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日本の核融合ベンチャー3社のCEOが対談。世界で加速する核融合ビジネス、日本はどう戦うのか?

当日の様子

EX-Fusion 代表の松尾一輝さん(左上)、Helical Fusion 共同創業者の田口昂哉さん(右上)、京都フュージョニアリング 共同創業者の長尾昂さん(右下)。

画像:番組よりスクリーンショット

“変化の兆し”を捉えて動き出している人や企業にスポットを当てるオンライン番組「BEYOND」。

第12回は、「核融合炉」の実現に向けて取り組む日本のベンチャー企業3社の代表、長尾昂さん(京都フュージョニアリング 共同創業者)、松尾一輝さん(EX-Fusion 代表)、田口昂哉(Helical Fusion 共同創業者)が登場。

8月23日(火)に放映した番組の抄録を、一部編集して掲載する。

※核融合炉の基本原理・安全性などについてはこちらの記事から。

当日の様子は、YouTubeでご視聴いただけます。

撮影:Business Insider Japan

──各社の事業を教えてください。

長尾昂さん(以下、長尾):京都フュージョニアリングは、日本のものづくりの力は世界に通用すると信じており、革新的なエンジニアリングソリューションを世界に提供することを目指しています。

核融合炉そのものを作るというよりは、その周辺にある特殊プラントの機器開発や、プラントエンジニアリングについて技術力をもっています。

京都フュージョニアリング 事業概要

京都フュージョニアリングの事業概要。

出典:京都フュージョニアリング

松尾:EX-Fusionは、核融合の中でも「レーザー」を用いた核融合を社会実装することを目標に掲げています。現在は、もちろん最終的にはレーザー核融合の商用炉を目指しているのですが、レーザー自体、応用範囲が広い技術なんです。今は、レーザーの「制御」に関する研究開発(例えばレーザーを物に当てるなど)を進めているところです。

EX-Fusion 事業概要

EX-Fusionの事業概要。

出典:EX-Fusion

田口昂哉さん(以下、田口):Helical Fusionは、核融合の手法の一つ「ヘリカル方式」を使った核融合炉を社会実装を目指しています。京都フュージョニアリングとは異なり、やっぱり「炉」そのものを作りたいということで、全体設計も含めてやっていこうと考えています。

Helical Fusionの事業概要

Helical Fusionの事業概要

出典:Helical Fusion

──「レーザー核融合」や「ヘリカル方式」と複数の手法が出てきましたが、それぞれどのような手法ですか?

田口:核融合炉では、磁場を使って燃料となる(プラズマ化した)水素を閉じ込めておく必要があります。この手法の一つが「ヘリカル方式」です。また、ヘリカル方式と似た手法として(欧米のベンチャーが数多く取り組んでいる)「トカマク方式」もあります。

ヘリカル方式とトカマク方式では、磁場をかけるためのコイルの構造などが違い、それぞれ発展してきました。

──「レーザー核融合」はどのような手法なのでしょうか?

松尾:核融合反応を起こすには温度が高い「プラズマ」(原子が電子と原子核に分離した状態)を作ることが重要です。レーザー核融合では、水素にレーザーを当てて瞬間的に高温で高密度のプラズマ状態をつくり、そこから瞬間的にたくさんの核融合反応を起こします。燃料となる水素に、四方八方からレーザーを当てるような手法です。

「いける」ではなく「やらないといけない」で会社を設立

長尾昂さん

企業の理由を語る京都フュージョニアリング 共同創業者の長尾昂さん。

画像:番組よりスクリーンショット

──なぜ核融合技術で起業しようと思ったのでしょうか。

長尾:日本の持っている核融合の技術は世界に通用するものだと私は理解しています。

そういった技術を世に解き放つことに貢献したい、そういう産業を日本に持ってきたい、そういう「野望」のようなものが先行して、京都フュージョニアリングを起業をした側面があるかもしれません。

──京都フュージョニアリングの共同創業者である、京都大学教授(当時)の小西哲之氏とはどこで出会ったのでしょうか?

