第2世代AirPods Pro。価格は3万9800円(税込)。
撮影:西田宗千佳
2019年の発売以来、アップルの大ヒット製品となり、ノイズキャンセル機能搭載の完全ワイヤレスイヤホンの代名詞の1つになった「AirPods Pro」。その第2世代が9月23日から発売になる。価格は3万9800円(税込)。
先日発表されたタイミングで概要は取材しているが、今回は製品版の実機を使ったレビューだ。
AirPods Proは、2019年発売の「第1世代」と今回発売の「第2世代」で、中身が別物と言っていいほどに進化している。
実機テストの結果わかってきたのは、ヘッドホン・イヤホンに重要な音質以上に、使い勝手の面が大きく進化していたという点だ。
外観は本当に「そのまま」。でも中身は別物
左が第2世代、右が第1世代。よく見るとわずかに違うのだが、ぱっと見ただけで同じデザインだ。
撮影:西田宗千佳
第1世代と第2世代のAirPods Proを並べて、どちらがどちらかをすぐに当てられる人は少ないだろう。そのくらい外観はそっくりだ。
筆者もテスト中、何度も「今、テストしているのは新型なのか旧型なのか」を確認しないと怖いくらいだった。
左が第2世代。底面部分にスピーカー穴があることで、違いが確認できる。
撮影:西田宗千佳
撮影:西田宗千佳
ただ、第2世代は設計が完全に一新されている。だから、中身は「別物」だ。
AirPods Pro自身はそれぞれの違いを認識しているので、第1世代用の充電ケースに第2世代のイヤホン本体を入れても、エラーが出て動作しないくらいだ。
第1世代のケースに第2世代を入れても警告が出て動作しない。
撮影:西田宗千佳
第1世代と第2世代の判別方法の1つは、充電ケースだ。ストラップホールが付いたので、その点に注目すると区別はつきやすい。
イヤホン本体の方も、よくみると、接触センサーや耳での反響を測るマイクが入っている黒い部分の場所が変わっている。とはいえ、どちらがどちらか分かりにくいくらい似ていることに変わりはない。
第2世代のケースにはスピーカー穴とストラップホールが追加された。右側面の穴のようなものがストラップホールだ。
撮影:西田宗千佳
よくみるとイヤホン本体も、第2世代(左)と第1世代(右)では黒い穴の位置が違う。
撮影:西田宗千佳
使い方そのものも、大きく変わっていない。ペアリング方法も同じ。充電も、付属のLightningケーブルで行う。
パッケージに入っている内容は、本体・Lightningケーブル・簡易マニュアルにイヤーピースと、基本的に同じ。
撮影:西田宗千佳
また、イヤーピースのデザインも全く同じで、第1世代向けのものを第2世代に取り付けることだってできる。
イヤーピースのサイズなどは第1世代と同じで互換性があるが、「XS」が新たに付属する。
撮影:西田宗千佳
家の中で場所がわかる「充電ケース」
ただ、使い勝手はかなり変わった。特に分かりやすいのが「充電ケース」の改良だ。
これまで、充電の状況はLEDの点滅と色で判別する必要があったのだが、第2世代からは充電ケースにスピーカーが内蔵されたので、音で判別可能になった。
充電が始まると「ポーン」という小さな音がするので、それで判別できる。もちろん設定で音をオフにすることもできる。
iPhoneでの設定から、ケースの充電音のオン・オフは設定可能。
筆者キャプチャー
さらに、この充電ケースには「U1」が内蔵されるようになった。
U1とは、UWB(Ultra Wide Band、超広帯域無線通信)という通信規格を使うためのチップで、iPhone SEを除く、iPhone 11以降のiPhoneすべて、Series 6以降のApple Watch、そして忘れ物防止タグであるAirTagに搭載されている。
U1の機能を使うと、iPhoneから「目的の機器が、身の回りのどこにあるのか」について、方向・距離をセンチメートル単位で割り出せる。
U1を使うことで、充電ケースがある場所までの位置(方向)を正確に検出できる。内部に忘れ物防止タグ「AirTag」の機能が入っているようなものだと思うとわかりやすい。
Business Insider Japan
AirPods Proをどこに置いたのかわからなくなった、という時はないだろうか?
