ミア・ファム氏は、44歳になる2027年にはリタイアしたいという。
Mia Pham
- ミア・ファム氏は、38歳にしてすでにミリオネア。2027年の早期退職を目指している。
- FIREについて学んだ後、彼女はすぐに投資を始めて、投資金額を増やしてきた。
- 少しでも多くの金額を投資するために、慎ましい生活を保ち、ライフスタイルインフレーションに陥らないよう心がけているという。
予定では2027年6月、ミア・ファム(Mia Pham)氏は連邦公務員を早期退職する。その頃には、彼女は44歳で、夫は48歳。夫も退職し、家族で世界中を旅行するつもりだ。
ファム氏が目指しているのは、流行りのFIRE(経済的独立・早期退職)というものだ。Insiderが確認した資料によると、彼女は早期退職という大きな目標に向かって、すでに100万ドル(約1億円)以上の資産を保有しているという。
この金額だけでも驚異的なのだが、それよりもファム家には子どもが2人いて、物価が高いサンディエゴで暮らしている点にも驚かされる。彼女の資産は、夫とは別の自分名義のものだ。夫婦の純資産の総額は、200万ドル(約2億円)近くになるという。
「夫とは別の、自分名義の口座残高が100万ドルを超えたのは、今年になってから」と、ファム氏は語る。「夫との合計額ではなく、自分の預金額が『100万』になるのを見たかったから、達成できて本当に嬉しい」
夫婦はそれぞれ別の口座を持っているが、目指すゴールは同じ。数年前に息子がピーナッツを食べた後、急にアナフィラキシーショックという食物アレルギー発作を起こして救急搬送された。幸い回復したが、2人はこのことにショックを受けて、時間と金銭の価値観が変わったという。
「優先するものが変わった。人生のはかなさに気づいたのだ」と、ファム氏は語る。娘もまた深刻なアレルギー体質で、アナフィラキシーショックを起こしたことがあるという。2人の子供の発作の経験で、経済的独立への想いが強くなった。
「若い頃はお金を使うことに生きがいを感じていた。だが、こういう状況に陥ると、それよりも大切なのは家族と一緒に過ごす時間だと気づいた。家族一緒だと充実した時間を過ごせる」と、ファム氏ははInsiderに語った。
ファム氏一家は、贅沢をやめたが、全く楽しみのない暮らしをしているわけではない。そのかわり、戦略的に生活設計を組み立てて暮らしている。次の4つのステップを踏んで、ファム家は、目標達成に近づくことができたという。
1. 若い頃から投資をはじめていた
「高校時代、パーソナルファイナンスに関心があったのだが、実践の方法を教えてくれる人がいなかった。セオリーを知っていただけだ」と、ファム氏は語る。
そのセオリーを実践することになったのは、大学の会計学の授業を受けた時だった。教授は演習としてRoth IRA(アメリカの年金プラン)の申込書を記入させて、投資がいかに重要かということを語っていた。あくまでも練習なので、申込書を郵送する必要はないのに、ファム氏は送付してしまったという。
「私は移民の家庭で育ち、家族の中で初めて大学へ進学した。家族には誰も投資の経験のある者はなく、母はギャンブルだと思い込んでいた」と、ファム氏は語る。しかし、教授のアドバイスが転機となったのだ。
初年度は、Roth IRAの上限額まで積み立てられなかったが、少しずつ時間をかけて、掛け金を増やしていった。今ある成功はこの時の積み立てと複利効果のおかげだと、ファム氏は信じている。
2.FIREを学び、投資の掛け金を増やした
コツコツと投資を続けていたのだが、莫大な金額を投資するようになったのは、FIREについて学んだ2017年以降のことだ。
家を購入するために貯金をしていたが、早期退職を目指すと決めて、戦略を切り替えた。
「コロナ禍では状況が異なるが、一般論では、不動産より株の方が利益があると分かった。なので、小さな家を買うことにした」と、ファム氏は説明する。住宅に使うお金を投資に回して、少しでも多くの掛け金を捻出するためだ。
まず、Roth IRAとTSP(401(k)に似た、米国の連邦公務員向け確定拠出型年金)を上限額まで掛け金を支払う。それができたら、証券口座へ資金を集中的に投入していく。ファム氏は、バークシャー・ハザウェイ のクラスB株やアップルの株を保有しているが、主にインデックスファンドへ投資しているそうだ。
積み立てを自動化させることで、シンプルかつ合理的に取引できる。たしかに投資をするには勉強は必要だが、自動化すると簡単に取引ができるという。
3.慎ましい暮らしを維持する
持ち家に充てる予算を減らすことで、より大きな金額を投資することができた。一家はそれだけではなく、身の丈に合った生活をしている。より臨機応変に投資できるよう、資金を確保するためだ。
外食はほとんどせず、飲み会やママ友会なども家で済ませる。自家用車はトヨタRAV4の2005年型だ。2012年に8000ドル(約100万円)ぐらいで現金購入した。
子供の遊び場としては、図書館のような入場料のかからない公的施設を利用したり、入場料のかかる動物園やレゴランドでは、どれか1つのアトラクション施設を選んで年間メンバーシップのパスを購入する。毎年違う施設を選んで、年間パスを買っているという。
しかし、浪費を防ぐだけではない。費用を抑える方法も、常に探している。
2年前に10歳の子供がストーブを壊した時、買い替え時だと諦めるのではなく、自分で修理したそうだ。「Google検索で故障の原因を調べて、Amazonで90ドル(約1万2000円)ぐらいの部品を買って、Youtubeを見てサーキットボードを交換した」とファム氏は言う。
それだけではない。必ず見積もりを、いくつか取るようにしているという。その見積もりを元に価格交渉すると、住宅ローンの借り換えや保険料が値上がりした時に効果的だという。
また、サンディエゴの暑い季節には、荷物をまとめてビーチへ向かう。ビーチはお金もかからないし、冷房費節約になるからだ。
4. ライフスタイルインフレーションに陥らないように、モチベーションを維持する
ファム氏が、キャリアをスタートさせた当初の俸給は、3万8000ドル(約517万円)前後だった。連邦公務員なので俸給は、一般俸給表(General Schedule:GS)に基づいて支払われる。ファム氏のポジションでは、年度ごとに昇給することができたので、ついに年収は10万ドル(約1300万円)を超えた。
「昇給があるごとに、上限額に達するまで、TSP(連邦公務員向け年金)の掛け金を増やした」と、ファム氏。贅沢はせず、臨時収入は投資に回した。そうすると、過度な浪費を防いで、長期的にゴールを見据えていくことができるという。
思わず散財してしまった時には、自分の純資産を確認して、投資に対する集中力を保った。
「純資産の追跡をするようになったのは、2017年頃。するのと、しないのでは、大きな違いがある。財産を確認しながら、ゴールを見据えることができるのだから」と語る。
さらに、定年後の人生設計も考えている
リタイヤした後の20年間は、個人資産で生計を立て、62歳になったらそれに公的年金が加わる。夫も連邦公務員なので、夫婦で年金を受け取ることができるという。
「年金はセーフティーネットだ」と、ファム氏は言う。年金は公務員になると得られる付加価値だということを強調した。
「そのころ、私たちの純資産は少なくとも200万ドルになっているはず。私と夫の両親が私たちを必要としていない状況だったら、家族旅行をしたい」
(翻訳・伊藤麻衣子、編集・長田真)