長尾:京都大学の研究者と起業家のマッチングイベントで出会いました。

京都大学には眠っているシーズ(研究内容)がいくつかあり、それらを研究者がプレゼンするイベントでした。

その中で私は「核融合しかないな」と直感的に思ったのと、小西先生がずいぶん笑顔で話される方だったんですよね。やっぱり笑顔で仕事をされる方って魅力的だなと思っていて、この人と話をしてみたいと素直に思い、声を掛けました。

──それが2019年頃ですかね。

長尾:はい。小西先生の技術と僕の経営スキルを合わせればモデルができると思い、2〜3カ月考えて会社を設立しました。

田口昂哉さん

核融合について「やらないといけない」と語るHelical Fusion 共同創業者の田口昂哉さん。

画像:番組よりスクリーンショット

──Helical Fusionはいかがでしょうか。

田口:核融合で「いける」というよりも「やらないといけない」という思いが強かったです。人類に及ぼす影響が非常に大きく、また、我々が抱えている問題を解決する可能性が高いと感じました。

核融合は技術的にまだ難しい部分もありますが、ドライブをかけるなら今からやらないと間に合わない、時期を逃すだろうと。その段階で勝ち筋が見えていたわけではありません。

──ヘリカル方式を選んだ理由はなぜですか?

田口:弊社の研究者がヘリカル方式に精通しているので、そこに感化されたということは一つあります。

レーザー核融合など、他にもさまざまな手法がありますが、それぞれ特徴があり一長一短だと思っています。

安全電源として使えるインフラを作りたいと考えたときに、ヘリカル方式はそれに向いているのではないかと考えています。

ヘリカル型の核融合炉内

ヘリカル型の核融合炉内の様子。

出典:核融合科学研究所

──共同創業者の宮澤順一氏とは、どのような出会いでしたか?

田口:共通の知り合い経由で出会いました。

2年ほど前に宮澤が民間で核融合をやろう考えていたところに、当時は別のスタートアップで仕事をしていた私がビジネス面のアドバイスをする形で参加しました。

──松尾さんはもともと研究者をされていたと聞いています。なぜ研究所などで核融合の研究を続けるのではなく、「EX-Fusion」を起業することにしたのでしょうか?

松尾:レーザー核融合の社会実装に一番近い道筋をとるには、スタートアップだと考えたことが大きな理由です。

カリフォルニア大学サンディエゴ校で研究員をしていたときに、指導教員の藤岡慎介教授から「核融合に投資したい人がいる」と聞きました。そこで初めてビジネス的にどういうふうに進めればいいかを考えました。

海外の核融合ベンチャーの様子なども見ていたので、1週間くらいでできるなと踏んで、会社を立ち上げました。

調達金額に依存しないビジネス戦略

世界の主要な核融合ベンチャー

世界の主要な核融合ベンチャーと設立年、調達金額。

作成:Business Insider Japan

──海外の核融合企業と比較すると、国内の核融合ベンチャーは資金調達の面で1桁も2桁も劣っているようにも見えます。少ない調達金額でどのように戦っていくか、ビジネス戦略を教えてください。

松尾:レーザー核融合はコンポーネントが多いため、その一部分に注力する形であれば少ない調達金額でも戦っていけると考えています。「EX-Fusion」であれば、「レーザー制御」に注力をしています。

──長尾さんはいかがでしょうか。

長尾:確かに日本の企業の調達金額を単純に比較すると少ないんですよね。日本の投資家さんだけを見ていると世界と戦っていくのは難しいと思っています。そこは松尾さんが話したように、ビジネスのやり方を工夫することで日本として戦っていくやり方はあると思います。

ただ、そもそも、この業界にいる人達は「核融合を実現させたい」という思いが先にあり、「自分の会社だけを成功させたい」という人は少ないんです。

小型化するならレーザー、大きくて安定性をもたせるならヘリカルなど。状況に応じて使い分け、協力して一つの産業を作っていくイメージです。うまく技術を使い分けて協力していけば、必ずしも調達金額に依存した戦い方にしなくてもいいと思います。

