米投資銀行ジェフリーズ(Jefferies)は注視するハイテク銘柄のうち、有力ヘッジファンドが株価上昇(下落)を予測する銘柄を具体的に絞り込んでいる。
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取引所との高速接続、人工知能(AI)駆動のシステム、高度な処理能力を誇るアナリストチームなど、ヘッジファンドは市場で優位に立つための手法を数多く持ち合わせている。
それだけの優位性を有していても、市場平均を上回るパフォーマンスを実現できるヘッジファンドは多くない。それでも、市場を的確に読み抜いた一部のファンドには、投資家に大きなリターンを届けられる可能性がある。
したがって、一般投資家がヘッジファンドの動向を把握することには非常に大きな意味がある。結局、経験豊富な情報通の投資家の動きをトレースする投資法は、いつの世も検討に値する有効な選択肢なのだ。
そして、米投資銀行ジェフリーズ(Jefferies)は顧客向けにその作業を肩代わりしている。
同行が最近顧客に送ったメールでは、ヘッジファンド各社が投資判断を強気寄りに変更してロング(買い持ち)を増やしている銘柄、逆にショート(売り持ち)している銘柄、両方を紹介している。
同行中小型株ストラテジストのスティーブン・デサンクティスは次のように分析する。
「ヘッジファンドは総じて慎重なポジションで夏の相場を迎えました。
軒並みリスク回避優先で、ロングは3月と同水準の147%まで減少し、長期平均を大きく下回っています。ヘッジファンドが株式市場へのエクスポージャー(資産をリスクにさらす割合)を引き下げ、長期平均を下回った夏は史上3度目です。
この動きは逆から見ると、ショートが47%減ったことを意味し、やはり長期平均(79%)を下回る規模です」
デサンクティスによれば、ヘッジファンドはシクリカル銘柄(景気敏感株)へのエクスポージャーも縮小している。
ヘッジファンド各社はS&P500種株価指数(の構成)に比べて、シクリカル銘柄を2.8%アンダーウェイト(組み入れ比率を減らす)しており、その差は2021年10月以降で最大となっている。同時に、資本財および素材セクターの銘柄も比率を1.8%減らしている。
一方、ヘッジファンド各社はこぞってエネルギーセクターをロングに戻し、エクスポージャーを3.8%増やした。それでも、S&P500種指数との比較で見ると2%超のアンダーウェイトとなっている。
ヘッジファンド各社は引き続きセキュラーグロース(長期成長)銘柄をS&P500種指数に対して約9%のオーバーウェイトとしているものの、それすら長期平均を下回る水準だ。
また、ヘッジファンド各社の「ヘルスケアへの新たな関心」は、同セクターへのエクスポージャーおよびオーバーウェイトの割合がいずれも拡大したことから、引き続き確実なトレンドとジェフリーズは見る。
ヘッジファンドのハイテク銘柄へのエクスポージャーは「わずかな増加」ながら、巨大テック銘柄に興味深い変化があったことは注目される。
ジェフリーズは以前から同社アナリストが市場で最も重要なハイテク銘柄と位置づける16社「スイート・シックスティーン(Sweet 16)」をリストアップしている。
実質的にはいわゆる「FAANG」の拡大版で、アルファベット(Alphabet)、メタ・プラットフォームズ(Meta Platforms)、アマゾン(Amazon)、マイクロソフト(Microsoft)、ペイパル(Paypal)、ネットフリックス(Netflix)、アドビ(Adobe)、クアルコム(Qualcomm)、ファイサーブ(Fiserv)、エヌビディア(Nvidia)、アップル(Apple)、ブロードコム(Broadcom)、テスラ(Tesla)、テキサス・インスツルメンツ(Texas Instruments)、アドバンスド・マイクロ・デバイセズ(AMD)、インテル(Intel)の16社がそれに当たる。
「最新のデータによれば、ヘッジファンド各社は5月末に16銘柄へのエクスポージャーを減らしましたが、最近になってまた増やしています。S&P500種指数との比較で、アンダーウェイトの差は1カ月前の11.4%から8.4%まで縮小しました。それでも、ポートフォリオ全体に占める配分割合は18.8%にとどまっています。
セキュラーグロース(長期成長)銘柄のウェイトには(先述のように約9%と)変化がないものの、アップルとテスラがネットショート(売り越し)からネットロング(買い越し)に転じたことで、当社の16銘柄リストのウェイトも増えました。なお、アップルは現時点でヘッジファンドの最大保有銘柄の一つになっています」
デサンクティスはこう続ける。
「マイクロソフトも引き続きヘッジファンド保有銘柄では最大級の5.6%を占めますが、S&P500種指数に比べると0.6%アンダーウェイトです。
また、メタへのエクスポージャーは減ったものの、S&P500種指数との比較では1%のオーバーウェイトで、16銘柄の中では最大幅となっています。
なお、アップルはS&P500種指数との比較では5.2%アンダーウェイトと、こちらも最大幅です」
ただし、ヘッジファンド各社はジェフリーズのハイテク16銘柄にまんべんなく注目・期待しているわけではなく、エヌビディア、テキサス・インスツルメンツ、インテルの3銘柄は合計すると売り越し、すなわち株価下落が予測されている。
(翻訳・編集:川村力)