18世紀に建てられた民家のキッチンの下から発見された金貨の一部。
Spink & Son
- 17世紀から18世紀にかけての金貨260枚以上が、2019年にイギリスにある家の床下から発見された。
- この金貨は、16世紀から18世紀にかけて勢力を誇った商家のものである可能性が高い。
- オークション会社のSpink&Sonによると、このコインは2022年10月のオークションで少なくとも29万ドルの値がつく可能性があるという。
2019年、18世紀に建てられた住宅の所有者がキッチンを改装した際、260枚以上の金貨を発見した。2022年10月に開催されるオークションで、その金貨のコレクションに29万ドルの(約4150万円)値がつく可能性があることが分かった。
ロンドンのオークション・収集品会社、Spink&Sonのプレスリリースによると「ほぼすべてのコインが当時のポンド硬貨で、これまでイギリスで発見された18世紀のイギリスの金貨の中でも最大級の価値を持つもの」だという。
この金貨は、ジェームズ1世(イングランド王在位:1603-1625年)からジョージ1世(グレートブリテン王在位:1714-1727年)までが統治した時代のもので、ノース・ヨークシャーで改築中の家のコンクリートや床板の下にあった塩の容器から発見された。プレスリリースによると、その容器は「ソフトドリンクの缶より小さい」ものだったという。
1610年から1727年までの金貨で、現在でいうと約10万ポンド(約1646万円)相当の貨幣価値があるという。
「このような目立たない場所から、本当に素晴らしい、思いがけない発見があった」とSpink&Sonのシニアスペシャリスト兼オークショニアであるグレゴリー・エドムンド(Gregory Edmund)はプレスリリースで述べている。「この素晴らしい発見を共有し、後世の人々のためにこの埋蔵品の調査ができることは非常に名誉なことだ」と彼は述べ、「Ellerby Area Hoard」と名付けられたこれらの金貨は2022年10月7日に入札が行われる予定であることを明らかにした。
金貨は16世紀後半から18世紀に勢力を誇っていた商人の一族、ファーンリー・マイスターズ(Fernley-Maisters)家のものだと思われる。プレスリリースによると、ファーンリー・マイスターズ家はバルト海の鉄鉱石、木材、石炭の輸入・輸出業者として富を築き、中には1700年初頭に国会議員を務めた人物もいたという。
「その家系はすぐに絶えてしまい、それがコインが残された理由だと思われる」とプレスリリースには書かれている。オークション会社によると、コインの所有者であったジョセフ(Joseph)とサラ(Sarah)は、それぞれ1725年と1745年に亡くなっている。
銀行に対する不信感から埋めたのかも
「ジョセフとサラは、当時新たに設立されたイングランド銀行や紙幣、さらには当時の金貨さえ信用していなかったのだろう。というのも17世紀半ばのイングランド内戦時代のものやそれ以前のコインを多く保持しているからだ」とエドムンドは述べている。
Spink&Sonによると、このコインは2019年に発見されたため、1996年に制定された「宝物法(Treasure Act)」の下では、惜しくも「宝物」とは見なされなかったという。同法によると、300年以上前の2枚以上の金貨は「考古学的な宝物」として認定される(王室の所有物とみなされる)。
エドムンドは、金貨の発見は「夢のような話」だが、この金貨そのものは「心を揺さぶる」ものではないという。
「それらは単に、日々使われていた50ポンドや100ポンドの硬貨が、裕福な持ち主によって埋められ、不思議なことに今日まで取り出されなかったことを示しているに過ぎないからだ」
(翻訳:大場真由子、編集:Toshihiko Inoue)