無料のメールマガジンに登録

平日17時にBusiness Insider Japanのメルマガをお届け。利用規約を確認


地方移住、その後の「収入見込み」が成功要因のひとつ【ミレニアル世代の家計診断 #1-後編】

Money Insiderでは新連載「ミレニアル世代の家計診断」を始めます。どんな環境でも柔軟に生きたい、経済的にも自立していたいと考えるミレニアル世代読者を公募し、ファイナンシャルプランナーとともに家計診断を行います。

【ミレニアル世代の家計診断#1 – 前編に引き続き登場するのは、教育移住を真剣に検討している夫婦。彼らのチャンスとリスクはどこにあるのでしょうか。

millennium_household_budget_1_2

移住後に安定した収入を見込めるのは、地方移住を成功させるポイントだ。

Image Source Trading Ltd/Shutterstock

  • 軽井沢への「教育移住」を計画する、ツトムさん・ユキさん夫婦の家計をプロが診断。
  • 家計・貯蓄状況をしっかり話し合って計画をすすめる2人に大きな問題は見当たらない。
  • しかし、証券口座や銀行口座の構成など、いくつか改善ポイントはある。

国内大手老舗IT企業に務めるツトムさん(仮名:40歳)とその妻・ユキさん(仮名:38歳)は、「教育移住」を具体的に検討している。現在、その有力候補地となっているのは、長野県北佐久郡軽井沢町だ。

軽井沢には、先進的な教育を実践する幼小中一貫校「軽井沢風越学園」が近年新設され、2人は強く魅力を感じている。新幹線を使えば、場合により首都圏郊外よりも通勤アクセスがいいのもポイントだ。

しかし2人がこの目標を完遂させるには、3つの課題が立ちはだかる。

  1. 軽井沢風越学園の入学規定と長男(4歳)の年齢の関係上、入学するなら遅くとも来年までには決断しなくてはならない。
  2. 現在の住居は、江東区にある築7年の持ち家・一軒家。原料価格の高騰で中古物件の需要が高まるなか、おそらく売却価格のピークを迎えている。
  3. 一方、移住先でも持ち家・一軒家を検討しているが、地方であっても住宅価格は急騰しており、簡単に決断できない状況になっている。

※詳細は、【ミレニアル世代の家計診断 #1-前編】を御覧ください。

教育移住を決断した場合、夫妻の家計にどう響いてくるのか? ファイナンシャルプランナーの西山美紀氏に診断してもらった。

ツトムさん・ユキさんの家計表

夫:ツトムさん(仮名、40歳)

国内大手老舗IT企業社員

妻:ユキさん(仮名、38歳)

都内ベンチャー企業社員(時短勤務)

子ども:男子4歳・女子1歳


手取り月収:夫 55万円、妻 23万円

家計簿の有無と管理方法:

あり 個別にアプリ管理

世帯貯蓄額(株・投信含む):1900万円

内訳 預金 400万円、投信 1500万円


住居:持ち家・一軒家(江東区・築7年)

変動金利 ローン残債3100万円

自家用車:なし


ひと月あたりの出費:

・住宅ローン返済 12万5000円

・食費 5万円

・外食費 1万円

・交際費 1万円

・通信費

スマホ 1万6000円

ネット 7000円

・光熱費 6万円

・日用品代 10万円(本人たちの小遣い含む)

・教育費

保育料 3万3000円

習い事 1万円

・保険費

夫 貯蓄タイプ 3万8000円

掛捨タイプ 9000円

妻 貯蓄タイプ 2万3000円

掛捨タイプ 4000円

学資保険 5万円

・貯蓄・投資

財形貯蓄 1万円

積立投信 15万円

しっかり貯めることを意識

まず西山氏が家計表で着目したのが、「貯蓄・投資」「保険」のカテゴリーだ。人によっては毎月1万5000円でも捻出するのをためらう分野だが、夫妻は将来の資産となるように貯蓄タイプの保険や積立投信などへ毎月25万円以上も割り当てている。

「未就学のお子さんがいる家庭は、幼児教育・保育の無償化や医療費の助成制度によって、家計に少し余裕があることが多い。そこで、習い事をさせたり頻繁にお出かけしたりして、逆に支出が増えることも多い」と、西山氏は指摘する。

「しかし2人は、支出の要不要を見極めてしっかり貯めることを意識している。これは素晴らしい、お手本のようだ」

とはいえ、低金利時代の今、貯蓄タイプの保険はあまりおすすめしていないと西山氏は補足する。だが、積立投信に月15万も振り分けているのであれば、バランス的にもちょうどいいという。