そういう時は、「探す」アプリからAirPods Proを呼び出すのだが、第2世代からは、同じ家の中など近い場所にあるなら、方向・距離をほぼ正確に示してくれる。
もともとAirPods Proは前回使った場所を「探す」アプリに表示することができた。けれども、第2世代ではその精度が格段に上がる。
実質的に、AirTagが充電ケース内に内蔵されているような形になったからだ。
U1とBluetoothを使った位置把握機能を使っても、バッテリー消費はほとんどない。AirTagがボタン電池1つで1年以上動くのだから、バッテリー自体を積んでいる充電ケースなら、ほとんど気にする必要はない。
もう1つ、使い勝手向上という意味で大きな変化が「音量調節」の搭載だ。
第1世代AirPods Proは、イヤホンの「棒」状の部分にマイクロスイッチを仕込んでいた。指でカチカチと押すことで、再生・停止・曲送りができたし、長押しするとノイズキャンセルのオン・オフもできた。
ただ、「音量調節」はできなかった。他の完全ワイヤレスイヤホンには、小さなタッチパッドを搭載し、音量調節などの操作に使うものが少なくないが、AirPods Proはそうではなかった。
第2世代では、「棒」の部分に、縦にスライドさせるタッチパッドが搭載された。そのため、上下に動かすことで音量を変えられる。上下に指を動かすと一度滑らせるごとに音量が変わるのだが、上で音量アップ、下で音量ダウンだ。
イヤホンの「棒」の部分は、デザインこそ同じだが、実はタッチパッド内蔵になっている。
撮影:西田宗千佳
この種のタッチパッドでの操作は、目で見えていない場所で指を動かす関係からか、意外と誤動作しやすい。
一方、第2世代AirPods Proのものは、「棒に沿って上下」というシンプルな要素であることもあってか、テスト中誤動作は「ゼロ」だった。
これら3つの要素によって、日常的なAirPods Proの使い勝手は大きく上がったと感じる。
ノイズキャンセルの性能アップは「体感できる」
肝心の音質の違いは次のような印象だった。
第1世代AirPods Proは派手でなく聴き疲れしない音づくりだった。傾向としては第2世代も似たような感じだ。
ただ、音の解像感・明瞭さが増しているので、聴き比べると「第2世代の方が音質は良い」と感じるだろう。
それ以上に違うのが、「ノイズキャンセル」と「外音取り込み」だった。
まず、前者ノイズキャンセルについては、アップルは(性能が)「2倍になった」と表現している。基準がわからないので「2倍になった」のか、筆者にはなんとも言えない。
ただ、確実に今までよりも騒音が消えるようになった実感はある。第1世代に比べると中音から低音に残っていた騒音がより聞こえにくくなり、人の声や高い音の一部が残る、という感じになっている。
もう1つの大きな進化が「外音取り込み」だ。
耳にAirPods Proを装着しつつも、周囲の音をマイクで取り込み、音楽とともに聞けるようにしたものだ。ジョギング時など、周囲の安全に配慮しつつ音楽も聴きたい、という時に有効だ。
第1世代から、AirPods Proの「外音取り込み」は、他社のものに比べ自然な音になっているのが特徴だった。イヤホンをつけた時と外した時の聞こえ方の差が小さい、というべきかもしれない。
第2世代ではそれがさらに自然になった。まさに「本来耳で聞いているはずの音が外音取り込みで聞こえる」感じに近い。
「適応型環境音除去」で耳のストレスを減らす
さらにこの機能は、第2世代向けに搭載された「適応型環境音除去」とセットで使うとより価値を持ってくる。
適応型環境音除去とは、聴覚に影響を与えるほど大きな音が鳴っているような場所でも、外音取り込みでの音を「影響を与えないレベルの音」に小さくするもの。
耳栓だと音が全部聞こえなくなるが、適応型環境音除去だと、「極端に大きな音をそれなりに小さく」した上で、でも「周囲の音は自然に聞こえる」形にする。
その効果は、最新の「watchOS 9」が入ったApple Watchとセットで使うとわかる。
watchOS 9にある「ノイズ」というアプリでは、周囲の音が聴覚に影響を与える大きさかどうかを可視化できる。
第2世代AirPods ProはWatch OS9の「ノイズ」アプリと連動し、結果的にどのくらいの音量に低減したかを表示できるようになった。この機能は現状、第2世代AirPods Proでのみ利用可能で、第1世代AirPods Proを含む他のヘッドホン・イヤホンでは利用できない。
実際、工事現場の近くで84dBの音が鳴っているとき、外音取り込み+適応型環境音除去を使った第2世代AirPods Proでは79dBまで下がった。
一方、周囲が静かな仕事場(40dB)では、音量は下がらずに40dBのままだった。目的がノイズキャンセルではないので、音量を自然に下げる感覚に近い。
84dBのところで外音取り込み+適応型環境音除去を使うと、表示は78dBになった。
撮影:西田宗千佳
実はこの機能、外音取り込みではなくノイズキャンセルを使った時にどのくらいの音になるのかも測定できる。ノイズキャンセルの場合、84dBの音は57dBに、先ほどの40dBの室内の音は20dBまで下がった。
これらの数値は状況によって細かく変わるので、完全に正確なものではないだろう。だが、十分「自分がどのくらい快適になるのか」の目安にはなる。
単純な音質だけでなく、こうした部分での付加価値を追求しているのが第2世代AirPods Proの特徴であり、「使い勝手こそが最大の変化点」と言える。
(文・西田宗千佳)