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世直し企業を支援する「インパクト投資」は、安全かつ有益なのか? その仕組みと始め方

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インパクト投資とは、環境や社会の改善に取り組む企業やファンドに焦点を当て、世の中への貢献と投資リターンの両立を狙うものだ。

PRPicturesProduction/Shutterstock

  • インパクト投資の対象となるのは、特定の社会的・環境的課題に取り組む企業やプロジェクトである。
  • インパクト投資商品の多くは優れた運用成果を上げるが、従来的な投資商品と比べるとリターン率が低い場合もある。
  • インパクト投資の対象は主としてプライベート・エクイティに限定されているが、個人でもESG関連のファンドを購入することで広く参加できる。

以前なら、経済的な利益を追求する投資行動と「世の中を良い方向に変える」ことは、ほとんどの人の人生においてまったく別の目標だった。しかし時代は変わりつつある。

今、社会あるいは環境の面から、この世界にプラスの影響を与えている企業に資金を提供したいと考える投資家が増えている。意義が大きいと自分が考える領域に資金を振り向けること、それこそがインパクト投資の本質である。

しかし、どのようにしてインパクト投資の機会を探せばよいのだろうか? 社会的影響に対して投資することは安全かつ有益なのか? 本記事ではその疑問に答えていく。

インパクト投資とは?

インパクト投資とは、環境や社会の改善に取り組む企業やファンドなどに資金を提供し、同時にそれによるリターンの獲得を目指す投資手法である。

インパクト投資を通じて解決に貢献できる課題は幅広い。以下にその例を挙げるが、もちろんこれらに限定されるわけではない。

  • 貧困
  • 飢餓
  • 教育格差
  • 気候変動
  • 公害
  • 児童労働および強制労働
  • 賃金格差
  • 多様性
  • 動物虐待

インパクト投資の中には、投資家の利益よりも世の中に与える影響を最優先するものもある。しかし、それ以外のインパクト投資は「ダブルボトムライン(二重の収益)」を約束し、リターンを大きく損なうことなく社会的または環境的目標を達成することを目指している。

サステナブル責任投資フォーラム(US SIF)の報告書によると、2020年には米国における投資運用資産額のうち17兆ドル(約2300兆円)が何らかのサステナブルな投資戦略を用いていた(2018年比で42%増)。つまり、いまや米国の全運用資産の3分の1においてサステナビリティが考慮されているのだ。

インパクト投資、ESG、社会的責任投資。その違いとは?

環境・社会・ガバナンス(ESG)投資、社会的責任投資(SRI)、そしてインパクト投資の3つは同じ意味で使われることもある。いずれも、経済的リターンとしての価値と同時に倫理的価値を考慮して投資先を評価する戦略が関わるという点は同じだ。取り組む課題も重なり合う部分がある。

一方、いくつか重要な違いもある。

社会的意識の高い投資家にとって、ESG基準は企業がどれほど高いビジネス倫理に則って活動しているかを評価するのに役立つ。業界全体で用いられる単一のESG評価システムというものはないが、評判のいいESGデータ提供会社としては、MSCI、モーニングスター(Morningstar)、ブルームバーグ(Bloomberg)、サステナリティクス(Sustainalytics)などがある。

SRIにおいては、投資家は自らの価値観に合わない製品や事業理念を持つ企業を投資の対象から意図的に除外する。例えば、タバコメーカーや児童労働を行っている企業をすべてポートフォリオから外すなどである。

ESGとSRIが最も大きく違う点は、前者は受容的で後者は排他的であることだ。ESG意識の高い投資家は、ESGランキングで下位の企業であっても、特に企業姿勢の改善に向けた取り組みを表明していれば投資対象に含めることがある。一方でSRIの場合、各投資家にとってマイナスイメージがある企業はそのフィルタリング基準のもと完全に除外されるのが一般的だ。

インパクト投資はSRIの一部としてとらえられることもある。特定の目的に本気で力を入れている企業や非営利団体のみが投資対象として選ばれることも多いので、単なるSRIよりさらに排他的であるとも言える。つまり、SRI投資家は自分の価値観に反しない限りどのような企業にも投資しうるが、インパクト投資家は飢餓や貧困の撲滅といった信条のもと積極的に闘っている企業を求めるかもしれない。

かなり細かい違いだと言われればそうかもしれない。しかし重要なのは、インパクト投資はその名の通り、単に善意が伴っているだけでなく、世の中に対して測定可能なインパクトを与える投資商品、取り組み、企業を対象にするということだ。

なぜインパクト投資が重要なのか

インパクト投資は、従来は慈善事業や寄付という枠に留まっていた活動により多くの人を呼び込む手段になりうる。投資なら少なくともいくらかのリターンを得られる可能性があるので、より多くの資金が社会問題の解決を目指す企業に集まるかもしれない。

株式市場全体と比べると、インパクト投資のリターンが低くなりがちなのは事実だ。71のプライベート・エクイティ・インパクト投資ファンドを対象に行ったグローバル・インパクト・インベスティング・ネットワーク(Global Impact Investing Network、GIIN)2017年の調査では、それらの平均純収益率は5.8%だった(S&P 500の平均収益率よりかなり低い数字だ)。

