テスラ(Tesla)のイーロン・マスク最高経営責任者(CEO、右)と実父のエロール・マスク(左)。
Cyrus McCrimmon, Getty Images
米テスラ(Tesla)イーロン・マスク最高経営責任者(CEO)の父親、エロール・マスクは億万長者の息子がもっと子づくりに励むべきと考えている。
「子どもを増やすべきではない理由がどこにあると言うのでしょう? 君主制時代の王たちは子どもを何人つくっても問題なかったし、そのほとんどは(婚姻関係にない相手との)非嫡出子でした。欧州だと8割くらいがいわゆる私生児で、20人、30人と産ませていたわけです。
(養育する)十分な金があって、一国の王のような立場にある人物が、子どもを増やしてはならないとしたら、それはどんな理屈なのでしょうか」
Insiderは今年7月、イーロン・マスクが脳電極埋め込み技術を開発するスタートアップ「ニューラリンク(Neuralink)」の経営幹部、シヴォン・ジリスとの間に双子を授かっていたことをスクープした。イーロンは双子誕生時に50歳、ジリスは35歳だった。
イーロンは最初の妻、カナダ出身の作家ジャスティン・ウィルソンとの間に双子のビビアンとグリフィン(18歳)、三つ子のカイ、サクソン、ダミアン(16歳)という5人の子どもがいる。
なお、ジャスティンとの間には最初に長男が誕生したが、2002年に乳幼児突然死症候群(SIDS)で夭逝した。
(編集部注:マスクの婚姻関係についてはこちらの過去記事を参照されたい)
2020年にはミュージシャンのグライムスことクレア・ブーシェとの間に長男、エックスアッシュエートゥエルブ(X Æ A-Xii、この命名は物議を醸した)が誕生。2021年11月のジリスの双子出産を挟んで、12月には代理出産でブーシェとの長女エクサ・ダーク・サイディリアル(Exa Dark Sideræl)を授かった。
さて、イーロンの実父エロールは最近、Insiderの電話取材に応じ、息子の子どもは「正式には10人だ」と語った。
エロールは電話口で、イーロンがジリスとの間に子どもをつくる選択をしたことを称賛した。
「孫(のエクサ)はとても賢い女の子になると思います。何と言うか、子どもに賢くあってほしいと望む人たちは十中八九、結婚相手にもきわめて賢い人であってほしいと願うものなので(なお、マスクとジリスは結婚していない)」
ロイター報道(8月26日付)によれば、ジリスは体外受精(IVF)を通じて妊娠したもので、マスクとは恋愛関係にはないとニューラリンクの同僚に説明しているという。
エロールはイーロンとジリスの関係性について詳しくは知らないとした上で、こう語った。
「お互い話し合った上で何かしらの合意に至ったのでしょう。でも、私からイーロンにそんなこと聞くわけにはいかないでしょう。息子よ、どうやったんだ、なんてね。そう、個人的な領域の話ですから」
イーロンは1971年、南アフリカの行政首都プレトリアで、エロールと「伝説のモデル」メイ・マスクの間に生まれた。両親はその後1979年に離婚している。
マスク本人の説明によれば、父親のエロールは知能指数(IQ)が信じられないほど高く、その数字通りに敏腕技術者としての能力を遺憾なく発揮し、建築やエメラルド採掘などの事業で大きな成功を収めた。
そして、イーロンをはじめ子どもたちには学校教育の上に厳しい家庭教育を施した。
イーロンは米ローリング・ストーン誌のインタビュー(2017年11月15日付)で、父親を「何ともひどい人間だった」と評している。同年に出版された伝記には、イーロンと(最初の妻)ジャスティンが「子どもたちをエロールには会わせないと誓った」との記述もある。
ただし、当のエロールはInsiderの電話取材の際に、(三つ子のうちの)ダミアンがまだ小さかった頃にロサンゼルス近郊のベルエアでピアノを弾いているのを見たことがあると口にしている。
最近も、2021年の冬にテキサス州に出向いてイーロンを訪ね、生まれたばかりの(ブーシェとの長女)エクサに会ったばかりという。
今年7月にオーストラリアの20分ラジオ番組に出演したエロールは、最近パパラッチされた上半身裸のイーロンについて、「すごくがっしりした体格で、力がみなぎっている感じもしますが、長いことひどい食生活を送ってきたんです」と裏話を披露した。
さらに、番組のホストが「息子さんを誇りに思っていますか」と聞くと、エロールはこうはぐらかした。
「いや、まあ、私たち家族はそれぞれ、長い年月をかけていろんなことをやってきたのであって、息子だけが突然何かを始めたというわけではないんです」
