IKEAが新製品発表で「クジラのぬいぐるみ」を猛烈アピールした理由

クジラ

10月に新発売されるクジラのぬいぐるみ。

撮影:横山耕太郎

大手家具メーカーイケアは8月30日、東京・原宿で2023年度の新製品イベントを開いた。

イベントでは、テーブルの下に空気清浄機を設置できる新製品や、シートの高さや位置やアームレストなどを細かく調整できる3万円以下のゲーミングチェアなど、デザイン性と低価格を兼ねそろえた製品を展示した。

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空気清浄機付きのテーブルは7月から販売中。価格は2万4990円(税込)。

撮影:横山耕太郎

イケアが10月に発売する新型ゲーミングチェア。3万円を切る値段も魅力だ。

撮影:山﨑拓実

そんな新製品発表の場で、ステージの真横の最も目立つ位置に配置されていたのは、「クジラとシャチのぬいぐるみ」と、何の変哲もない「木製本棚」。一見するとかなり地味な選択だが、「サステナブル」なブランドを打ち出すイケアの戦略を象徴する製品として、あえてその位置に置いたものだ。

海洋プラゴミ由来の素材を使った「ぬいぐるみ」

ぬいぐるみ

海洋プラゴミをリサイクルした素材を使ったというぬいぐるみ。イケア新製品発表会で、ステージの真横の「一等地」に展示されていたのには理由がある。

撮影:横山耕太郎

「サメのソフトトイが人気ですが、それよりも人気になりそうな、すごくかわいい海の生物たちのコレクションです。こちらは海洋プラスチックを内部に使用している、とてもサステナブルな商品です」

イケア・ジャパンのCountry Interior Design Manager安住佐知子氏は、ステージ上でそう説明した。

サメのぬいぐるみが人気のイケアだが、10月1日に新発売するのは、約1メートルのクジラと約60センチのシャチのぬいぐるみだ(値段はそれぞれ税込2499円と1499円)。

このぬいぐるみの売りは、海の汚染軽減につながる製品であること。イケアによると、中素材には海岸線から50キロメートルのエリアで回収された海洋プラスチックごみを原料にしたリサイクルポリエステルを100%使用しているという。

どの国の海洋プラスチックを再利用しているのかなどの詳細は公表していない。

2030年までにリサイクル100%に

ステージ

原宿での新商品展示イベント。イケアの製品開発について、「サステナブル」が5つの要素の1つに含まれていると説明。

撮影:横山耕太郎

新製品イベントでは、イケアの製品開発が指標とする「5つの側面」についても説明された。

その5つとは、「Form(美しいデザイン)」「Low price(低価格)」「Function(優れた機能性)」「Quality(高品質)」、そして「Sustainability(持続可能性)」だ。

イケアでは、「2030年までに全ての新製品を、再生可能素材またはリサイクル素材で製造する」という目標を掲げている。現状では、イケアの家具・雑貨製品のうち、「 55.8%が再生可能素材を使用し、17.3%がリサイクル素材を使っている」という。

今回の海洋プラゴミをリサイクルした素材でクジラのぬいぐるみを作った理由について、イケア・ジャパンCountry Sustainability Managerの平山絵梨氏は次のように説明した。

「現状ではポリエステル素材のリサイクルについては進んできていますが、海洋ごみを再生した素材はまだまだ供給が限られています。イケアにとって特別な存在でもあるぬいぐるみに、この素材を使うことで啓蒙の一環になると考えています。家族や親子でこの商品を通じて環境について話す機会になればうれしい」

本棚も「解体可能」に。引っ越し時の「分解」に対応

本棚

定番の木製本棚は、解体可能に生まれ変わった。

撮影:横山耕太郎

発表会では、イケアの人気製品・木製本棚「BILLY(ビリー)」も、「サステナブルに生まれ変わった」と打ち出した。

木製本棚ビリーは1979年に発売された製品で、これまでに1億2000万台を販売。近年では「全世界で5秒に1台売れている」という。

今回の改良では、これまで本棚表面に薄い木材を貼っていたものを、木目柄(がら)の紙素材に変更することで木材の使用量を削減。また背中の面の板材は、これまでクギで固定していたが、取り外し可能なピンを採用することで簡単に分解できるようになった。

「これまでは販売時にも、くぎ打ち商品の解体はおすすめしていなかった。新しくなったビリーは引っ越しの時にも分解できますし、使わない時期はコンパクトに収納できるため、より長く使用してもらえると思う」(イケアジャパン広報担当者)

すでに7月から、木目柄の3種類のビリーは解体可能なモデルに変更されており、白色の製品についても今後、切り替える予定だという。

イケアの「大量生産」とサステナブルは両立するか?

平山さん

イケアジャパンCountry Susrainable Managerの平山絵梨氏

撮影:山﨑拓実

サステナブルを謳(うた)うイケアだが、大量生産による低価格な家具販売は、サステナブルとは必ずしも両立しない側面もはらむ。

グローバルメーカーであるイケアは、環境負荷についてどう考えているのか?

前出のCountry Sustainability Managerの平山氏に聞いた。

—— 環境負荷の面では、安価な家具を次々と買い換えることは負荷が大きいとも言えます。イケアが考えるサステナブルについての考え方を教えてください。

ご指摘の通り「大量生産しているのだから大量消費を促してるんでしょう」と、批判を受けることはもちろんあります。

私達はできないことを考えるのではなく、持っているスケールをどう社会に還元できるかを軸に考えています。例えば、やはり規模が小さいメーカであれば、環境に良い商品を作ろうとするとどうしても高価になってしまう。

イケアはこのスケールメリットを存分に生かしながら、より多くの人にサステナブルな暮らしを届けることができる。それを我々の自信として事業活動を行っています。

「どんなベネフィットがあるのか」を提案

—— グローバルで見た場合、日本市場はサステナブルな製品への関心は高いのでしょうか?

世界のイケアの小売り部門はインカ・グループが統括しており、サステナビリティに関連するKPIを定め、国ごとに比較しています。サステナブルな商品の販売比率や、消費しているエネルギー量、ごみの量などを指標として比較した結果、イケアジャパンは1位となっており、取り組みが進んでいる国だと言えます。

ただ一方で、欧米に比べると気候変動に関する認識の面では、(日本は)まだポテンシャルがあると感じています。「SDGsは聞くけれど具体的に何が起こってるのだろうか」という認識の面で、日本はまだポテンシャルがある。

日本では、環境のためにサステナブルな商品を買いたい人は多いものの、具体的にどの商品を選ぶのが正しいかわからない、またはいい商品だと思っても高価だという、2つの点がボトルネックなっています。

イケアでは、ふわっと「サステナブルですよ」と言うのではなく、具体的にどうサステナブルなのかを丁寧に説明しながら提案していきたいと思っています。

またその商品が「自分にとってどんなベネフィットがあるのか」を伝えることが、日本市場では大事だと思っています。具体的に言うと節電・節水やゴミの分別など、環境負荷が下がると提案するだけでなく、お金の節約にもつながると提案することなどです。

—— 世界的に原材料費が高騰しているのが現状です。低価格であることを売りにしているイケアですが、今後も低価格を維持していく方針でしょうか?

価格について発言する立場にありません。

ただサステナビリティは一部の意識の高い人だけではなくて、みんなで取り組んでいかないといけません。多くの人に選択してもらうためにどうすればいいかを考えると、やはり妥当な値段でないと。そのために企業努力を続けていきたいと思っています。

(文・横山耕太郎

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