7日(現地時間)のスペシャルイベントで発表された3モデルのApple Watch。左からSeries 8、Ultra、SE(第2世代)
撮影:石野純也
アップルは、7日(現地時間)に「Apple Watch Ultra」と「Apple Watch Series 8」「Apple Watch SE(第2世代)」の3モデルを発表した。
Apple Watch Series 8やApple Watch SEは、前モデルを正統進化させたモデル。皮膚温センサーが加わったり、セルラー版で国際ローミングを利用できるようになったりと、着実な進化を遂げている。
正常進化の「Series 8」と入門機的な第2世代「SE」
Apple Watch Series 8。皮膚温センサーや衝突検知機能が加わったが、外観は2021年発売のSeries 7を踏襲している。Apple Watchの中心となるモデルの最新版だ
撮影:石野純也
最新のApple Watchシリーズは、中心となるモデルとして「Apple Watch Series 8」があり、そのエントリー版としてApple Watch SEがあるという位置づけになっている。
外観的には、Apple Watch Series 8がSeries 7から続く、ベゼルの狭いディスプレイを採用しているのに対し、Apple Watch SEはSeries 6までのデザインに近い。
廉価版と言えるApple Watch SE(第2世代)。ケースの素材もアルミ一択。ファミリー共有設定で、子どもの見守り端末として利用することも想定されている。
撮影:石野純也
Apple Watch SEは、皮膚温センサーや血中酸素センサーにも非対応。アップル自身も、「ファミリー共有設定」で利用するApple Watchという側面を強調している。
エントリーモデルであるのと同時に、子どもの見守り用に持たせるためのApple Watchという位置づけだ。2020年に初代のApple Watch SEが登場して以降、このような住み分けが続いていた。
過酷な環境を想定した「Apple Watch Ultra」インプレッション
新モデルとなるApple Watch Ultra。ケースにはチタンを採用、ディスプレイもフラットで、既存のApple Watchとはデザインを大きく変えてきた。
撮影:石野純也
ここに新しく加わったのが、より過酷な環境での利用を想定した「Apple Watch Ultra」だ。
センサー類やチップセットに「S8 SiP」を採用している点はSeries 8と同じだ。
ただし、ケースの素材にチタンを採用したり、MIL規格(アメリカ国防総省の品質基準)や、GPSがL1とL5の両周波数に対応していたりと、“普通”のApple Watchよりも本気度の高い機能を備えている。Ultraと銘打っているのは、そのためだ。
デザインもより無骨になっている。初代Apple Watchから搭載されつづけてきた竜頭を模したデジタルクラウンは、より大きくなるととも、バンパーのようなパーツに囲まれている。
これは、ぶつけてしまった際に破損を防ぐためだろう。同じ側面にあるサイドボタンも、これまでのApple Watchよりもサイズが大きく、押しやすかった。
Apple Watchの象徴ともいえるデジタルクラウンがバンパーのようなパーツで囲まれている。サイドキーも大きく、押しやすい。
撮影:石野純也
49mmというケースサイズは装着する人を選びそうな印象も受けたが、そのぶん、文字のサイズが大きく、視認性は高い。
輝度が最大2000ニトと非常に高いため、日差しが強い屋外でも見やすそうだ(ハンズオンは屋内だったので、確認できたわけではないが)。スピーカーも大きく、電話をする際の声も聞きやすくなるだろう。
40mmのApple Watch Series 6(左)と比べると、49mmの大きさが際立つ。腕の細い人には向かなそうだが、存在感は抜群。
撮影:石野純也
アクションボタンや専用バンドも特別仕様
反対側の側面に搭載されたアクションボタンで、アプリを呼び出したり、アプリの操作をしたりできるのも、Apple Watchとして初めての機能。
グローブをつけていたり、水中だったりと、シチュエーションによっては、タッチパネルが役に立たなくなってしまう。こうした点は、これまでのApple Watchでは考慮されてこなかった。
左側面にはアクションボタンが加わった。タッチパネルが利用しづらいシチュエーションでの操作に役立つ。
撮影:石野純也
アクションボタンは、アプリに割り当てられるだけでなく、対応するアプリの操作もできる。
撮影:石野純也
バンドは「トレイルループ」「アルパインループ」「オーシャンバンド」の3種類。特にアルパインループやオーシャンバンドは、金具を使って留めるしくみのため、やや装着しづらいのは難点だが、しっかり固定することができる。
筆者は普段、季節によってレザーバンドとミラネーゼループを使い分けているが、前者と比べたときには耐久性が、後者と比べたときには外れにくさがメリットになりそうだ。
専用のバンドは3種類。右からトレイルループ、アルパインループ、オーシャンループ。
撮影:石野純也
アルパインループは、チタンのバックルでしっかり腕にApple Watchを固定できる。
撮影:石野純也
アウトドア派ではなくても「ギアとしての魅力」は確かにある
スマートウォッチの中にも同様のコンセプトで展開されているモデルはあるが、単体で通信ができたり、専用アプリストア「App Store」のエコシステムがあったりする点は、Apple Watchならではの強みと言える。
スペシャルイベントでは、Apple Watch Ultraを発表した際に「有名な冒険家や探検家と対話を続けてきた」というエピソードが明かされており、こうしたユーザーの利用に耐えるスマートウォッチとして仕立て上げられた格好だ。
単体で通信ができるため、緊急SOSを利用できるのはApple Watchならではのメリット。セルラー版を開発してきたアップルの強みといえるだろう。
撮影:石野純也
もっとも、主なターゲット層がそこだけというわけではないだろう。アナログ時計で例えるなら、ダイバーズウォッチを着用するユーザー全員が、ダイビングをするわけではないのと同じだ。
街で着用するだけだと、スペックは過剰なようにも思えるが、アウトドアの要素を取り入れたファッションともマッチしそうなデザインを好む人も少なくないだろう。
むしろ、初代Apple Watchから大幅なデザイン変更がなく、素材やバンド、サイズ以外の選択肢がなかったのは、腕時計としては異例なのかもしれない。
ギアとしての魅力は確かにあり、これまでのApple Watchでは取り込めなかったユーザーにリーチすることもできそうだ。