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「国産SAF」初の成田空港に導入。注目の理由…ユーグレナ「どんどん供給していきたい」

タンクローリーから検品のために取り出した持続可能な航空燃料(SAF)。

タンクローリーから検品のために取り出した持続可能な航空燃料(SAF)。

撮影:三ツ村崇志

「我々だけでは決してできませんでした。受け入れ側があってこそ実現できた。これからどんどん供給していきたい」

微細藻類のミドリムシや廃食油などをもとに持続可能な航空燃料(SAF)を開発するユーグレナの尾立維博執行役員は、Business Insider Japanの取材に声を弾ませながらこう話した。

マスク越しだったため表情こそ深く読み取れなかったものの、喜びに顔をほころばせている様子が伺えた。

9月16日、ユーグレナは、成田国際空港(以下、NAA)が設置・運用する給油ハイドラントシステム(以下、ハイドラント施設)に、ユーグレナが製造するSAF「サステオ」の導入を開始した。ハイドラント施設とは、空港内に存在する給油スポットに燃料を供給するための設備だ。

つまり、この施設への燃料の導入によって、航空会社の求めに応じていつでもユーグレナの燃料を供給できる体制が整ったことを意味している。

国内のハイドラントシステムに国産のSAFが導入されるのは今回が初めて。ユーグレナのバイオ燃料事業の今後を考える上でも、非常に重要な一歩だといえる。

空港のインフラ利用で、給油のラストワンマイルが劇的改善

尾立さんの写真

ユーグレナ、エネルギーカンパニー長の尾立維博執行役員。

撮影:三ツ村崇志

ユーグレナは2018年に横浜市鶴見区にバイオ燃料の実証プラントを建設すると、2020年1月には製造プロセスがSAF製造の国際規格である「ASTM D7566規格」の新規格(Annex 6)として認証された。これで、ユーグレナが製造するバイオジェット燃料がジェット燃料として利用可能となった。

その後、ユーグレナは2021年3月に実証プラントでのバイオジェット燃料を完成させると、同年6月には国土交通省が保有する飛行検査機への導入を実現。それ以降も、これまで合計7回にわたり航空機にSAFの導入を進めてきた。

しかし、尾立氏は

「これまで、私たちが飛行機やヘリコプターに燃料を供給しようにも、いわゆる『ラストワンマイル』を工夫せざるを得ませんでした。過去7回のフライトでは、ドラム缶を使って手作業で給油したり、タンクローリーを飛行機に横付けして直接給油したりしていました」

とサプライチェーンが整っていない点に課題があったと話す。

今回、NAAの第2給油センターへ搬入が可能になったことで、空港の既存の燃料供給ラインを使って、第2給油センターに紐づく空港内にある171カ所(2022年4月段階)の給油スポットへのサステオの供給が可能になる。

ユーグレナのSAFは、タンクローリーで第2給油センターに導入される。その後、空港の施設を通じて他社の燃料とまじりながら各給油スポットへと供給される。ジェット燃料の規格として適合しているため、他社の燃料と混ざっても問題はない。

ユーグレナのSAFは、タンクローリーで第2給油センターに導入される。その後、空港の施設を通じて他社の燃料とまじりながら各給油スポットへと供給される。ジェット燃料の規格として適合しているため、他社の燃料と混ざっても問題はない。

提供:ユーグレナ

「世界から飛んでくる飛行機や、成田から世界に飛んでいく飛行機まで、あらゆる飛行機に対しての供給ができるようになります。これは我々にとっては大きな前進です」(尾立氏)

なお、今回ユーグレナがNAAに提供するSAFは、バイオジェット燃料と石油由来のジェット燃料を1:9で混合したもの。

バイオジェット燃料は、その製法ごとに最大で10%〜50%、石油由来の燃料と混合して利用することが認められている。ユーグレナのバイオジェット燃料の場合、石油由来の燃料と50%まで混合することができる。

今回、10%までの混合にとどめた理由について、尾立氏は

「いきなり50%にすることもできなくはないのですが、ステップバイステップだと思っています。まず10%、次に20%、30%と進めていきたいと思っています」

と話す。

なお、ユーグレナによると、9月末に実際にNAAから飛び立つ航空機に燃料が搭載される予定だという。燃料の販売価格については、「個別の契約によって決まってくるため、お答えは差し控えさせていただきます」(ユーグレナ広報)としている。

商業プラント稼働に向けた下地作りが進む

ユーグレナのバイオジェット・ディーゼル燃料製造実証プラント。2018年秋に横浜市鶴見区に建設された。

ユーグレナのバイオジェット・ディーゼル燃料製造実証プラント。2018年秋に横浜市鶴見区に建設された。

提供:ユーグレナ

ユーグレナは、2025年の完成を目指してバイオ燃料(SAF、バイオディーゼル燃料)の商業プラントの予備的基本設計を進めている。本格稼働が始まる2026年には、今の年間製造量(125キロリットル)の2000倍に相当する年間約25万キロリットルのバイオ燃料の供給が可能となる計画だ。

