57.2%の学生が就職活動においてSNSで情報収集をしていることが分かった。
撮影:今村拓馬
就活サイトの情報に期待する就活生はたった35%だけ——。
就職活動で企業のサイトやリクナビなどの就活サイトを見るのが当たり前、そんな常識が少しずつ変化しているのかもしれない。
SNSデータ分析を起点に企業の採用広報・マーケティング支援を行うNo Companyは9月14日、19歳から22歳の就職活動中の学生444名を対象にした「Z世代就活生のSNS活用に関する実態調査」を発表。
調査では、半数以上の学生が就職活動においてSNSで情報収集をした経験があると報告しており、就活サイトなどよりSNS上での情報提供に期待する声も多かった。実際に調査結果を見ていこう。
調査対象は、19〜22歳の就職活動をしている学生444名。調査時期は2022年7月。
対象者の内訳は、大学2年生が118人(26.6%)、大学3年生が147人(33.1%)、大学4年生が179人(40.3%)。調査は民間の調査会社を使って実施された。
SNSの情報収集が入社意向度の変化の鍵に
NSで特定の企業の仕事内容や働き方、社風などに関する情報を見て、選考や入社の意向度が上がった学生は7割を超えた。
No Company
調査の結果、SNSで仕事内容や働き方、社風などに関する情報を見たことで企業に興味を抱いた経験があると答えた学生は、45.5%と半数近かった。さらにその中で、SNSで特定の企業の情報に触れ、選考や入社意向度が「非常に上がった」と答えた人は17.3%、「やや上がった」と答えた人は56.9%と高い数字だった。
6割の学生が、Twitterでの情報発信を希望
Z世代から支持を集めるSNSアプリは、就職活動でも活用されていることが分かる。
No Company
「企業に対して、どのSNSやメディアで就活情報を発信してほしいか」と尋ねたところ、Twitterが63.1%と最も多く、次いでYouTube(47.5%)、Instagram(44.1%)と、日常的に使用しているSNSでの情報発信を希望する学生が多いことが分かった。一方、TikTokやFacebookでの情報発信を期待する学生は非常に少なかった。
また、リクナビなどをはじめとした「就活情報ナビサイト」での情報発信に期待しているのは約35%、企業のオウンドメディアやインタビュー記事などの多い「採用関連メディア」を通じた情報発信に期待する人の割合は20%程度と、TwitterやYouTube、Instagramと比較すると低い傾向にあった。
福利厚生を除くと、上位5つは企業の採用サイトの募集要項や就活情報サイトなどにはあまり掲載されることがない情報だ。
No Company
オンライン上で企業に発信して欲しい情報として多く挙げられたのは「1日の仕事の流れ」(57.9%)や「社内の人間関係」(45.3%)、「実際の勤務時間・残業時間」(42.1%)など。
学生は、採用サイトや就活情報サイトにはない企業のリアルな実態を知りたいと考えている傾向にあることが伺える。
「社員の本音が分かる」SNSを駆使した就活の実態
就活生はSNSを駆使して、企業の実態から対策まで様々な情報を集めている。
Shutterstock/Six Nov
実際に、2023年3月に卒業する予定の大学生に話を聞いてみると、SNSの使い方にはいくつかのパターンがあった。
今年の4月まで就職活動をしていた都内私立大学4年生のAさんは、SNSを活用した情報収集についてこう語る。
「就活中は、Twitterを主に活用していました。Twitterでは、志望する企業社員の個人アカウントを見て、仕事の内容やその人の価値観を見ていました。就活生向けに情報発信をしているわけではなく、あくまでもプライベートなアカウントなので、社員の本音が分かるんです」(Aさん)
また中には、企業や社員が発信する情報を集めるだけでなく、SNSを通じて「就活テクニック」を得るために使っているという学生もいた。
「TwitterもInstagramも、エントリーシート対策や企業分析に使用しました。Instagramはエントリーシートの書き方など、画像付きでわかりやすく解説しているものが多いです。
Twitterは、より細かい情報やコツ、企業ごとの分析をまとめている人をフォローしていました」(都内私立大学4年生・Bさん)
YouTubeについては、面接対策として「模擬面接」の動画を見たという声も多かった。
「模擬面接の動画を見て、面接対策をしていました。他の人の模擬面接を見ると、この人の話はわかりやすい、など客観的に見ることができて参考になりました」(都内私立大学4年生・Cさん)
ただ、「内定を多く持っている人を目にして焦ったり、競わされているような気がしてつらい」と、就活生の中にはSNSとはあえて距離を取っている人もいる。就活でのSNS活用は、まさに一長一短だ。
(文・柳瀬綺乃)