イノダコーヒ本店(京都市中京区)
撮影:吉川慧
京都の老舗喫茶店「イノダコーヒ」(京都・中京区)は9月27日、同社創業家の猪田浩史会長が保有する株式をアント・キャピタル・パートナーズが運営するファンドに譲渡したと発表した。「事業承継」が目的としている。
イノダコーヒは1940年、創業者・猪田七郎氏がコーヒー豆の卸売業を京都市中京区に開いたのが始まり。終戦後の1947年に現在につながるコーヒーショップ形式の店舗を開業した。京都を代表する喫茶店の一つとして知られる。
現在は京都市内を中心に喫茶店9店舗を運営。都内ではデパート「大丸」東京店の中に店舗を構える。近年ではECでの販売にも取り組んでいる。
文豪・谷崎潤一郎や池波正太郎、高倉健などの文化人にも愛され、過去には映画のロケ地としても登場。本店のほど近くにある三条支店(2023年春まで建替工事で休業)は大きな円形カウンターが名物として知られた。
ネルドリップ式で抽出し、甘み(砂糖)とミルクを入れたコーヒーのほかフードメニューも人気。本店で提供されるモーニング「京の朝食セット」を目当てに朝早くから訪れる人も多い。
イノダコーヒ本店のモーニングメニュー「京の朝食セット」
撮影:吉川慧
イノダコーヒの前田利宜社長は「従前と変わらず『京都の朝は、イノダコーヒの香りから』の精神を全うし 『職人が焙煎した豆をネルドリップ式で味わう』『優雅に味わう贅沢な食事』『まるでタイムスリップしたようなレトロな空間』の3つのこだわりを深化させ、これからもお客様に愛され、地域に必要とされるお店作りを実現して参ります」とコメントしている。
弊社にとり新たな門出となります。これからもお客様から学び、育てられた成果を、社員一同「おもてなし」という形でお返しして参ります。
(前田社長のコメント)
株式を譲渡されたファンドを運営するアント・キャピタル・パートナーズ(東京・千代田区)のプレスリリースによると、同社は国内の未上場株式などに投資する投資会社。運用額は2162億円。
運用するファンドでは「国内中堅・中小企業の事業承継問題や株式分散問題への資本ソリューションの提供により、企業や経済の活性化に貢献する投資を実行」していると説明。
イノダコーヒについては「イノダコーヒの理念を継承しながら、更なる事業の成長と発展のサポートを積極的に行ってまいります」とコメントしている。
(文・吉川慧)