ETFに投資する前に、そのETFがポートフォリオにどのような影響を与えるか、他の種類のファンドと比較してどうかを検討するといい。
Rachel Mendelson/Insider
- ETF(上場投資信託)は、証券取引所に上場している証券のバスケットだ。
- ETFには、インデックス型ETFと、アクティブ運用ETFの2種類がある。
- 大半のETFは、パッシブ運用でS&P500種株価指数のようなインデックスに連動するインデックス型ETFだ。
1990年代に初めて登場したETF(上場投資信託)は、今や人気の高い重要な投資商品になっている。ポートフォリオを分散させる低コストの便利な手法としてETFを活用できるだろう。だが、ETF投資に付随するコストとリスクも理解しておいた方が良い。
ETFとは何か?
ETF(Exchange Traded Funds:上場投資信託)は、証券取引所で販売され、証券会社経由で売買できる証券バスケットだ。つまりETFは、数多くの原証券を保有することがあるのだ。
あるETFを1株購入すると、そのファンドを部分的に保有することになる。原証券の価格が変動すると、投資したファンドの価値が上下する可能性がある。
ETFは日中、株式とほぼ同じように取引される。
「上場投資(Exchange Traded)」という言葉は、取引日の間にそのファンドが売買できることを指す—そう話すのは、CFAの資格を持ち、クワイエット・ウェルス・マネジメント(Quiet Wealth Management)でファイナンシャルアドバイザーを務めるカーティス・ベイリー(Curtis Bailey)氏だ。ファンドとは、投資家が原証券バスケットの一部を保有できる所有構造である。
ETFの仕組み
ETFを設定するにはまず、ETFの運用会社が証券取引委員会(SEC)に計画書を提出し、その後、指定参加者(通常は大手証券会社)との間で契約を締結する。指定参加者は、大口投資家から株式を実質的に借り入れて運用会社に拠出し、運用会社はそれを信託銀行に預託する。
その代わりに発行されたETF受益権を指定参加者が受け取り、流通市場に放出する。この受益権が、通常の株式のように投資家によって市場で売買されるのだ。ETFの受益権は、信用取引で買うことも、指値注文を出すことも可能だ。
株式と同様に、ETFも取引するたびに証券会社に取引手数料を払わなければならない。また、ETFにも投資信託のように平均資産残高に対する運用その他の固定費(経費率)が発生する。ベイリー氏によると、大手ETFの手数料は低いことが多いが、アクティブ運用の投資信託よりも経費率が高いETFもある。
だが、トラッキングエラーにより、ETFの価格と原資産の価格に差が生まれる場合があることにも気をつけたい。
さらに、投資家がETFを売りたい値段と買いたい値段に乖離が生じることもある。商いが薄いETFでは、ビッド・アスク・スプレッド(ある証券の売り呼び値と買い呼び値との差)が一般的に広い。
このスプレッドによって「投資家はETFを高く買い安く売ることになるため、隠れた追加コストになり得る」とベイリー氏は言う。
ETF vs 投資信託 vs インデックスファンド
インデックスファンドは、インデックスに連動するファンドの総称だ。ETFと投資信託がどちらもインデックスファンドのこともある。
投資信託もまた証券バスケットを保有する。だが、ETFとは異なり、投資信託の最低投資金額は大きく、毎日引け後に1度しか取引できない。それ以外にも投資家が頭に入れておくべき重要な違いがある。
「ファンド構造によって、どの銘柄を保有し、どのように投資するかが決まる。ファンドの投資先、投資戦略、費用を理解しておくことが重要だ」とベイリー氏は言う。
ETFの種類
大まかに言うと、ETFにはインデックス型ETFとアクティブ運用ETFの2種類がある。
インデックス型ETFはパッシブ運用で、共通の特徴を持つ個別株グループで構成される指数に連動する。例えばS&P500種株価指数は、米国の大手上場企業500社で構成されるインデックスだ。大半のETFはパッシブ運用である。
連動するETFの種類に応じて、さまざまなインデックス型ETFが構築されている。
- 株式ETFは、特定の株式インデックスに連動することが多い。このインデックスは、企業の規模、地域、業種またはその他共通項に基づく。
- 債券ETFは、社債や国債など債券ポートフォリオに連動する。
- 海外ETFは、特定の国や地域の企業に連動する。
- セクターまたは業種別ETFは、エネルギーや不動産などのセクター内企業に連動する。
- 社会的責任ETFは、社会的意識の高い企業のインデックスに連動する。
- コモディティETFは、金や原油など原材料の価格に連動する。
- 通貨ETFは、ユーロや暗号資産などの複数の通貨に連動する。
その他、指数に基づかないアクティブ運用ETFがある。基づくどころか、ファンドマネージャーやチームが、ベンチマークとして設定したインデックスを上回るパフォーマンスを上げようとする。こうしたアクティブ運用ETFの手数料は一般的に高い。
さまざまなETFを紹介してきたが、ここで実際のETFをいくつか見てみよう。
- SPDR S&P 500 ETFトラスト(SPY)は、S&P500種株価指数に連動するETFで、最も古く人気がある商品の1つだ。
- インベスコQQQトラスト(QQQ)もやはり人気が高い株式ETF。このETFは、ナスダック株式市場に上場する非金融銘柄の大手企業で構成されるナスダック100指数に連動する。
- バンガード・トータル・インターナショナル・ストック・インデックス・ファンドETFシリーズ(VXUS)は、米国を除く全世界の上場株で構成される指数、FTSEグローバル・オールキャップ・インデックス(米国を除く)に連動する海外株式ETFである。
- iシェアーズ・グローバル・クリーンエネルギーETF(ICLN)は、S&Pグローバル・クリーンエネルギー・インデックスに連動するセクターETFであり、社会的責任ETFでもある。
- アーク・イノベーションETF(ARKK)は、革新的な技術を創造し利用する企業を中心に投資する大手アクティブ運用ETFである。
ETF投資の長所と短所
ETFは分散を可能にするため、投資ポートフォリオにおいて重要な役割を果たす。だが、ETF全体の特徴に加えて、投資を考えているETFの長所と短所を検討すると良いだろう。
(注)投資信託では、投資家から解約を受けると原証券を売却して解約に応じるためキャピタルゲインが発生し、それに伴い課税義務が生じる。一方、ETFは投資家が市場で売買できるため、ETF内での原証券の売却を最小限に抑えられる。
まとめ
株式のように売買可能なETFは、大きな証券バスケットに素早く投資する低コストの選択肢になる。
すべての投資家がETFを検討すべきだ、とベイリー氏は言う。一般的にETFは、投資信託よりも節税効果が高く、コストが低く、個別銘柄では実現が難しい分散効果を提供してくれる。
だが、複雑でリスクの高いETFも販売されている。投資判断を下す前に、具体的に検討しているETFが自分のポートフォリオにどんな影響を与え、他の種類のファンドと比べてどうかを考えてみることをお勧めする。
[原文:How to use ETFs to diversify your portfolio, trade more frequently, and invest safer]
(翻訳・中山桂、編集・長田真)