スノーピークのイベントに登壇した山井梨沙氏。2022年7月撮影。
撮影:横山耕太郎
キャンプ用品大手・スノーピークは9月21日、社長の山井梨沙氏(34)の辞任を発表した。
スノーピークによると、山井氏は「既婚男性との交際および妊娠」を理由として辞任を申し出ており、9月21日に開催した臨時取締会で辞表を受理した。
また同日付けで現スノーピーク会長・山井太氏(62)が社長に就任し、会長職と兼任することも決めた。山井太氏はスノーピーク前社長。2020年3月、娘の山井梨沙氏が社長に就任していた。
9月17日に梨沙氏から報告
2022年7月、イベントに登壇した山井太会長。
提供:スノーピーク
スノーピーク広報によると、山井梨沙氏から9月17日、辞任の申し出があり対応を協議していたという。
今回の辞任を受け、山井太会長が役員報酬3カ月分の20%、副社長・高井文寛氏が役員報酬3カ月分の10%を自主返上する。
スノーピークは「当社は、本件を厳粛に受け止め、深く反省するとともに関係者の皆さまに心よりお詫び申し上げます」と発表した。
発表のタイミングや辞任に至る経緯などについてスノーピーク広報担当者は、「発表内容以上はコメントできない」とした。
事業多角化を象徴する若き社長
2022年8月には東京駅近くにカフェもオープンした。
撮影:横山耕太郎
山井梨沙氏は、2012年にスノーピークに入社し、同社初となるアパレル事業を立ち上げ2020年に3代目の社長に就任。
スノーピークは、高価格でもハイスペックなキャンプ用品が、愛好家から支持されて成長してきた。中期経営計画などでは「衣食住働遊にそった体験価値・自然指向のライフバリューの提供」をうたい、衣類から飲食、住宅、オフィス環境整備、キャンプ場経営など、事業の多角化を推し進めている。
アパレル事業を率いた山井梨沙氏が若くして社長に抜擢されたのも、事業多角化を象徴する面もあった。
今回の突然の辞任は、キャンプ用品事業からの多角化を目指すスノーピークにとっては出鼻をくじかれた格好だ。
円安と資源高騰で下方修正
2022年12月期・第2四半期決算説明資料
出典:スノーピーク決算説明資料
スノーピークには、資材の高騰も直撃している。
スノーピークは2005年度から16期連続で増収を達成しているが、2022年12月期の通期決算の見通しは、売上高327億円から318億円に下方修正した。
ファミリー層の新規顧客が鈍化し、高単価の商品販売が減ったことや、円安・資源高騰が影響したという。業績予想の下方修正に株価も反応している。
スノーピークにとっては厳しい状況が続いているだけに、今回の社長交代が経営に与える影響が懸念される。
(文・横山耕太郎)