反政府デモを取り締まろうとする警察に抗議する人々(2022年8月30日、スリランカ)。
REUTERS/Dinuka Liyanawatte
- イギリスのリスク管理コンサルティング会社ベリスク・メープルクロフト(Verisk Maplecroft)の最新の分析によると、今後6カ月で世界の混乱と不安は増しそうだ。
- 同社が追跡している198カ国のうち101カ国で、社会不安のリスクが高まっているという。
- インフレと、ウクライナ侵攻に関連したエネルギー危機や食料危機がその大きな要因だとしている。
最新分析によると、2022年に入って世界の半数以上の国で社会不安のリスクが高まっていて、インフレ、戦争、生活必需品の不足の影響で国際社会の不安定性は今後、ますます高まる見込みだ。
イギリスのリスク管理コンサルティング会社ベリスク・メープルクロフトによると、2022年第2四半期から第3四半期の間に同社が「Civil Unrest Index」で追跡している198カ国のうち101カ国で社会不安のリスクが高まったという。
9月1日に公表したレポートの中で、同社は社会不安のリスクが下がった国はわずか42カ国だと報告している。
「2022年前半にも人々の注目を集めるような大規模デモは複数あったが、最悪の状況はまだこれからだということは疑いようがない」という。
ベリスク・メープルクロフトの指標は、インフレの度合いや反対意見に対する政府の対応、社会不安がその国のインフラにどの程度深刻な影響を及ぼすかといった複数の要素をもとにしている。
レポートによると、ペルーやケニア、エクアドル、イランといった国々では生活費の高騰を受け、政府に対する不満を訴える街頭デモが増えている。中でもベリスク・メープルクロフトの指標で政府の安定性が最も低下したのはスリランカで、深刻な経済危機をめぐる大規模デモはラジャパクサ前大統領を辞任へと追い込んだ。
社会不安のリスクが最も高いのは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック中には社会的保護を提供するための資金があったものの、今では国民にとって不可欠な出費を維持するのに苦戦している中所得国だと、レポートは指摘している。
欧州連合(EU)の比較的裕福な国も同様のリスクに直面している —— ロシアによるウクライナ侵攻の影響で、スイスやオランダ、ドイツ、ボスニア・ヘルツェゴビナでは不満が高まりそうだ。
「ロシアのウクライナ侵攻は食料や燃料の価格を高騰させ、世界各地で生活費危機をかき立てている」とレポートにはある。
「ただ、最悪の影響はまだこれからだ」
一方、ドイツのエネルギー不足は停電や電気代の高騰を招いていて、規制当局は冬に備えて天然ガスの使用を削減しなければならないと述べた。
これまで天然ガスの15%をロシアから輸入してきたオランダも、フローニンゲン地方でのガス採掘を増やすかどうかのジレンマに陥っている。同地方では採掘に誘発された地震で、すでに2万6000世帯が深刻な被害を受けている。
インフレは今後数カ月で人々にさらに痛みを与え、2023年にはさらに悪化する見込みだと、ベリスク・メープルクロフトはレポートに書いている。
「世界の食料価格とエネルギー価格の大幅な低下だけが、社会不安リスクにおける悪い傾向を食い止めることができる」
天候も重要な要素だという。ヨーロッパの今年の秋冬が例年よりも寒くなれば、「すでに深刻なエネルギー危機、生活費危機」を悪化させるだろうと、同社は指摘している。
干ばつも食料価格を高騰させ、影響を受けた国々では抗議活動を引き起こすだろうと同社は報告している。
「今後6カ月で(状況は)さらに壊滅的になる可能性が高い」
[原文:Risk of civil unrest surging in more than half of the world's countries, analysis says]
(翻訳、編集:山口佳美)