コストコの1.5ドルのホットドッグ(ドリンク付き)のイメージイラスト。
Costco; Vincent Giordano Photo/Shutterstock; Rachel Mendelson/Insider
- コストコは37年間、ドリンク付きのホットドッグを1.5ドルで販売しており、インフレになってもそれは変わることはない。
- 専門家によると、コストコのホットドッグの価格設定は、同社のビジネスモデルの証であるという。
- チャーリー・マンガーは、品質を犠牲にすることなく常に低価格を維持しているコストコを賞賛している。
コストコ(Costco)は40年近く前からドリンク付きのホットドッグを1.5ドル(約207円)で販売しており、その価格を頑なに守ってきた。アメリカのインフレ率が40年ぶりの高さに急騰しているにもかかわらず、このセット価格を引き上げる予定はない。
品質を犠牲にすることなくコストを削減し、その削減した分を低価格という形で顧客に還元しているこの大型小売店は、ウォーレン・バフェット(Warren Buffett)のビジネスパートナーで投資会社バークシャー・ハサウェイ(Berkshire Hathaway)の副会長を務めるチャーリー・マンガー(Charlie Munger)などの投資家から賞賛を集めている。
マンガーはコストコについて、「一生に一度か二度でも、このようなビジネスに関われるのならば、それはとても幸運だ」と2011年に述べている。
看板商品であるこのホットドックをコストコはなぜ値上げしないのか、1.5ドルという価格はマンガーがコストコを好きな理由をどう実証しているのか、4人の専門家に説明してもらった。
1. ジョン・ロンゴ(John Longo):ラトガース・ビジネス・スクール(Rutgers Business School)財政学教授
ロンゴによると、コストコはドリンク付きのホットドッグでほとんど利益を得ないだろうが、この販売方法で顧客を呼び込み、売り上げ増加につなげている可能性が高いという。
「ホットドッグだけ買って帰る客は何人いるだろうか。少しはそういう人がいるかもしれないが、ほとんどの買い物客はそうではない」
「コストコは、利益のほとんどを年会費から得ているため、ホットドッグなど一部商品の価格を底値で維持することができる」とロンゴは言う。
「この戦略は無料の宣伝となり、ブランドに対する好感を育み、会員登録を促進する」と彼は続け、「コストコ以外のほとんどの商品やサービスが値上がりしているとあれば、カスタマー・ロイヤルティ(顧客忠誠心)も向上する」と付け加えた。
「彼らは高インフレで厳しい時代であることを知っていて、顧客が落ち込んでいる間はそれを利用しないと伝えているのだ」とロンゴは話している。
2. トレン・グリフィン(Tren Griffin):『完全なる投資家の頭の中 ──マンガーとバフェットの議事録(原題:Charlie Munger: The Complete Investor)』の著者
「マンガーは、コストコが品質に妥協することなくコスト削減に取り組む姿勢を高く評価しており、ドリンク付きのホットドッグは、同社の顧客評価を高める商品の一つだと考えている」とグリフィンは指摘する。
消費者は、ホットドッグのような素晴らしい商品を楽しみ、インフレで予算が圧迫されているであっても一貫して安価な商品を提供する企業を高く評価するのだ。
「コストコは美味しいホットドッグを含め、顧客のために高品質な商品の比較検討を行っている」と同氏は述べている。
3. ダレン・ポロック(Darren Pollock):コストコの株式を保有するチェビオット・バリュー・マネジメント(Cheviot Value Management)の社長
「1.5ドルのホットドッグは、コストコの顧客中心主義の文化が生んだものだ」とポロックは話している。
「それは、販売するすべての商品で儲ける必要はないという同社の姿勢を象徴している。そのような小売業者は他にどれだけあるだろうか」
ポロックによると、ホットドッグの安さは既存の会員を満足させ、新規会員を獲得することになり、コストコと顧客にとってWin-Winの関係を生んでいる。他の店にはない掘り出し物で顧客を喜ばせるというコストコの哲学は、同社の最大のファンも魅了しているという。
「商品を可能な限りの低価格で提供することで顧客を大切にしようとするコストコの文化をチャーリー・マンガーは愛しているのだろう」
4. クリス・ブルームストラン(Chris Bloomstran):コストコの株式を保有するセンパー・アウグストゥス・インベストメント(Semper Augustus Investments)の社長
ブルームストランによると、コストコの会員はコストコが高品質な商品を提供し、倉庫にあるすべての商品をアマゾン(Amazon)やウォルマート(Walmart)よりもきっと安く販売していると考えているという。
「1.5ドルのドリンク付きのホットドッグ(ドリンクのお代わり自由)はその証だ」 と彼は話す。
「それらは切っても切り離せないものだ。1.5ドルという価格は固定されたもので、信頼と忠誠心を生み出し、両者は密接に関連している」
ブルームストランは、コストコが長年に渡ってホットドッグセットのコストを下げてきた経緯を説明する。コストコは2つの製造工場を建設して商品を自社生産し、缶入り炭酸飲料をおかわり自由の安価なカップ入りに変更した。コカ・コーラをペプシに変えたのはよりよい契約を結べたからだ。
ブルームストランは、インフレの影響でこのホットドッグセットは、単体では間違いなく利益を出せなくなったと付け加えている。しかし、それを「ロス・リーダー(利益の出ない客寄せのための激安品)」と見なすとことは否定した。
「1.5ドルのホットドックは、コストコのDNAの一部であり、年間1億3000万個(さらに増加中)の販売は赤字ではあるけれど、信頼と忠誠のためにはよいことだ」と述べた。
「コストコは1.5ドルの価格帯を維持し、セットの提供コストを削減する努力を続けるが、決して商品の品質を犠牲にすることはないだろう」と最後にブルームストランは述べている。
(翻訳:大場真由子、編集:Toshihiko Inoue)