茶色い粒のドッグフードは人間の都合──250社参加のスタートアップ登竜門、優勝者に聞くペット産業の「違和感」

撮影中の愛犬コルクを愛おしそうに眺めるのは、ペットウェルネスカンパニーPETOKOTO(ペトコト) CEOの大久保泰介氏。事業の方向性を模索していた約6年前に出会ったコルクは、足が内またという理由だけで犬のオークションで捨てられ、保護犬となったのを譲り受けたという。

2015年に創業したPETOKOTOは、「ペットを家族として愛せる世界へ。」をミッションとし、ペットフードなど主に3つの事業を展開。次世代の起業家が集まる日本最大級のピッチイベント「IVS2022 LAUNCHPAD NAHA」では250社の中から優勝を勝ち取った。

注目の集まる同社に、ペットビジネスの課題やサービスを通じて解決したいこと、今後の展開などを聞いた。

堅調に伸びているペット産業。その理由は?

PETOKOTO 代表取締役 CEO 大久保泰介氏と愛犬

PETOKOTO 代表取締役 CEO 大久保泰介(おおくぼ・たいすけ)氏/同志社大学経済学部卒。大学在学中にイギリスでサッカーをする傍らUNIQLO U.K.のマーケティング業務を担当。2012年グリーに入社し、グローバル採用マーケティング、採用戦略、財務管理などに従事。ITを活用してペットライフを豊かにしたいと2015年3月にPETOKOTOを起業。

「いま、世界的にペットの家族化が進んでいます」(大久保氏)

ここのところペットの飼育数は停滞傾向にあったが、コロナ禍により増加。国内のペットビジネス市場は1.7兆円とも言われている。(参照:矢野経済研究所「ペットビジネスに関する調査」)

ペットを人のように扱う「ペット・ヒューマニゼーション」の考え方も広まっていて、健康への配慮、食事、飼育環境などに人間同様の質の高いサービスを求める傾向が強くあり、ペットにかける年間支出額は増加している。

「コロナ禍でペットを飼う人が増えたものの、日本では、ペットと暮らす上でのハードルがいくつもあるのが現状です。

ペット不可の物件が多い、公共交通機関で運べるのは10kg以下のペットのみで大型犬は車移動しかできないなど、実際に飼い始めた後に、一緒に暮らすことに難しさを感じる人も多いと聞きます」(大久保氏)

さらに、犬や猫は“ペット”とひと括りにされがちだが、種類や大きさ、年齢などによって適切な飼い方や暮らし方、食事の内容は異なる。しかし、ペットオーナーは信頼できる正しい情報を満足に得られていないケースが多いという。

事業展開のキーは「信頼性」と「透明性」

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日本では「年間3.3万匹ほどの犬猫が殺処分されている」という。

提供:PETOKOTO

また、深刻な問題の1つに、犬猫の大量生産・大量消費ビジネスからなる殺処分がある。その解決策として同社が取り組んでいる事業の1つが、保護犬猫とのマッチングサイト「OMUSUBI(おむすび)」だ。

「OMUSUBIには現在、審査を通過した250ほどの保護団体が登録されていて、飼いたい方の年齢や家族構成、生活の好みなどを把握して、相性度によるマッチングをしています。殺処分を解決する受け皿として、どんな犬猫でももらい手ができるような仕組みづくりを目指しています」(大久保氏)

飼い主は犬や猫を迎えると3~5万円ほどを譲渡費用として保護団体に支払う。ペットショップと比較すると6分の1ほどの費用だ。

保護犬猫の存在についてはメディアで取り上げられることも増え認知は広まってきているものの、保健所での年間収容頭数はほぼ横ばいの状況が続いていて「根本的な解決に至っているとは言えない」と大久保氏。保護活動自体のサポートも行いながら、社会全体で命を尊重・支援する方針だ。

ウェブメディア「PETOKOTO MEDIA」のスクリーンショット

提供:PETOKOTO

ペットを育てる上での情報不足という課題を補うのは、2つ目の事業「PETOKOTO MEDIA」だ。月に250万PVを誇るペット専用のメディアで、獣医やトリマー、PETOKOTO内の編集部が執筆している。匿名でなく記名にすることや、専門家が監修を行うことで信頼性を担保している。

「ペットに関してはさまざまな情報が足りていません。栄養やしつけ、お出かけスポット、ドッグカフェの情報など、ペットと暮らす日々が楽しくなるような幅広い記事を掲載しています」(大久保氏)

「もし自分が犬だったら、“茶色い乾いた豆粒”は食べたくない 」

お座りしているコーギー犬

マッチングサイトとメディアの売上は広告収入のみ。一方、直接販売として事業の柱となっているのが「PETOKOTO FOODS」だ。これは、大久保氏自らが強い課題感を持っていた、ペットの食事を提供する事業だ。

「一般的なドライフードは、犬の嗜好性を高めるために動物性油脂や香料などの添加物が使用されています。僕は『茶色い豆粒』と呼んでいて、自分がもし犬だったら食べたくないなと思ったんです。

