景気が低迷する中、Web3関係の人材募集は活発に行われている。
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テクノロジー業界では大規模な人員削減が行われているが、求職者にとってまだ期待が持てるのがWeb3企業だ。
仮想通貨企業のコインベース(Coinbase)が採用を凍結し、従業員の18%を解雇した直後、競合のバイナンス(Binance)は新たに2000人を採用すると発表した。また、Web3関連のキャリアサイト「Web3.Careers」には、2022年初頭には1万件に満たなかった求人が、現在では2万3000件以上掲載されている。
分散型インターネットの話題がシリコンバレーを席巻するなか、エンジニアリング、プロダクト、マーケティングなど、あらゆる専門分野の有能な人材が、お金が儲かるといわれるこの世界へと進出している。
「Web3で技術の可能性を押し広げるには、技術的なスキル以上のものが必要だ」と、スポーツ・エンターテインメントNFTプラットフォームであるオートグラフ(Autograph)のCEO兼共同創業者、ディロン・ローゼンブラット(Dillon Rosenblatt)はInsiderに語る。
ローゼンブラットによると、Web3企業の創業者が求めているのはプログラマーに限らず、インターネットの使い方に革命を起こそうという野心を持つ人材だという。
Insiderは、Web3スタートアップの創業者6人に、応募者の履歴書や面接でどういったスキルを重視するか聞いた。成長も競争も著しいWeb3業界で従業員を採用する際に創業者たちが求める5つのスキルは以下の通りだ。
1. 起業家精神を持っていること
「私たちが探しているのは、オーナーのように作り上げ、行動することを好む社員です」と、分散型ウェブサイトやブロックチェーンベースのドメイン名を提供する企業、アンストッパブル・ドメインズ(Unstoppable Domains)の共同創業者ブラッド・カド(Brad Kad)は言う。
Web3開発プラットフォームのアルケミー(Alchemy)の共同創業者ジョー・ラウ(Joe Lau)は、経営に参画した経験のある人材を探していると語った。それが元スタートアップの創業者であれ、アーリーステージの企業で働いていた人であれ、ラウは自分が何をすべきか分かっている自律的な従業員を求めているという。
「大企業に勤めていればチームや会社の後押しもありますが、(Web3では)非常に強い当事者意識を持たなければならないし、成果を出せるかも自分自身にかかっています」(ラウ)
2. Web3コミュニティで活躍していること
ブロックチェーンベースのクリエイタープラットフォームであるラリー(Rally)の共同創業者で、仮想通貨ベンチャースタジオであるスーパーレイヤー(SuperLayer)のマネージングパートナーでもあるマヘシュ・ベランキ(Mahesh Vellanki)がまず応募者に求めるのは、過去に類似したWeb3プロジェクトを行った経験だ。一方でベランキは、発展途上の業界でそうした条件を出すのは無理がある場合も多いとInsiderに語っている。
しかし、もし候補者にWeb3の経験がなくても、好奇心があり「暗号技術の利用者としての個人的な情熱」を持っていれば基準をクリアすることは可能、とベランキはInsiderに語る。ベランキは、さまざまな仮想通貨コミュニティで活動している人材を探している。
「プロジェクトでは、コミュニティから直接雇用することが多いです」というのは、分散型オラクル・ネットワークであるチェインリンク(Chainlink)の共同創業者セルゲイ・ナザロフ(Sergey Nazarov)だ。「チェインリンクのコミュニティでは何度も(そうした採用を)見てきた」
ナザロフによれば、仮想通貨技術やWeb3のフォーラムに積極的に参加していれば、関連企業の求人に応募する際に有利になる可能性があるという。
3. 迅速に適応する方法を知っていること
Web3は、これまでシリコンバレーで「破壊者」と呼ばれてきた企業や技術と比べてもまだ未開拓で秩序が整っていない世界だ。オープンシー(OpenSea)のデビン・フィンザー(Devin Finzer)からアンストッパブル・ドメインズのブラッド・カドまで、新興企業の創業者のほぼ全員がInsiderに対し、高い適応力を備えた人材が求められると語っている。
応募者が適応力を示すにはどうしたらいいかという質問に対してベランキは、探しているのは「この市場で進行中の他のプロジェクトを深く調べること」を通して学びを得られる人材だと答えた。
ラウもベランキと同意見だ。「(この業界では)プロジェクトの進め方もまだ定まっていません」と語る。進化の途上にある業界の性質上、一歩引いて全体を眺め、何が重要かを素早く理解し、適応していける人材を求めているのだという。
4. 反骨精神で挑むこと
Web3は「自立した個人に力を与え、地球のための新しい信頼基盤を作る」ことを目的としていると、イーサリアム・ソフトウェア企業であるコンセンシス(ConsenSys)のCEO兼創業者のジョー・ルービン(Joe Lubin)は語る。ルービンは、より良いシステムを構築したり、インターネットを介した革新的なやりとりの方法や新しいビジネスモデルを見つけたり、さらには全く新しい産業をつくり出すことに情熱を燃やす人材を探している。
同様に、オープンシーのCEOであるフィンザーは、今までの常識に挑戦する人材を求めている。
「私たちが求めているのは、『なぜ?』という疑問を持つ人です」(フィンザー)
オートグラフのCEOのローゼンブラットは、従来の常識を疑い、「現状を違う角度から捉え直せる」ような候補者がいいと付け加えた。
5. 長期的なビジョンを持っていること
Web3がかつてないほどの革新を遂げる中、ナザロフはInsiderに対し、究極的に欲しいのは業界の未来を信じ、進化とともにこの分野を成長させることにコミットできる人材だと述べた。
コンセンシスのルービンは、一言で言えばどのような職種に応募するにしても、Web3全体の大きな目標への貢献を視野に入れていることが欠かせないと言う。
「要するに、分散型(インターネット)の未来に情熱を持ち、使命感に突き動かされている人材を求めているってことですね」(ルービン)
(編集・大門小百合)