一方で、日本の技術を使っている以上、日本にどのような利益があるのかを見極めながらビジネスをする必要はあるとも思います。

田口:ディープテックは足が長くて不確実性が高い領域なので、アメリカと比べるとやっぱり日本は厳しいです。ですので、コンポーネントを売るとか、エンジニアリングで売り上げを立てるというビジネス戦略はありですし、日本ではなく海外の投資家にいくこともあり得ると思います。

ただ、日本の技術を使っていることもありますので、やっぱりできれば日本でやりたいという気持ちもありますよね。だからバックアップしてくれる仕組みや、マインドが日本にもあるとありがたいと思っています。

政府と民間が寄り添い、核融合炉の実装を目指す

松尾一輝さん

「核融合技術は成熟してきている」と語るEX-Fusion 代表の松尾一輝さん。

画像:番組よりスクリーンショット

──核融合はフランスの国際共同プロジェクト「ITER」が動いている一方で、ベンチャーなど民間企業が出てきています。この国際共同プロジェクトと民間の役割の違いをどのように認識されていますか?

松尾:まず、今の核融合は技術的にも成熟してきており、学術的にもどうやれば実現できそうか、7割方分かってきた状況だと思います。あとは開発研究を押し進めるだけだという状態でしょうか。

そのため、弊社のレーザー核融合もそうですが、開発だけなら民間でやるほうが早いと考える方が増えたのだと思います。

──田口さん、長尾さんの携わる磁場閉じ込め方式の核融合炉については、国際プロジェクトの「ITER」が先行して実証炉の建設を進めている状況です。この動きをどう見ていますか?

田口:国際共同プロジェクトは確かに先行していますが、民間でやる意味も別であると思っています。手法によって一長一短がある以上、さまざまな手法があっていいはずです。

また、国際共同プロジェクトのような政府の案件では、確実性が求められるため、新しいアイディアや技術を導入しづらい側面があります。民間であれば、ある程度機動的に新しいイノベーションを導入しやすいので、そういったチャレンジを民間が担い、(国際プロジェクトの成果を)補強していくこともあると考えます。

──政府と民間はぶつかるのでなく、うまく混ざり合って核融合炉をつくるわけですね。

田口:そうですね。いち早く核融合のエネルギーを実装することが大事ですので、そうあるべきだと思います。

──長尾さんはどう考えますか?

長尾:田口さんと同じ考えです。

付け加えると、核融合のスタートアップはそろそろ新しい会社が生まれにくくなると思います。

生物としてのカンブリア紀のような爆発的な成長期が終わり、ある程度強い会社に集約していくフェーズを遅かれ早かれ迎えるのではないかと考えています。

──最後に、今後向き合いたい課題や意気込みをお願いします。

田口:日本の核融合ベンチャーとして長尾さん、松尾さんとも一枚岩となって、核融合実現に向けて盛り上げていきたいと思います。

松尾:核融合は最近注目され始めましたが、技術には長い歴史があり、多くの研究成果によって成り立っています。

そういう方たちの思いも含めて、早く実現ができるように頑張っていきたいと思います。

長尾:核融合は「核」という言葉が先行して、認知が難しい技術領域だと感じています。一方で、ポテンシャルがあるものです。エネルギーに乏しい日本としては、実現していかなければいけない技術の一つだとも思っています。

核融合の実現がようやく見えてきたからこそ、これまでの長い歴史の中で積み上げられてきた研究や技術を継承し、若い世代が躍動していくことが求められています。

核融合の領域にチャレンジしたい、興味のある若い方は、ぜひこの3社のいずれかに声を掛けてくれると嬉しいです。

(聞き手・三ツ村崇志、構成・紅野一鶴


次回のBEYOND

2022年8月31日(水)19時からは、Next Commons Labファウンダー兼代表理事の林篤志さんをゲストに迎え「地方でブロックチェーンを活用するってどういうこと?」をお送りします。

「BEYOND」とは

毎週水曜日19時から配信予定。ビジネス、テクノロジー、SDGs、働き方……それぞれのテーマで、既成概念にとらわれず新しい未来を作ろうとチャレンジする人にBusiness Insider Japanの記者/編集者がインタビュー。記者との対話を通して、チャレンジの原点、現在の取り組みやつくりたい未来を深堀りします。

アーカイブはYouTubeチャンネルのプレイリストで公開します。

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