僕たちが提供するのは新しいジャンルのフレッシュフード。スチーム加工して急速冷凍するので、保存料無添加なうえ、栄養素が失われにくいのです」(大久保氏)

ヘルシーなペットフード「PETOKOTO FOODS」

PETOKOTO FOODSは、2020年2月の正式販売後2年間で1,000万食を突破し順調にユーザーを増やしている。

提供:PETOKOTO

サブスクリプションでフードを提供しており、「ビーフ」「チキン」「ポーク」「フィッシュ」の4種類を用意。年齢や体重、悩みなどの質問に答えることで、適切なカロリーのフードを提案する。さらに、成長や体重の変化によって内容を自動提案し、獣医が365日のチャット相談にも応じる。

「お客さまからの評判はとてもよく、ペットの『食いつき満足度』は95%という評価をいただいています。

それだけでなく『毛なみがよくなった』『涙やけが治った』『便の質がよくなった』といった体調面の改善に対するお声も多い。事業を通じて、犬や猫の一生涯の健康をサポートしていきたいと思っています」(大久保氏)

一方で、サービス内容はまだまだ十分ではないという。現在は、注文から届くまでのリードタイムが1週間ほどかかる、病気の時の食事に対応できていないなど、課題もある。今後もデジタルを活用しながらサービスを拡充したい考えだ。

「短期的に利益が増えることでも、ミッションに反する選択はしない」

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提供:PETOKOTO

ペット好きな人が増えているとはいえ、社会全体で見るとペット愛好家はマイノリティだ。大久保氏はペット好きの人たちが、社会に受け入れられていく活動も大切にしたいと考えている。

「JR東日本との取り組みでは、日本で初めてペット専用新幹線の運用実験を実施しました。全車両を貸し切り、決められた時間内は犬をゲージから出してOK。

今まで、電車内で一緒に外の景色を見ることはできなかったので、進化の一歩だったと思います。

今後の実現にあたっては、ペットが苦手な方や、アレルギーのある方など、清掃面や乗車オペレーションも検討していかなければならす、その検証も行いました」(大久保氏)

電車に乗る犬たち

提供:PETOKOTO

アウトドアが好きな大久保氏は、犬と一緒に行ける登山の情報をPETOKOTO MEDIAの記事として掲載したことがある。ただ、山に犬が増えすぎると、苦手な方が行きづらくなることは否めない。「犬と行ける登山」を実現しつつも、マナーを守るなど配慮も必要だという。

「PETOKOTOユーザーのみなさんは『ペットを家族として愛するプロ』だと考えています。ユーザーのみなさんと一緒にミッションを実現していきたい。

当社のサービスを使っていただきながら、マナーを守って活動することで、交通・公共機関でのペット環境も今より良いものになっていくと思います。

ペット好きたちだけのコミュニティに閉じるのではなく、『輪の外も想像しよう』がPETOKOTOの価値観。これは社内はもちろん、ユーザーのみなさまにもお伝えしています」(大久保氏)

そんな大久保氏の譲れない信念は「ペットを家族として愛せる世界へ。」というミッションから外れないこと。

例えば、フレッシュフードよりもドライフードの方が現時点では市場が大きいが、ドライフードは販売しない。また、動物愛護の観点で課題のあるペットショップでの「展示販売」はミッションにそぐわないため、卸先としては選ばない、などだ。

情報提供や食事面だけではない。「PETOKOTO経済圏」をつくる

ペットウェルネスカンパニーPETOKOTO(ペトコト) CEOの大久保泰介氏

ペットライフに寄り添うウェルネスブランドとして、「PETOKOTO経済圏を作っていきたい」と大久保氏。

「今後はさらに、現状の事業以外でも、ペットを家族と考える方の生活圏を支えていきます。医療や保険、旅行などのほか、家具や衣類なども。

例えば、僕が飼っている犬のコルクはコーギーで、毛が抜けやすい。そのため、ソファは毛が目立たない色や素材で洗えるものがよく、服は黒以外を選びます。ペットと共存する生活で必要なものは全部、サービスの対象です」(大久保氏)

そんな中、直近で拡充するサービスとして取り組んでいるのは医療の分野だ。動物病院事業は自由診療扱いのため、病院によって5倍ほどの価格差が付くこともある。待ち時間が長く診療時間が短いため、負の体験として捉えている飼い主も多い。

「完全予約制で、オンライン相談ができる体制を整えています。早ければ2023年の秋ごろにはオンラインの動物病院を立ち上げる予定です」(大久保氏)

アプリのローンチも予定しており、まずは医療の機能を搭載する。将来的には、現在の3事業も一つのアプリ内に組み込み、顧客にシームレスな体験として提供する予定だ。

インタビューの最後に、「IVS2022 LAUNCHPAD NAHA」での優勝を踏まえ、今後の意気込みを聞いた。

「イベントの優勝がこれだけインパクトが大きいとは、思っていませんでした。

投資を申し出てくださる企業もいましたし、『ペットビジネスの希望の星だ』と言われることも。今後はアジア展開も視野に入れ、社会全体をペットフレンドリーにしていきたいと考えています」(大久保氏)

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