、鉄道会社、マンションやコインパーキングを展開する不動産会社などの用地提供パートナーは2022年6月時点で350以上に上った。

そうした拠点・台数の増加が奏効し、2022年6月の月間利用回数は過去最高の67万回超を記録。今年度中に77万回/月を目指している。

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【図4】東京都、埼玉県、神奈川県、千葉県と大阪府を中心にサービス展開するダイチャリ。展開市町村数では、2018年の18 から2022年には64に拡大した。

提供:シナネンホールディングス

新型の「シェア専用自転車を2022年度中に投入

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シナネンサイクルと共同開発中のシェアサイクル専用自転車。2022年度中に投入予定。

撮影:湯田陽子

シナネンモビリティPLUSによると、同社展開エリアにおける2022年のダイチャリ利用経験者は1%。今後さらにステーションの拡大・認知度向上に力を入れ、2030年には5%まで高めていきたい考えだ。

その一環として、2022年度中にグループ企業のシナネンサイクルと共同開発中の「シェアサイクル専用自転車」を投入する。バッテリー容量を増やし走行距離を現行の50kmから100kmに伸ばすほか、災害時にはスマートフォンなどを充電できるようUSBポートを実装する予定だ。

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【図5】シェアサイクル専用自転車を2022年度中に投入。走行距離が2倍の100kmになるほか、災害時にバッテリーを外して避難所などに持ち込めるようバッテリーにUSBポートも実装する予定。バッテリー1本で約35台のスマートフォンを充電できるという。

提供:シナネンホールディングス

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バッテリーはフレーム内蔵型に代わり、容量アップ。走行距離が現行比2倍の100kmまで伸びる見込み。

撮影:湯田陽子

新型ダイチャリのシート調整

新型車両のシート調整レバー(右)。現行車両(左)に比べロック機構が力の入れやすいものになり、力の弱い人でも操作しやすくなっている。

撮影:湯田陽子

2022年中に実質再エネ100%充電を目指す

千葉県千葉市と神奈川県川崎市の2カ所に開設したメンテナンス拠点「エコベース」の拡充も進める。

シナネンHDによると、現在、ダイチャリ全体の約8割に相当する自転車をこの2カ所で充電しており、ここで使用する電気は実質再生可能エネルギー100%に切り替え済み。今後、ダイチャリ展開エリア内でエコベースの拡充を図り、2022年中にはダイチャリのメンテナンス・バッテリー充電に使用するすべての電力を実質再エネ100%の電気に切り替える方針だ。

さらには、非化石証書を購入することで「実質再エネ」を達成している現在の状況からリアルな「再エネ」への展開も視野に入れているという。

「例えば、駅前などに太陽光パネルを設置した大型ステーションをつくってそこで充電できるようにしたい。また、町の案内図やマルチモビリティを紹介するデジタルサイネージを併設し、マイクロ風車などで電力を確保できればと考えている」(三橋氏)

「3密回避」をきっかけに利用が拡大

脱炭素に注目が集まるなか、日本の1人当たりの二酸化炭素(CO2)排出量は、その2割強が自動車からの排出となっている。シェアサイクルサービスは、そうした移動における脱炭素や新たなモビリティサービスの1つとして期待されている。

特にコロナ禍以降は3密を回避する移動手段としての注目が高まっており、シナネンHDの調査でも実際にそうした目的での利用者が増えているという。

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【図6】シナネンHDの調査によると、コロナ禍以降にシェアサイクルを利用し始めたユーザーは6割に上った。

提供:シナネンホールディングス

ステーションの数や設置密度が増えたことで「同じプラットフォーム内であれば好きなところで借りて好きなところで返却できる」という利便性を享受しやすくなってきたことも、理由の一つだ。

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【図7】国土交通省によるとシェアサイクルのポート(ステーション)はここ数年で急増しており、2020年度の2425カ所から2021年度末に3345カ所と約1.5倍に増加。都心部を中心に設置密度も高まっている(図は東京都の例)。

出典:国土交通省「都市交通の中でのシェアサイクルのこれから~速報版~」

最大の課題は自転車の「再配置」

一方、その利便性が運用面では大きな課題にもなっている。シナネンモビリティPLUSの三橋氏は「最大の課題は再配置」と話す。

夜になると都心から自転車が消えて、例えば板橋区などの周辺に移動する。災害時だけでなく、普段から終電が終わると都心のステーションにあった自転車に乗って帰る方が多い」(三橋氏)

シェアサイクルの再配置は一般的にトラックを使って行われているが、シナネンモビリティPLUSは競合他社に比べてエリアが広い分、再配置の負荷が大きいという。

「自転車を都心までトラックで戻すとなると相当コストがかかるため、そこをいかに効率化するかが最大の課題。対策としては、都心部のステーションを増やすことで、都心に滞留する台数を増やしていきたい」(三橋氏)

1つの目安として、1平方キロメートル当たり5ステーションが理想的だと三橋氏は言う。

「300〜500m間隔で1ステーションある状態がユーザーにとって最も借りたり返したりしやすいと考えているので、そこを目指して展開していきたい」(三橋氏)

ハローサイクリングのプラットフォームを活用したいわば「オープン型」のシェアサイクルサービスについては、今後も1都3県と大阪府を中心に展開し、それ以外に拡大する予定はないという。

利用者限定のクローズド型サービスも

一方で、シナネンモビリティPLUSは今回、基本的には貸出・返却場所が同じ「クローズド型」のシェアサイクルサービスについても力を入れていくことを明らかにした。

サービス展開を進める中で、「不特定多数の人が入れないマンションの敷地内にステーションを設置してほしい」「マンションの住民だけに利用させたい」「エリアを区切って展開したい」といった要望があり、2021年度に利用者限定のクローズド型サービスの提供を開始した。

「クローズド型については、私たちがシステムと運営ノウハウを提供する。マンション管理組合のような事業運営者が、利用者を限定してサービスを提供できるのがポイント」(三橋氏)

ハローサイクリングとは別のアプリを活用し、シナネンモビリティPLUSがソリューションを提供する形になる。

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【図8】ハローサイクリング・アプリを使うオープン型のダイチャリとは別に、利用者限定のクローズド型サービスにも力を入れていく。

提供:シナネンホールディングス

(文・湯田陽子

編集部より:クローズド型サービスについて、シナネンモビリティPLUSのサービス提供形態を「プラットフォーマー」から「ソリューションを提供」に改めました。2022年8月25日 16:28
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