John Minchillo/AP
- 小売業者は、インフレが買い物客に与える影響の深刻さについて訴えている。
- クレジットカードの利用が増加し、返済の遅れや滞納が発生していると感じている業者もいる。
- また、買い物客がより安い商品に買い換えたり、贅沢品を避けたり、チップを減らしたりしているのを目にするという業者もいる。
インフレが消費者の家計を圧迫し、小売業者もその影響を感じている。
アメリカでは新型コロナのパンデミックの頃のように家庭用品が景気よく売れたり、サービス業従事者へ高額のチップが支払われたり、景気刺激策の現金給付で銀行口座がうるおったりすることはもうない。その代わりに、加速するインフレの中で消費者は出費を控えるようになっている。
こうした変化の一端が、ここ数週間で発表された小売企業の四半期決算によって明らかになっている。ここでは物価の高騰に伴い、買い物の傾向がどのように変わってきたのか紹介する。
1. より安い商品や店舗が選ばれるようになった
チポトレのサラダ。
Joe Raedle/Getty Images
ウォルマート(Walmart)は、2022年5月ごろから顧客が有名ブランドを敬遠し、同社のプライベートブランドを好むようになったことに気が付いた。
「いくつかの変化が見られる。例えばブランドからプライベートブランドへの切り替えといったことだ」とウォルマートUSのジョン・ファーナー(John Furner)CEOは第1四半期の決算説明会で述べている。
「惣菜、ランチョンミート、ベーコン、乳製品などのカテゴリーで、顧客の買い替えが見られる」
このような消費者行動は「トレードダウン」と呼ばれ、ここ数カ月の間に増加の一途をたどっている。消費者は購入する商品のグレードを下げるだけでなく、格安志向の店舗に切り替えて節約するようになっているのだ。チポトレ(Chipotle)は突如として金持ちのためのレストランとなり、高額所得者も1ドルショップで買い物をするようになった。またモルソン・クアーズ(Molson Coors)の製品の中ではキーストン・ライトやミラー・ハイライフといった安いビールの需要が高まり、マクドナルドの客はコンボミールをスキップするようになった。
2. クレジットカードの利用が増え、滞納や未払いも増えてきた
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経済が逼迫すると現れる現象がある。コロンビアビジネススクールの小売研究ディレクター、マーク・コーエン(Mark Cohen)は「クレジットカード負債、返済の遅れ、滞納、未払いが、喫緊の課題になる」とInsiderに語っている。
彼によると、家計を管理する者が、まずは払えるものから払い、払えないものは払わないという状況はよくあるという。そして、他の出費が多いままだとまったく返済しなくなる。
メイシーズ(Macy's)は、すでにそのような事態に陥っている。同社は8月の第2四半期決算説明会で、顧客のクレジットカードの支払残高が増加し、返済の遅れや滞納の増加といった「初期症状」が見られると述べている。
「この業界をより広く見渡せば、インフレが賃金の伸びを上回っていることが分かる。これは消費者にとって持続可能なことではない」と最高財務責任者のエイドリアン・ミッチェル(Adrian Mitchell)は述べ、ガソリン代や食料品の高騰により、消費者が「圧迫されている」と指摘した。
低所得者層や若年層は、生活費をまかなうのに最も苦労していることから、クレジットカードに頼っているようだ。これらの層のクレジットカード支払残高は、前四半期にそれぞれ25%、30%増加したと、クレジットスコア会社VantageScoreのデータが示している。
3. 高額なぜいたく品への支出が減少した
AP/Charlie Riedel
富裕層はインフレの影響をほとんど受けないが、中低所得層だとそうはいかず、彼らが最初に削るのはぜいたく品だ。
全米最大の高級百貨店、ノードストローム(Nordstrom)のピート・ノードストローム(Pete Nordstrom)社長は同社の第2四半期決算説明会で、高級品部門は「かなり安定している」ものの、比較的低価格帯のデザイナーズ商品の売れ行きが鈍化していると指摘した。
一方、家電量販店のベスト・バイ(Best Buy)では、インフレが「不均一な販売環境」を引き起こし、第2四半期の家電製品の売上はおよそ13%減少したという。大型ディスカウントスーパーのターゲット(Target)も、高額商品、特に家電製品に対する需要が鈍化したと報告している。
4. チップを節約しているようだ
Elaine Thompson/AP
多くの消費者にとって、物価が上がるということは余分な小銭が減るということであり、その結果、チップを減らす傾向にあるようだ。
レストランでのチップはほぼ変わらないが、テイクアウトやコーヒーショップのような店頭でのチップは減少傾向にあるとCNBCが報じている。
「あらゆるものの価格が上がってから、チップの額が減っている」と、ワシントンのSweetly Bakery & Cafeのオーナー、イリーナ・シロッキナ(Irina Sirotkina)はCNBCに語っている。
ウォール・ストリート・ジャーナルが引用したSquareのデータによると、ファストフード店などでのチップの平均額は、2021年3月には注文額の17.2%だったが、2022年2月には15.2%に低下したという。
(翻訳:仲田文子、編集:Toshihiko Inoue)