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- ネット上で悲観的なニュースや情報を閲覧し続ける「ドゥームスクローリング」は、心身の健康を悪化させる可能性があるという研究結果が発表された。
- アメリカの成人1100人を対象にした調査で、16.5%が「深刻な問題のある」ニュースの消費習慣を持っていることが示唆された。
- 新型コロナウイルスのパンデミック中に「ドゥームスクローリング」という言葉は一躍有名になっている。
悪いニュースがどこにでも溢れているような状況では、それを断ち切ることは容易ではない。しかし、悪いニュースを過剰に見すぎると、精神的・身体的な健康を悪化させる可能性があることが新たな研究で示唆された。
アメリカの成人1100人を対象に行われたこの調査で、回答者の16.5%が悪いニュースを消費する「深刻な問題のある」習慣を持っていると答えた。2022年8月の『ヘルス・コミュニケーション(Health Communication)』誌に掲載されたこの研究結果では、悪いニュースを多く見た人は見ない人と比較すると「精神的・肉体的にも不調が大きい」 ことも示唆されている。この調査でいう「不調」の例としては、不安、ストレス、うつなどがあり、これらはすべてこの調査で自己申告されたものである。
新型コロナウイルスのパンデミックが始まると、悪いニュースを延々とスクロールすることが普通になった。ネガティブで悲惨なニュースが氾濫し、この行為は「ドゥームスクローリング(doomscrolling)」、あるいは「ドゥームサーフィング(doomsurfing)」として知られるようになった。
「一部のアメリカ人にとって、これらの出来事をニュースとして目にすることは、世界が暗く危険な場所に見えることで監視の動機を過熱させ、常に厳戒態勢を強化することになると我々は考える」とと、この研究の著者らは述べている。この調査は、テキサス工科大学(Texas Tech University)のブライアン・マクローリン(Bryan McLaughlin)、メリッサ・ゴットリーブ(Melissa Gotlieb)、デヴィン・ミルズ(Devin Mills)により2021年8月に実施された。
さらに、人によっては、「感情を抑えるどころか、精神的苦痛を和らげるためにニュースに執着し、24時間体制で最新情報をチェックするという悪循環に陥りかねない」と著者らは述べている。
ニュースの見方に「中程度の問題がある」としている人の割合は27.3%、「わずかに問題がある」という人は27.5%、「問題がない」人は28.7%で、調査対象者の多くは「深刻な問題」を抱えてはいなかった。
この研究は、ニュースを読んだり見たりする時間の長さが参加者の行動をどの程度「問題性」をはらむものにするのかを明記していないが、調査対象者が採点された尺度は以下の通りだ。
- ニュースに没頭している
- ニュースについて頻繁に考えている
- 不安を軽減するためにニュースを読んだり見たりする
- ニュースを読んだり見たりしないことが困難
- ニュースに集中してしまって学業や仕事に集中できない
この研究では、中程度に問題のあるニュース消費をしている人については、「問題のほとんどない、または問題のない」人よりも精神的不調が大きく、「問題のほとんどない」人よりも身体的不調が大きいことが示唆されている。
また、ニュースの消費習慣に「問題のほとんどない」あるいは「問題のない」人には、心身ともに害はないことが示されている。
「このことは、危険な世界にある程度没頭しても、その世界に閉じ込められて逃げ場がない状態を伴わない限り、心身の健康には問題がないことを示している」とこの研究の著者は述べている。
著者によると、この結果は、人々や社会、民主主義の幸福にとって「重要な意味」があるという。
「これらは、ニュース消費が問題行動に発展する可能性があることを認識させるメディア・リテラシーキャンペーンの必要性を示しているとともに、介入戦略を策定する必要性を示している」 と著者は述べている。
(翻訳:大場真由子、編集:Toshihiko Inoue)