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- 退職者数がパンデミック以前の水準を超えているのは、ミレニアル世代とZ世代だけではない。
- 2022年の第1四半期には、X世代がミレニアル世代よりも高い割合で退職している。
- それは45歳で仕事のストレスがピークに達する「中年の危機」が原因かもしれない。
アメリカではミレニアル世代(1981年から1996年頃生まれ)とZ世代(1997年以降生まれ)が「大退職(Great Resignation)」を推し進めたかもしれないが、X世代(1965年から1980年頃生まれ)も多くが退職している。
これは「中年の危機」が一因かもしれない。
人材分析会社VisierのデータをVoxが分析したところ、2022年第1四半期の退職者数は、40歳以上の各年齢層で前年同期比34%以上増加した。40歳以下の各年齢層では31%以下の増加に止まっている。
この1年半の間に若いアメリカ人が退職の流れを作ったかもしれないが、退職率を過去最高に近い水準に保っているのは中高年だろう。より給料の高い仕事や自分に合った仕事を見つけた人もいれば、リモートワークや起業をするための柔軟性を追求した人も多い。過去最高の求人数、経済的なゆとり、さらには「中年の危機」などが、新たなチャンスを探るきっかけになっている。
「中年の危機」がX世代を退職に追い込んでいるかもしれない
全米経済研究所が発表した新たなレポートによると、「中年の危機」は実際に起きている現象だという。同レポートでは、アメリカのような豊かな国々で、中年期に人生の満足度が低下する一方、「仕事からくる極度のストレス」などのネガティブな体験が増加する「中年の危機」について書いている。
それによると、45歳頃に「仕事のストレスの最大レベル」に達し、血圧の上昇、うつ病、精神的な健康状態の悪化につながる可能性があるという。ピューリサーチセンターは、X世代を1965年から1980年に生まれた世代と定義しており、現時点で42歳から57歳の人が当てはまる。この年代は収入のピークであることが多いが、仕事への満足度が低く、他の仕事を探す人も多いようだ。
自動車業界の大企業に30年近く勤めたクリスチャン・トレイバー(Christian Treiber)は、何か違うことを追求したいと考え、電気自動車のスタートアップに転職し、「レガシーのない会社に変化をもたらしたい」と2021年12月にInsiderに語っていた。
トレイバーのような人物にとって、転職はキャリアを引き伸ばす可能性のある若返りをもたらすことがある。ボストンカレッジの研究者が2017年に行った調査によると、50代で転職した人は、65歳まで現役として働き続ける可能性が、転職しなかった人よりも9%高いことが明らかになった。転職は仕事の満足度を高めるだけでなく、労働者が長く働く意欲があれば「老後の見通し」を改善する可能性もあると研究者は述べている。
X世代の純資産総額は、パンデミックの最初の1年半で50%増加したものの、その後のインフレによる貯蓄の減少や不安定な株式市場が、もうすぐ退職する彼らを不安にさせている。
(翻訳:仲田文子、編集:Toshihiko Inoue)
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