撮影:山﨑拓実、Beyond Sustainability 2022より、画像:リージョナルフィッシュ
京都大学発ベンチャーで、ゲノム編集技術を用いた品種改良や陸上養殖を手掛けるスタートアップのリージョナルフィッシュが9月5日、シリーズBで20.4億円の資金調達を実施したことを発表した。
既存投資家である、Beyond Next Ventures、荏原製作所、三菱UFJキャピタルをはじめとした5社に加えて、新規投資家としてNTTファイナンス、岩谷産業、マルイグループなど12社が引受先となった。
リージョナルフィッシュの累計調達金額は、これで約26.4億円になる。
リージョナルフィッシュは今回の資金調達によって、国内最大級の養殖プラント新設による水産物の量産体制整備のほか、海外進出、品種改良やスマート養殖の研究開発を進めるとしている。
リージョナルフィッシュが開発したゲノム編集トラフグ(22世紀ふぐ)の刺し身。
撮影:山﨑拓実
リージョナルフィッシュの梅川忠典CEOは、調達した資金の使途の一つである国内最大級の養殖プラントの建設について、
「既存のゲノム編集した水産物(マダイやトラフグ)および新規のパイプラインも想定しております。1万平米以上で、現在の生産量の約20倍となります。すでに着手しており、2023年度中にはオープンできると思います」(梅川CEO)
とBusiness Insider Japanの取材に応じた。
また、リージョナルフィッシュは、8月26日に、インドネシアの水産系スタートアップ企業PT Aruna Jaya Nuswantaraと共にJETRO(日本貿易振興機構)のプロジェクトに採択されたことを発表している。このことからも分かるように、リージョナルフィッシュが海外展開でまず最初に狙うのは、水産大国であるインドネシアだ。
梅川CEOは、海外展開を進める上での課題を次のように語る。
「現地でのゲノム編集に必要な設備を確保できる、また外資規制がある中で、実効的なパートナリングができるかだと思っております」(梅川CEO)
また、昨今の世界的な不況によって、スタートアップの資金調達が難しくなっている側面がある。ただ、これについて、梅川CEOは率直に「今回の調達において難しさを感じることはなかった」と話す。
「嬉しいことに弊社への投資に関心のある会社を募ったところ、事業会社40社が手を挙げて下さり、そこから、業務提携・共同研究の状況やシナジー効果を勘案して、DD(デューデリジェンス=企業価値やリスクの調査)をしていただく会社様の選定には苦労しました。その後も資金が集まりすぎて、オーバーサブスクライブしないよう調整に苦労しました」(梅川CEO)
世界的なタンパク質危機や国内水産業の衰退という社会課題に対して、ゲノム編集を活用した解決策がどこまでか浸透していくのか。今後の展開が注目される。
(文・三ツ村崇志)