ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡が捉えたオリオン大星雲。
NASA, ESA, CSA, PDRs4All ERS Team; image processing Olivier Berné.
- オリオン大星雲の詳細な画像がジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡によって撮影された。
- 画像の作成にあたって18カ国から100人以上の科学者が参加したとAFP通信が報じている。
- この星雲を研究することが、我々の太陽系の形成についての理解を深めることにつながるだろう。
ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)が捉えた新たな画像が公開された。それには地球から1350光年離れた星形成領域であるオリオン大星雲の壮大な姿が写し出されていた。
これらの画像は18カ国100人以上の科学者から成る国際的な研究チームによって2022年9月12日に公開されたとAFP通信が報じている。オリオン座の方向にあるオリオン大星雲は、我々の太陽系が形成された45億年以上前の環境と似ている。
「オリオン大星雲の息をのむような画像に圧倒された。我々はこのプロジェクトを2017年に開始したので、これらのデータを得るために5年以上待っていたことになる」とプロジェクトを率いたウェスタン大学(カナダ)の天体物理学者エルス・ピーターズ(Els Peeters)は同大学が発表した声明で述べている。
「この新たな観測により、大質量星がどのようにしてガスやちりの雲を変化させて生まれてきたのか、より深く理解することができる」
オリオン大星雲のような星形成領域の中心部は、ちりの雲に覆い隠されているため、可視光の望遠鏡では見ることができないが、JWSTは赤外線を利用するので、雲を通してその姿を捉えることができる。
ハッブル宇宙望遠鏡(左)とジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(右)、それぞれが捉えたオリオン大星雲。
ASA, ESA, CSA, PDRs4All ERS Team; image processing Olivier Berné.
画像はかなり詳細な部分まで捉えており、大星雲の中に我々の太陽系と同じぐらいのサイズの構造があることまで分かる。
「いくつかの高密度フィラメントがはっきりと見えている。これらのフィラメント構造の中では、ちりとガスの雲の奥深くで新しい世代の星が形成される可能性がある。すでに形成過程にある恒星系も見られる」とプロジェクトを率いたメンバーの1人であるフランス国立科学研究センターのオリビエ・ベルネ(Olivier Berné)はウェスタン大学の声明で述べている。
「その繭の内側では、若い恒星がちりとガスでできた円盤に囲まれ、円盤の中では惑星が形成されていくのが観測された。また、新しい恒星が強い放射線と恒星風によって雲に穴を空けた様子もはっきりと見える」
研究チームの一員でミシガン大学の天文学部長であるエドウィン・バーギン(Edwin Bergin)は、この画像から「星誕生の全サイクルに関する理解が深まる」ことを他の研究者とともに期待していると同大学のリリースで述べている。
「この画像では、第一世代の星が次世代の星を作るための材料を照射するサイクルを見ることができる。この驚くべき構造を観測することで、天の川銀河やもっと遠くの宇宙で星が誕生する際のサイクルがどのように起こるのか、詳しく知ることができるだろう」とバーギンは述べている。
ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡が捉えたオリオン大星雲の内部構造。
NASA, ESA, CSA, Data reduction and analysis : PDRs4All ERS Team; graphical processing S. Fuenmayor & O. Berné
2021年12月に打ち上げられたJWSTは、2022年7月に運用を開始し、これまでタランチュラ星雲や木星のオーロラなどの壮大な画像を撮影している。また、21150光年先にある木星サイズの惑星で水蒸気を検出した。
8月には、JWSTとハッブル宇宙望遠鏡がそれぞれ撮影した画像を組み合わせ、「グランドデザイン渦巻銀河」という種類に属する「幻の銀河」のすばらしい画像が作成された。
(翻訳:仲田文子、編集:Toshihiko Inoue)