ワークマンの新製品発表会では多くのテントが発表された。11月に発売するワンポールシェルター(税込1万7800円)。
撮影:横山耕太郎
ワークマンは9月14日、2022年秋冬の新製品発表会を開いた。
原材料費や輸送費の高騰と急激な円安のため、多くの企業が値上げを決めるなか、ワークマンはこの日、プライベートブランド(PB)の96%の商品について2023年8月まで価格を据え置くと発表した。
「ワークマンが値上げに踏み切るかどうか」が注目された新作発表会だったが、展示会場で特に目を引いたのはテントや日除けのタープなどのアウトドア用品だった。
ワークマンは2022年春に4900円(記事内の価格は全て税込み)の1人用テントを発売し、本格的にキャンプギア(キャンプ用品)市場に参入。この1人用テントはこれまでに4万点を売り上げたといい、ワークマン専務の土屋哲雄氏は「未確認ですが、ひょっとしたら日本で最も売れたテントではないか」と自信を見せる。
今回は1人用テントに加え、4人が宿泊できる家族向けのテントなど、約10の新作テントを発表した。
ワークマンはなぜ、ここまでキャンプ市場にこだわるのか?
撮影:山﨑拓実
4900円テントの新デザインも
ワークマンのテントでは最も高価格となる「3ルームシェルター」(税込み2万7800円)
撮影:横山耕太郎
ワークマンが10月以降に新発売するテントは9商品。それぞれサイズや用途は異なるが、共通しているのが低価格という点だ。
最も安いテント「NEW BASIC ドームテント」は、春に発売したテントのデザインを変更したもので、価格は変わらず4900円。
最も高額なのは4人用の「耐久撥水 3ルームシェルター」で2万7800円だった。他にもテントの中心にポールを立てるタイプの「耐久撥水ワンポールシェルター」(1万7800円)、高機能な1人用テント「レジストツーリングテント」(9800円)など、一気に新商品を投下する。
他にもキャンプ用品としては、6800円〜1万2800円の値段帯の寝袋4種類や、2500円のチェアなどの新作も発売する。
「2023年度に100億売る」
初めて発売したテントの好調ぶりをアピールするワークマンの土屋専務。
撮影:横山耕太郎
キャンプギアにかけるワークマンの期待は大きい。
ワークマンによると、2022年度は「4900円テント」の成功でキャンプギア全体の販売達成額は40億円だった。それを来年2023年度には60億円、2年後の2024年度には100億円に拡大させると打ち上げた。
国内大手のキャンプギアメーカー・スノーピークは2022年12月期の売上予想は318億円で、まだまだ規模では及ばないものの、ワークマンの野心的な販売目標を達成し続ければ、キャンプギア市場での存在感は強まりそうだ。
「衣料への依存を減らしたい」
新製品発表会の会場には、いたるところに「価格据え置き。ただ、ホントはつらい…」と書かれたプレートが。
撮影:横山耕太郎
そもそもなぜ、ワークマンはキャンプギアに注目するのか?
この日、発表会の壇上に立った専務の土屋哲雄氏は、「衣料は価格競争が激しくてきつい。くつやキャンプギア、カバンなどの比率をもっと高めたい」と話した。
土屋氏は三井物産出身で、ワークマン再建の指揮をとったことで知られる人物だ。
「今はアパレルが絶好調ですが、5年後、10年後はどうなるのか分からない。経営を安定させるためには、衣料への依存を減らす必要がある」(土屋氏)
Business Insider Japanの取材に対し土屋氏は、ワークマンはもともと「作業服」という競合他社が少ない環境で成長してきたと話す。
「42年間競争しないでやってきた。競争しても100%負けるので、ワークマンらしい商品でなくてはいけない」
そこでワークマンが注目したのが、低価格・高機能という分野では競合が少ないキャンプギアなどの「アパレル以外の市場」だった。
キャンプギア市場でどのように「ワークマンらしさ」を打ち出して行くのか?
「燃えにくい素材や、虫除(よ)け性能のある素材など、自社開発の素材を使うことで差別化できる。素材開発には数千万単位の費用がかかりますから、自社で開発するメリットを、低価格の商品に活かせると思っています」(土屋氏)
シューズ市場「これまで一番独自性ある」
女性用のクツも多くの新製品が発表された。
撮影:横山耕太郎
980円という驚きの価格。
撮影:横山耕太郎
キャンプギアに加え、ワークマンが注力するのが低価格帯のシューズだ。
今回の展示会でも、もともと人気が高かったという980円の激安シューズ「アスレシューズ」などに加え、女性向けのパンプスなども発表。かかとをつぶしてはけたり、クツずれができないようなデザインにしたりと機能性にこだわっており、土屋氏は「使い勝手が第1で、デザインが第2」と言い切る。
ワークマンでは新規事業として、シューズ専門店「WORKMAN Shoes」を4月に大阪で初出店。既存店舗に併設する新業態として、店舗数を増やして行くという。
「ワークマンのシューズは、私の感覚で言うと今までやった仕事の中で一番で独自性を持っている。機能にこだわって1000円台というメーカーは他にない。(靴販売大手の)ABCマートとは商品が全然重なっていません」(土屋氏)
値上げを踏みとどまり、かつ「競争が少ない市場」を狙うという独自路線を突き進むワークマン。
市場が厳しさを増す中で、アパレルに続く収益源を育てられるのかその手腕が注目される。
(文・横山耕太郎)