エロールはこのラジオ番組での発言について、後に英デイリーメールに「質問を聞き間違えた」と説明。番組の数日後にイーロンからメールが届き、「父さん、メディアは父さんを弾けば音がなるバイオリンみたいに弄(もてあそ)んでるんです、少し静かにしててください」と諭されたと言う。
「人口減少は世界の脅威」論を親子で共有
数々のエピソードから推察できるように、イーロンとエロールは人間として異なる部分も多いようだが、それでも、世界人口の将来見通しについては懸念を共有している。
2017年以降、イーロンは自身のSNSアカウントなどを通じて、出生率の低下とりわけ開発途上国におけるそれの深刻さに目を向けるよう促してきた。2021年5月24日には「人口崩壊は文明にとって最大の脅威」とツイート。
このツイートに対しては、世界の人口統計学者たちから、問題を過大視しているなどと批判や反論が殺到した。
イーロンは、富裕層や知識階級における出生率の低下こそが問題の核心と考えているようだ。
6月14日に「統計的に見ると、裕福な人ほど子どもの数が少ない」とツイートしたイーロンは、その数日後、知識階級が失われていく未来の地球をテーマにした2006年の映画『26世紀青年(原題:Idiocracy)』の「オープニング場面を見よ」とフォロワーに求めた。
その上で、自身が子どもを増やし続けてきたことについて、7月14日のツイートで「皆さんに良い手本を見せようとしているのです」と言ってのけ、あらためて人口崩壊が世間で認識されている以上に深刻な問題であることを強調している。
相当な話題を呼んだ一連のツイートだが、父親のエロールはInsiderの電話取材でさらに物議を醸しそうなことをいろいろと口にした。
「地球全体として見れば、人口は(崩壊どころか)順調に増えているように見えます。しかし、実態としては、人口増加が必要とされている国では増えず、むしろ人口が伸び悩んでいる国々からのアフターフォローが必要な(開発途上国などの)国や地域でこそ人口増が進んでいるのです」
要するにエロールは、イタリアやカナダ、ドイツのような「生産性の高い国」で出生率が低下し、「歯に衣着せず言えば、生産性が高いとは言えない国々では、夫婦当たり15人もの子どもを抱えて暮らしている」(エロール)現状を懸念しているわけだ。
エロールは息子の主張を代弁してそう語ったわけではなく、イーロンとは長年にわたって何度もこの問題について話し合ってきたとInsiderに語った。
エロールにはイーロンを含めて7人の子どもがいる。
彼は最近、英タブロイド紙サンの取材(7月18日付)に応じ、南米の匿名企業から不妊に悩むコロンビアの富裕層の女性たちのために精子提供を打診されたと語っている。もちろん、名実ともに世界を代表する経営者となったイーロンを生み出した父親だからこその打診だ。
ところが、エロールは最終的にその申し出を断ったという。提供した精子から生まれてくる子どもたちが実の(遺伝的な)親である自分が何者なのかまったく知らない、そんな将来確実に想定される事態を受け入れられないからだと、エロールはInsiderに説明している。
ついでに、エロールについてごく最近の話題も紹介しておこう。
彼は2019年に子どもを授かっていたことが明らかになった。その母親は、メイ・マスクとの離婚後に再婚した2番目の妻ハイデ・ベズイデンハウト(すでに離婚)の連れ子ヤナ(・ベズイデンハウト)だ。
エロールはヤナを含む5人の連れ子を我が子同然に育て、その後ヤナが大人になってから男女の関係になり、2017年には長男エリオットを授かった。したがって、最近明るみに出た2019年誕生の子どもは第2子ということになる。
そんな破天荒に見える人生を送るエロールも、世界的な有名人になった長男イーロンにはそろそろ腰を落ち着けてほしいと願っている。
「イーロンはいつまでも居所が定まらずふらふらしたまま。この間もその話になり、イーロンは私にこう言うんです。『父さん、家と呼べる場所で過ごすのは、この3週間では初めてだよ』ってね。
父親としてはもちろんそこが気になるわけです。素敵なパートナーに出会えるといいんですが。
子どもたちにとっても、現状のままでは良くないと思います。父親には全然会えてないでしょうから」
[原文:Elon Musk's father, Errol, says the Tesla founder should have more children]
(翻訳・編集:川村力)