世界最大の環境ビジネスコンペ「ClimateLauchpad 2022」日本大会。上位3チームが次のアジア&パシフィック大会の出場権を獲得した。
提供:PDIE Group
環境分野のスタートアップを支援する世界最大の起業家育成コンペティション「ClimateLaunchpad 2022」日本大会が、8月28日に開催された。日本大会は 「Co-Creating a better Tomorrow」をビジョンに掲げ、持続可能なイノベーションを見つけ出し世界に普及させる取り組みを行うPDIEグループの主催で行われた。
今年で2回目となる日本大会には8チームが出場。世界的に注目される植物性タンパク「ルパン豆」の生産・商品化を目指す「Lupinus(ルピナス)」が1位に輝いた。
育成重視の国際ビジネスコンペ
日本大会は東京・港区のWeWork神谷町トラストタワーで開催。各チームがどんなアイデアを披露するのか。来場者は真剣な表情で聞き入っていた。
提供:PDIE Group
ClimateLaunchpadは、世界60カ国以上で開催されるEU発のクリーンテックにまつわるビジネス・アイデア・コンペだ。
最大の特徴は「育成」に力を入れていること。参加者は起業ノウハウを学ぶブートキャンプや、投資家に刺さるピッチ手法などを世界有数の専門家から学ぶ集中コーチングなどを受け、ビジネスアイデアを磨き上げていく。
日本大会の出場チームもそうした育成プログラムを通して磨いたピッチを披露し、ビジネスの概要や収益性、二酸化炭素(CO2)削減インパクトなどをアピールした。
審査の結果、先述のルピナス(1位)、野菜の水耕栽培タワーの開発・販売を目指す「Greentopia(グリーントピア)」(2位)、天然ゴムからバイオマス燃料を製造する「Innovare(イノベア)」(3位)の3チームが、アジア&パシフィック大会への出場権を手にした。
トップ3はルパン豆、水耕栽培タワー、バイオマス燃料
1位のルピナスは、ルパン豆の加工食品を日本で初めて開発・販売するビジネスを目指す。
1位を獲得したルピナスのチーム。左から3人目が代表の山下友加さん。
提供:PDIE Group
ルパン豆はマメ科の植物で、地中海地域では古くから料理やスナックの材料として使われてきた。世界的な人口急増によってタンパク質が不足する「タンパク質危機」が注目されるなか、大豆に代わる植物性タンパクとして世界的な脚光を浴びており、スタートアップの参入も始まっている。
ルピナスのビジネスプランは、農家と提携し日本各地で国産のルパン豆を生産して植物性ミートに加工、食料品店やレストラン、食品・飲料メーカーなどに販売するというものだ。
同チームの試算によると、ルパン豆の温室効果ガスの排出量削減は牛肉に比べて93%、大豆ミートより37%減らせるほか、大豆を含む他のタンパク質作物より少ない水で生産可能だと見込む。まずは日本の植物性ミート市場に参入し、将来的にはグローバル展開も視野に入れる。
大会の模様はオンラインでも配信された。画像はルピナスのピッチ資料。
オンライン配信画面をキャプチャ
2位のグリーントピアは、一般的な土耕栽培が環境に与える負荷を軽減する解決策として、ビルの屋上で野菜の水耕栽培を行うシステムの開発・販売を打ち出した。主なターゲットはビルのオーナーだが、「このテクノロジーが教育に果たす役割に大きく期待できる」(グリーントピア)とし、まずは学校への導入を進める考えだ。
3位のイノベアは、ベトナム産の天然ゴムの実からバイオディーゼル燃料を製造・販売するビジネス。ゴム製品の原料となる樹枝と異なり、これまで廃棄されてきた「未利用資源」の天然ゴムの実を使い、高品質で低価格なバイオディーゼル燃料の開発を目指す。
勝ち残った16チームが世界大会に出場
日本大会と言っても各チームの構成メンバーは国際色豊かで、審査員も日本から2人、海外から2人という陣容となった。
審査員を務めたBusiness Insider Japanブランドディレクターの高阪のぞみは、「Business Insider Japanは、『未来のつくり手』となる次世代のビジネスリーダーを巻き込むことでより良い社会の実現を目指すBetter Capitalismを掲げている。そうした社会をつくるためには、今回出場したClimate Tech(気候テック)分野のスタートアップの取り組みも非常に重要だ」とエールを送った。
ClimateLaunchpad 2022は現在、参加各国でNational Finals(国別大会)を実施中。その後、アジア&パシフィックなどのRegional Finals(エリア別大会)、Semi-final(準決勝)を経て、勝ち残った16チームが出場するGlobal Grand Final(世界大会)が11月に開催される。
(文・湯田陽子)