はっきりさせておくが、こうした金銭面での譲歩は極めて厳密な意味でのインパクト投資にしか当てはまらない。「インパクト投資」という名を冠した実のところのESG投資なら、はるかに良いリターンを期待できる。ESG投資ではリターンを犠牲にせずポートフォリオを構築できることが複数の研究により示されている。実際、モーニングスターの調査によると、2021年に米国ではESGファンドが従来型ファンドのパフォーマンスを上回った。

米国労働省の最近の決定により、確定拠出年金や企業年金の運用対象からインパクト投資商品が除外されるかもしれない。新たな規定において、受託者であるファイナンシャルアドバイザーは最大のリターン達成という目標以外で顧客の投資先を選ぶことが禁じられるからだ。

この規定はESGやインパクト投資について具体的に言及してはいない。しかし、予想収益率が平均を下回る投資は(多くのインパクト投資がそうだ)今後、掛金を事業主が拠出する年金制度から除外される可能性がある。

インパクト投資の種類

インパクト投資がカバーする分野は広く、善き行いのための投資先は豊富にある。それでは、インパクト投資に適した企業はどのように探せばよいのだろうか?

ここでもやはり、インパクト投資をどの程度厳密に定義するかによって変わってくる。ESG投資という意味でとらえるのであれば選択肢は多い。ESG基準で高く評価されている企業の株式を買うことが第一の手段だ。あるいは分散投資をしたいなら、ESG関連の投資信託やETFに投資してもよいだろう。代表的なものを以下に挙げる。

オンラインの投資プラットフォームも、個人の信条に基づいた投資を容易にし、そのコストを減らしてきた。ベターメント(Betterment)とウェルスシンプル(Wealthsimple)の2社は独自のESG・SRIポートフォリオを構築している。

さらに踏み込んで、社会貢献に取り組んでいる特定の企業に投資する(すなわちインパクト投資)となると、もう少しややこしくなる。インパクト投資ファンドのほとんどは上場しておらず、機関投資家または認定投資家のみが投資できるプライベート・エクイティ・ファームや企業であることが多いからだ。

認定投資家とは、100万ドル(約1億3700万円)以上の純資産を持つ、あるいは過去2年間の年収が20万ドル(約2700万円)以上の個人を指す。または、一定レベルの金融知識を有することを証明できる投資家も含まれる。

インパクト投資の機会を探す

オンライン上にはインパクト投資ファンドのランキングがいくつか公開されている。例えばBTheChange.comは、以下の5つのカテゴリーに分類してランキングを発表している。

  • 環境
  • コミュニティ
  • ガバナンス
  • 従業員
  • 顧客

トーニック・ディクショナリー(Toniic Directory)もインパクト投資に関する役立つリストで、債券などを通じた投資収入を提供するプライベート・エクイティおよび企業が掲載されている。

認定投資家に当てはまる人なら、インパクト投資に重点を置くプライベート・エクイティを直接探すのもよいだろう。有名なインパクト投資企業としては、ソネン・キャピタル(Sonen Capital)カルバート・インパクト・キャピタル(Calvert Impact Capital)リインベストメント・ファンド(Reinvestment Fund)などがある。

インパクト投資の例

CO2排出量の削減や、リサイクル不可能な材料の使用を減らすなど、環境問題の解決に強い関心を持っている人を例に挙げよう。自分に合ったインパクト投資ファンドを見つけるため、その人はまずBTheChange.comで「環境」カテゴリーのランキングをチェックする。

そのランキングを吟味したうえで、これまでに述べた環境目標に貢献する企業に投資をしているアーバービュー・キャピタル(Arborview Capital)のウェブサイトを訪れ、自分の価値観と合致していると強く感じたアーバービュー・キャピタル・パートナーズ II LP(Arborview Capital Partners II LP)ファンドへの投資を決める。

また別の例として、低所得者層を支援する地元企業への投資に強い関心を抱いている人がいるとする。この人はリインベストメント・ファンドを利用した投資に興味を持った。

同社が提供する新株予約権付き手形プログラムは、「人、地球、利益のトリプルボトムライン(三重の収益)」を目指す。選択肢を検討した末、この人は2.25%の利息がつく7年~9年満期の約束手形を購入することにした。

まとめ

これから社会的投資をしようとするなら、まずはESG関連のETFや投資信託から始めるとよいだろう。これらは上場資産なので購入(または売却)が簡単で、リターンも基本的に安定している。

一方、多額の純資産や投資に関するかなりの専門知識があれば、世の中に大きく貢献するためなら流動性やリターン率が低くても構わないと感じるかもしれない。その場合、世界にポジティブな影響を与えることに本気で取り組んでいるプライベート・ファンドや企業に投資することは大きな満足感につながるだろう。

[原文:Impact investing finances companies that aim to do good in the world — here's how it works and how to get involved](翻訳・長尾莉紗/LIBER、編集・長田真)


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