ただし、ここに改善すべきポイントが1つある。ツトムさん・ユキさん夫妻の積立投信は、通常の証券口座で運用されているという点だ。つみたてNISAを始めれば、2人で年間80万円分を20年の間、非課税で運用できる。通常、投資収益の20%が税金として徴収されるので、そこが丸々利益になると考えるとその差は大きい。

「生活防衛資金」という概念

次に西山氏が言及したのが、「家計簿の有無と管理方法」の部分だ。それぞれがアプリで金銭管理しているのは、共働き夫婦の場合だと、なかなかレアなケースだという。

ツトムさん・ユキさん夫妻は、お互いにいくら収入を得ていていくら使っているのか、1円単位で細かく共有し合っているわけではない。しかし、大きな買い物をする際には必ず話し合いは持つようにしているし、そのときの話の流れで、大まかな家計・貯蓄状況は把握し合っているという。

「共働きだと、片方が懸命に管理をしていてももう片方がどんどん使ってしまうということがよくある」と、西山氏は語る。「2人の場合、それぞれが金銭管理を意識していて、互いに話し合いそれぞれの家計・貯蓄状況を何となくでも把握し合っている。これはまさに、共働き夫婦の家計管理をうまくやるコツだ」

だが、ここにも懸念点がないわけではない。万が一の際に備えて取り分けておく「生活防衛資金」という概念がないのだ。つまり、銀行の普通口座に残された預金は、それぞれ使おうと思えばすぐにいくらでも使える状態にある。

「例えばネット銀行などを利用して、2人で共用の『生活防衛資金』口座を作るといい。普通口座の方は、それぞれ2カ月分の給料の額くらい残しておけば十分だろう。あとは有事の際に向けて取り分けておくと使い込んでしまう心配がないので安心だ」

地方移住を成功させるポイント

さて、本題に入ろう。ツトムさん・ユキさん夫妻の「教育移住」は、実行に移すとして、どのような影響を家計に及ぼすのか? まず、現状から想定できるリスクは3つあると西山氏は分析する。それは以下の通りだ。

2人の教育移住計画に潜む「リスク」

  1. 子どもが中学入学時に別の学校を希望したとき
  2. 子どもが大学入学時に一人暮らしを始めたとき
  3. 2人の勤務先が強制出社となったとき

これらは今のところ、自分たちの努力でいかんともしがたい部分でもある。特に1と2に関しては、今から悩んでも仕方がない。3については、どちらの勤務先も新興企業のためかなり柔軟に対応してくれると2人は見込んでいる。

そのうえで、「同じ地方移住を検討していても、危なっかしい方とそうでない方がいる」と、西山氏は切り出す。「2人の場合は完全に後者。基本的に問題ないと思う」

西山氏がツトムさん・ユキさん夫妻にそう太鼓判を押す根拠も3つある。

2人の教育移住計画における「チャンス」

  1. 現在の住居が高値で売却できる目処が立っている
  2. 預貯金がしっかり増えている
  3. それぞれが現在の仕事を楽しんでいる

リモートワークや新幹線通勤をしながらでも、現在の仕事を続けたいという意思があるツトムさんは「今の仕事に大きなやりがいを感じている」と語る。現在時短で勤務するユキさんも「ライフワークバランスが取れている今は、とても充実している」と明かす。

「最近ではFIREという言葉が流行っている。つまり、早期退職して旅行でもしながら悠々自適に暮らしたいという方が多いが、その実現は結構難しい。なぜならリタイアした後に、資金がショートしてしまうリスクが高いからだ」と、西山氏は指摘する。「2人のように移住した後も安定した収入を見込めるのは、地方移住を成功させるポイントだ」

「とりあえずは賃貸」という手段も

とはいうものの、実際問題、移住先の住宅価格も高騰しているのは、大きな障壁だ。現在の持ち家が想定以上に高く売れたとしても、相殺もしくはマイナスになるのであれば躊躇したくなる気持ちもよく分かる。

「そこが懸念ならば、とりあえず移住してみてしばらくは賃貸に住む手もある」と、西山氏は提案する。

「というのも住宅購入を焦らず賃貸に暮らせば、じっくりと現地で物件を探す時間ができるから。また、そのうち時が経てば現在の住宅価格の高騰も収まるかもしれない。そうすれば、さらに選択肢の幅も広がるはず」

(文・長田真)

  • Twitter
  • Facebook
  • LINE
  • LinkedIn
  • クリップボードにコピー
  • ×
  • …

あわせて読みたい

Popular