ただユーグレナは、商業プラントの完成を待たずに、SAFはもちろんバイオディーゼル燃料の販売先の開拓も並行して続けている。これは、商業プラントが完成してから販路の開拓を進めていては、実際の導入がさらに遅れてしまう恐れがあるからだろう。商用プラントの稼働と同時にスタートダッシュを切るには、「バイオ燃料を利用する」ということが当たり前である、という社会的な土壌をある程度醸成しておくことが重要だ。

ただ、ここで課題があった。

いくら実証段階でユーグレナのSAFを使ってもらおうにも、現状で製造できるSAFの総量はそこまで多くはない。一般的に、空港にある燃料の受入施設では、少量の燃料を受け入れることが難しく、航空会社がユーグレナのSAFを利用しようにも個別対応をせざるを得なかった。

それが今回、空港の施設への搬入が可能になったことで、航空会社が燃料を購入する通常のスキームでユーグレナの燃料を利用することができるようになったというわけだ。

2050年までにCO2排出実質ゼロ掲げる成田国際空港

燃料はタンクローリーからホースで陸上搬入施設へと供給される。成田国際空港は、改修工事でこの設備を整備した。

燃料はタンクローリーからホースで陸上搬入施設へと供給される。成田国際空港は、改修工事でこの設備を整備した。

撮影:三ツ村崇志

NAAでは、もともとタンカーで千葉港に運ばれてきたジェット燃料を受け入れ、パイプラインを通じて給油センターまで移送・保管していた。燃料は基本的に「海路」で運ばれてくるものだった。

しかしNAAは、2021年に「サステナブルNRT2050」を策定すると、2050年までにNAAグループ全体での二酸化炭素(CO2)の排出量を実質ゼロにするとの目標を掲げた。SAFの受け入れ体制の整備も、2030年までの中間目標として定めた重要な指標の一つだった。

NAAはこれを実現するべく、もともと備蓄用やメンテナンス時に利用する施設として活用していた第2給油センターを改修。燃料の管理システムもアップデートすることで、タンクローリーを使った「陸路」での受け入れ体制を整えたという。

NAA給油事業部の田代敏雄部長は、

「航空機が脱炭素化するには、SAFの利用が1番のキーポイントになります。国内では商業的にSAFを製造している会社は1社もありませんが、実験的に、国際規格に適合した方法で製造にチャレンジしている会社はたくさんあります。そういったところで製造されたSAFを積極的に受け入れるためには、タンクローリーで受け入れるのが一番現実的だろうと。そういう視点で、この施設を整備しました」

と、今回の陸上設備を整えた経緯を話す。

なお、今後ユーグレナに限らず、少量でもSAFを実証製造する企業が出てきた際には、航空会社の求めに応じて空港としても積極的に受け入れていきたいとも語っていた。

SAF導入でCO2はどこまで減らせるか

ホースと搬入施設のつなぎ目から、勢いよく供給されているSAFのようすが見えた。

ホースと搬入施設のつなぎ目から、勢いよく供給されているSAFのようすが見えた。

撮影:三ツ村崇志

では、実際にユーグレナの製造するSAFを利用することによって、どの程度CO2の排出量が削減されるのか。実は現状、ユーグレナのSAF利用によるいわゆるLCA(ライフサイクルアセスメント:サプライチェーン全体での環境負荷を定量化したもの)の正確な値は公開されていない。

ユーグレナの広報はBusiness Insider Japanの取材に対して

「現時点では実証プラントで製造しているため、LCAでのCO2削減率について言及が難しい状況です。2025年の商業プラントが完成し、2026年に稼働した際には、LCAの考え方で、6~8割のCO2削減値を見込んでいます。(原料によって削減率異なります)」

と、LCAを公開していない理由について説明する。

航空分野では、国際民間航空機関(ICAO)によって国際航空のためのカーボンオフセット及び削減スキーム(CORSIA)と呼ばれる脱炭素化に向けた段階的な取り組みが始まっている。この中では、「CORSIA適格燃料」という認証によって、CO2の排出効果を認められたSAFの利用を推進していく方針も定められている。

2022年7月には、フィンランドのSAF世界最大手であるNeste社がCORSIAの認定を受けたSAFを世界で初めて供給したことも注目された。ユーグレナが今後、国際線の航空機にSAFを導入してく上では、商業プラントの稼働後にこういった認証を取得していくことも重要となってくるだろう。

(文・三ツ村崇志

編集部より:ハイドラント施設についての表現を改めました。2022年9月21日 9:15

編集部より:成田国際空港の田代敏雄部長としていた写真に誤りがありました。お詫びして訂正いたします。2022年9月21日 12:05
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