世界の海では、2050年までにプラスチックの量が魚の量を上回ると予測されている。
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- ノルウェーとルワンダは、プラスチック廃棄物に対する各国の責任を問う世界的な取り組みを主導している。
- 両国政府は、プラスチックの生産量削減とリサイクル推進のために、20カ国からなるグループを立ち上げた。
- この取り組みは、2022年5月に150カ国以上がプラスチック汚染条約について交渉することに合意した後に始まった。
プラスチック廃棄物削減への熱意で各国を評価するなら、ノルウェーとルワンダが優秀な成績を修めるだろう。
2022年8月22日、両国政府は2040年までにプラスチック汚染を終らせるための連合「High Ambition Coalition to End Plastic Pollution」を立ち上げた。20カ国が参加するこのグループは、プラスチックの生産量削減、リサイクル方法の改善、そして各国が約束を果たすためのツールの開発を推進する。
この取り組みは、2022年初めに開催された国連環境総会(UNEA)で150カ国以上が合意した決議事項をふまえたものだ。プラスチック廃棄物は、埋立地や水路に堆積して海洋生物に害を与え、気候変動の一因にもなっていることから、各国はそれらを削減するための条約を2024年までに締結しようとしている。
ルワンダのジャンヌダルク・ムジャワマリヤ(Jeanne d'Arc Mujawamariya)環境大臣は「このような負担を次世代に残すことは、決して許されることではない」と声明で述べた。
米国科学アカデミーの報告書によると、アメリカは中国の2倍以上のプラスチック廃棄物を排出しており、汚染の最大の原因となっているが、まだこの連合に参加していない。しかしそれも変わる可能性がある。
1970年代以降、プラスチックの生産量は爆発的に増加し、石油会社や石油化学会社の収益を押し上げた。だが各国が気候変動危機に対処する中で化石燃料の需要が減退していることから、この業界はそれを埋め合わせようと世界中で新たなプラスチック工場に投資をしている。プラスチックの需要を抑えるための抜本的な対策を講じなければ、世界のプラスチック廃棄物は今後数十年で3倍になり、リサイクルされるのはその5分の1以下になる可能性がある。
アメリカ国務省の報道官は、プラスチック汚染対策に万能な解決策はないとし、プラスチックを環境から排除するための最良の戦略を各国が決定できるよう、条約は柔軟であるべきだと述べた。さらに、アメリカ政府関係者は国連環境総会で積極的に役割を果たし、11月にウルグアイで開かれる世界条約に関する初会合にも参加する予定だと付け加えた。
アメリカ海洋大気庁(NOAA)で海洋ごみとマイクロプラスチックの国際問題に取り組んだ後にオーシャン財団で働くようになったエリカ・ヌニェス(Erica Nuñez)がInsiderに語ったところによると、政府が立場を確立するのには時間を要することがあるため、「プラスチック汚染を終らせるための連合」にアメリカがまだ参加していないことに、今のところ特に大きな意味はないという。
いずれにせよ、ヌニェスは「連合」がプラスチックの生産を「抑制」し、「問題のある」プラスチックを排除するという目標を明示したことを歓迎している。リサイクルだけで廃棄物問題を解決することはできないからだ。
「連合」はプラスチックの生産量を制限することはないが、その代わり、ポイ捨てされる可能性の高いプラスチックや有害な化学物質を含むプラスチックを禁止するなどの政策を通じて、新たな需要を減らすことに重点を置くとしている。またリサイクル・プラスチックの市場を作ることも優先事項だと、広報を担当するマーティン・ラーバーグ・フォッサム(Martin Lerberg Fossum)は述べている。
研究者たちは、プラスチック製造に関連する約1万種の化学物質のうち、2400種以上は人の健康や自然環境に悪影響を及ぼす可能性があるとしている。
「どれだけのプラスチックが生産され、どこに運ばれているのか、またどのような添加物や充填物が使われ、それらの毒性がどれだけ強いのか、よく分かっていない」とGlobal Alliance for Incinerator Alternatives(GAIA)の科学・政策ディレクターであるニール・タングリ(Neil Tangri)は述べている。
「我々に必要なのは、整合性のある規格と進捗状況を追跡・検証するためのデータだ」
(翻訳:仲田文子、編集:Toshihiko Inoue)