ホンダ:FotograFFF/Shutterstock.com、日産:FotograFFF/Shutterstock.com、トヨタ:JuliusKielaitis/Shutterstock.com
国際環境NGOのグリーンピースは、9月8日、世界の大手自動車メーカー10社を対象に、気候変動に対する取り組みをランキング形式でまとめた報告書「自動車環境ガイド2022」を発表した。
日本企業で対象となったのは、トヨタ自動車、日産自動車、ホンダの3社。
このうち、トヨタは2021年に続き最下位。日産(8位)、ホンダ(9位)もともに昨年から3位順位を落としたことで、日本勢が下位を独占する形となった。
なお、海外勢で対象となったのは、ゼネラル・モーターズ(米)、メルセデス・ベンツ(独)、フォルクスワーゲン(独)、フォード(米)、ヒュンダイ・起亜(韓)、ルノー(仏)、プジョーなどを展開するステランティス(仏)の7社だった。
グリーンピースが発表したランキング。「ZEV販売割合」とは、ゼロ・エミッション自動車の販売割合を指す。
出典:GPEA
目標掲げるも、実態が追いつかず。日野自動車の不正も影響のトヨタ
報告書では、「内燃車の段階的廃止」「サプライチェーンの脱炭素化」「資源の節約と効率化」の3パートに分けて各社の取り組みがスコア化されている。また、この3パートに含まれないネガティブ要因があれば、各要因ごとに最大で1点減点される。
ここ数年の間のZEVの販売台数の推移。2020年から2021年にかけて大幅に伸びている。2022年は途中経過だ。
出典:GPEA
ここ数年の間で、電気自動車(EV)をはじめとした二酸化炭素などの温室効果ガスを排出しないZEV(ゼロ・エミッション自動車)が普及してきた。特に欧州を中心に各社それぞれ対応を加速させてきたことで、グリーンピースが発表した最新のランキングでは、トヨタ、日産、ホンダの日本勢が下位を独占する形となった。
グリーンピース・ジャパンで気候変動・エネルギー担当のダニエル・リード氏は記者会見で、2021年12月にトヨタが「2030年までのZEV(EVと燃料電池車・FCVを含む)の販売目標を200万台から350万台に引き上げる」と宣言したことを「非常に評価できる」としたものの、
「実績を見るとまだまだ不十分です。(トヨタの)2021年のZEVの販売台数は約1万7000台。ホンダの全販売台数はトヨタの全販売台数の半分程度ですが、それでもZEVを約1万5000台販売しています。そう考えると(トヨタは)遅れていると言えます」
と、世界最大手としての取り組みとしては依然として不十分だと指摘した。
ランキング掲載の10社の全販売台数。トヨタは世界1位に輝いている。
出典:GPEA
実際、トヨタの2021年度におけるZEVの販売割合は、全販売台数(約1000万台)のうち0.18%にしか過ぎない。ZEV販売割合がトップのゼネラル・モーターズの8.18%(全販売台数は約600万台)と比較すると、大きな差が開いていることがよく分かる。
日本国内の状況だけを考えると、電気自動車の普及に向けた環境整備が不十分であることから、少なからず「しょうがない」と思ってしまう側面もあるかもしれない。が、トヨタは名実ともに世界No.1の自動車メーカーのはずだ。国内販売台数も、全販売台数のうちの2割程度だ。国内事情を言い訳にはできない。
また、トヨタについては、気候変動関連の法律制定に反対するロビー活動や、3月に発覚したトヨタ傘下の日野自動車によるデータ不正についても減点要因となっている。
日産、ホンダも下位に沈む
ランキング掲載の10社のZEVの販売台数。トヨタとホンダの少なさが際立つ。日産もここ数年で大きく販売台数を伸ばしているわけではない。
出典:GPEA
日産に対しては、これまでEVのリーフの販売によって世界のEV販売を牽引してきたことを評価する一方で、その後、販売台数を大きく増やせていない現状が今回の順位低下の主な要因であるとしている。
報告書では「日産は過去10年間、リーフの人気により、他社に先行してきた。だが、ここ数年、EV市場での競争の激化に伴い、日産は敗北を喫しつつある」と指摘された。なお、日産は2050年までに原材料のうち70%を「新規採掘資源に頼らない材料にする」という明確な目標を掲げており、世界的にみても非常に良い取り組みであると評価されている。
また、ホンダについては、日本の大手自動車メーカーの中で唯一、2040年までに内燃機関を持つ自動車(エンジン車)の販売を終了するとの目標を示したことを高く評価した。また、GMとのバッテリーモジュールの製造や、ソニーとの協業など期待が持てる取り組みも多い。
一方で、宣言はあれども「具体的な行動をまったく示していない」ことから、点数が伸びなかった。
実際、ホンダの2021年のZEV販売割合は0.35%とトヨタに次いで下から2番目だった(台数ベースではランキング10社中最下位)。
ダニエル・リード氏は、こういった日本の自動車メーカーの状況について、次のようなコメントを寄せている。
「残念ながら昨年の報告書発行時から日本の自動車大手の姿勢は海外大手と比較すると相対的に大きな遅れが目立ちます。気候変動問題に取り組むことは、消費者ニーズを捉え、自動車市場で生き抜くためにも必要です。ZEVの販売実績の乏しさやサプライチェーンの脱炭素計画の欠如など、日本の大手3社の対応は、海外メーカーと比べ遅れが顕著です。このままでは、今後競合する海外メーカーにますます差を付けられてしまうでしょう」
ただ、注意したいのは、今回のランキングの1位であるゼネラル・モーターズでさえも、点数をみれば100点満点中38.5点と、そこまで高い数字ではないということだ。
ダニエル・リード氏はこの点について、
「全体としてパリ協定に達するような取り組みには届いていない。(ZEVの普及などの対策は)加速しているものの、まだまだ十分ではないというのが主な結果です」
と、脱炭素化に向けて、自動車業界ではさらなる取り組みが必要になると指摘する。
(文・三ツ村崇志)
※調査報告書はこちらから。