本記事の著者であるホーリー・ジョンソン氏。
Courtesy of Holly Johnson.
- 私は15年間大家として賃貸不動産から追加所得を得ている。だが、近々それらの物件を売却するつもりだ。
- いまが売り時だということもあるが、本音を言えば賃貸物件を扱うのに疲れたのだ。
- 賃貸事業は「ほったらかし」では済まないし、内装などを手掛ける職人を見つけるのが難しくなっている。
金銭的な独立に向けた方法は無数にあり、私と夫はありとあらゆることを試したのではないかと思うことがある。毎日9時から5時まで働き、いくつもの副業を掛け持ちし、株や債券、ETF、投資信託、暗号資産にまで投資をしてきた。10年以上自営業という立場で働いてきたので、しばしば違う仕事をいくつも同時に進行している気がする。
2007年と2008年には2件の賃貸物件も購入しており、いまもこれらは賃貸中だ。だが現在いくつかの理由から、自分たちが住んでいる家以外の戸建て住宅をどちらも売りに出している。
どのマネーの専門家も賃貸事業を推奨していることを考えれば、いま物件を売るのは気が狂っているように聞こえるかもしれない。ブログから、早期リタイアを目指すフェイスブックのグループの掲示板に至るまで、ここ数年は不動産投資が大流行しているようだ。
だが、私はこの潮目に逆らうことなどまったく恐れない。15年以上大家をしてきた私は、いわゆる早期リタイアの「専門家」が、賃貸不動産さえ買えば9時から5時まで働く生活に別れを告げられるように言うのを聞いたり読んだりするのは、少々うんざりなのだ。
現実には大家には山ほど仕事があり、その価値があるかないかは、大家のリスク許容度、目的、そして毎日のイライラや修繕を厭わないかどうかによって決まる。
私たちができるだけ早く大家を辞めようと思っている理由と、不動産投資は気弱な人には向かない訳を順番に挙げていこう。
理由その1:いまが売り時である
賃貸物件を売ろうとしている一番の理由は、今は多くの市場で賃貸不動産に投資するのに適した時期ではないのと、同じ理由だ。
全米で不動産価格が高騰しており、多くの主要都市ではとんでもない法外な値段に上がっている。実際、全米不動産協会(NAR)が発表した中古住宅の販売価格の中央値は、2021年8月から2022年8月までの1年間に全米で10.8%上昇した。それも、その前に125カ月連続で上昇していたのだから異常と言うしかない。
売却できた最初の賃貸物件の手続きがもうすぐ終わるところで、その売却価格は2008年に買ったときの2倍以上となった。冷暖房空調設備(HVAC)の交換費用5500ドル(約80万円)や新しい屋根の設置(こちらは住宅所有者保険でカバー)以外にも、この家には購入後も最低限の更新や修繕を行ってきた。2008年にこの家を買った当時はここに住んでいたため、頭金はたったの3000ドル(約43万円)で済んだ。
最後の入居者は13年間住んでいたので、実質的にこの人がローンを完済してくれたようなものだ。これらをすべて考慮すると、結局収支の面では良い売り時だと言える。
そんなわけで最初の賃貸物件の売却額は、所得税、不動産業者への手数料、その他経費を差し引いた後で約15万ドル(約2175万円)になる模様だ。
理由その2:大家稼業はほったらかしではない
物件を売却する2つ目の理由は、実のところ賃貸業に疲れたからだ。誰が何と言おうと、大家稼業はほったらかしでは立ち行かない。たとえ良い賃借人であっても、管理会社を利用していても、だ。
実際、折に触れて電話やメールが来るし、それが自分の都合の悪い時も多い。過去数年間、私たち夫婦はHVAC設備の補修や修繕の依頼、倒れた木の処理、期日に家賃を支払わない賃借人との交渉といった電話の対応に追われた。
もちろんこうした面倒を埋め合わせてくれる賃貸収入を得られるのだが、わざわざ私が電話をかけたり何かしたりしなくても良いパッシブな投資方法は他にもある。例えば、最初の家を売って手にした15万ドルを利回り6%の商品に投資すれば、年間9000ドル(約130万円)の安定収入が得られる。
雨漏りする屋根やシンクの目詰まりにもう対処しなくてよいことを考えれば、悩むまでもない決断だ。
理由その3:職人を見つけにくい
企業が人手不足に陥っていることは大抵の人が認識しており、その状況はどこでも当てはまる。熟練労働者についても同様であり、私たちは売却準備のために最初の空き家に出かけたときに、この事態にすぐさま気づいた。
壁の修理工や塗装工、簡単な内装を手掛ける職人を見つけるのがどれだけ大変かわかるだろうか?
今、こうした職人はまったく見つからない。まして急にお願いする一回限りの仕事に人手が必要な場合はなおさらだ。
結局、夫が1週間まるまる休みを取って、家回りの修繕や内部の塗装をしてからこの物件を売りに出した。彼は好きでやったわけではない。ほかに誰も見つからなかったからそうせざるを得なかったのだ。
またこれは過去数年間、私たちが行わなければならなかったどの修繕についても言える。簡単に言うと、お金を払っても良いと思っているのに人手が見つからないということは、そのまま劣化するということだ。
理由その4:どの大家も嫌な思いをしたことがある
賃貸不動産を売る最後の理由は、どの大家も嫌な経験をしており、大家でいる限りいずれまた同じことが起こると感じているからだ。
2009年のケースはひどくストレスだった。私たちはある家族に出て行ってもらったのだが、退去時にカーペットは汚れて台無しで、室内ドアはすべてなく、正面の窓は割られ、外側の扉は打ち破られていた。損害額は実に約6000ドル(約87万円)に上った。
結局この物件を再び貸し出すに当たりフローリング、ドア、複数の窓、台所の調理台などほぼすべて交換しなければならなかった。
ここ10年ほど素晴らしい賃借人に恵まれた後、もう二度とあのような状況はご免だと固く思っている。いま売ってしまえば、あんな嫌な経験を二度とすることはあるまい。
20代で賃貸不動産に投資をしたときは、賃貸収入があれば早期リタイア後の生活の足しになるだろうと思っていた。だが、年を取ったいま、もっと手がかからない投資方法が山ほどあることに気がついた。大家という消耗する仕事はもう自分たちにはふさわしくない。
近々1つ目の賃貸物件を売却する予定で、数カ月後に現在の賃借人との契約期間が終わり次第、もう1つの物件も売りに出すことにしている。これら不動産を売却したら、その収益は退屈なインデックスファンドに投資して、ほったらかしにする計画だ。
(翻訳・中山桂、編集・長田真)