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1年間の男性育休と「育児うつ」を経験。それでも「育休は最高」だと言える理由

二人の子供と遊ぶ平松勇一さんの写真

二人の子どもと遊ぶ平松勇一さん。2022年7月撮影。

提供:平松さん

育児・介護休業法が改正され、2022年10月から「産後パパ育休」制度(※)が始まるなど、男性育休が注目されている。

5年前の2017年度にはわずか5.17%だった男性育休の取得率は、2021年度には13.97%と増加。育児を担う男性が増えたことで、これまでは女性の問題として語られることが多かった「育児によるうつ」を経験したという男性も増えている。

1年間の男性育休を取得し、「育児うつ」を経験した男性に当時の経験を取材しました。

産後パパ育休育休とは別に、子どもの出生後8週間以内に4週間まで取得可能な制度。2回に分割して取得できるほか、取得の申し出は2週間前まで可能で使いやすいものになっている。また育児・介護休業法の改正により2023年4月からは、従業員数が1000人超える企業について、育休取得の状況を年1回公表することが義務付けられる。

11時に帰宅、4時間睡眠の生活

哺乳瓶

平松さんは双子が生まれた当時は、育休の取得は考えていなかったという。

撮影:今村拓馬

「育休中に双子の世話を一人でしているとき、ふと『これまであんなに一生懸命仕事をしてきたのは何だったんだろう?』って、アイデンティティがわからないというか、すごく不安になりました」

2018年に約1年間の育休を取得した平松勇一さん(36)は、「育児うつ」を経験した当時についてそう話す。

平松さんはもともと、テレビ番組の編集を担当する都内の企業に勤めていたが、愛知県に住む義理の母が体調を崩したことをきっかけに、名古屋の映像制作会社に転職。夫婦で名古屋に移住した。

転職先が決まったのとほぼ同じタイミングで妻の妊娠がわかり、2018年2月に待望の双子が誕生した。

「転職したばかりということもあって、最初は育休を取るつもりはありませんでした。当時は双子の育児の大変さを完全になめきってました

生後1カ月を迎えた頃は、平松さんの職場も繁忙期と重なった。

平松さんの帰宅は午後11時を過ぎていたが、帰宅後は妻が眠れるようにミルクをあげたり、おむつを変えたりと育児を交代。午前4時ごろにまた妻と育児をバトンタッチして、4時間ほど睡眠をとって出勤する生活だった。

週休3日や時短勤務を相談

双子と平松さんの写真

生後半年ごろの双子と平松さん。2018年8月撮影。

提供:平松さん

夫婦でこのまま育児を続けるには限界があると感じ、平松さんは社長と会社の社労士に相談した。

「実は当時、男性育休という制度を詳しくは知らず、週休3日や時短勤務を考えていました。でも社労士さんから育休について説明してもらい、子どもが1歳になるまで育休を取ることにしました」

勤務先の会社は社員30人程度。少人数ではあったが、社長が理解を示してくれたことで、突然の申し出ながらスムーズに育休を取得できた。

出産前に仕事を辞めていた妻と育休中の平松さんは、二人で育児を分担する生活が始まった。

「1年間、仕事を離れる不安はありましたが、育休に入ってみたら、夫婦で双子の育児をする時間は最高に楽しくて、仕事への不安は吹き飛びました」

平松さんの育休があと2カ月で終わるという頃、妻が新しい職場で週に3日ほど働き始め、平松さんが一人で育児を担うことが増えた。

しかし、この頃から「楽しかった育児」が変わり始めた。

家から出られず、追い込まれた日々

kosodate

家にこもりっきりになり、心療内科を受診した当時について、平松さんは「あまり覚えていない」と話す(写真はイメージです)。

撮影:今村拓馬

「子どもがつかまり立ちをするようになって、余計目が離せなくなってきた時でした。妻が働きに出ている6時間ほどは、ワンオペ育児。自分がトイレに行く時でも、目を離すのが心配で、家に閉じこもり、気分が落ち込んでいました。あんなに充実していた育児が、一人だとつらく感じるようになりました」

妻と育児を分担できた時には、それぞれが交代で外出したり趣味の時間を確保したりもできたが、ワンオペ育児では部屋から出られない。

「一人で誰とも話もできない状況で、本当に仕事に復帰できるのかとどんどん不安になってしまって。これまで一生懸命働いてきた自分ってなんだったんだろうと、思い詰めてしまった」

平松さんの妻も、平松さんの異変を感じていたという。

「妻が仕事から帰ってきた時、僕は娘をあやしていたらしいのですが、電気もつけていない暗い部屋で、ぼーっと外を見ていたらしいです。

当時の記憶があまりないのですが、ずっと気持ちが落ち込んでいる感じだったのは覚えています」

平松さんは、心療内科を受診。一時は服薬しながら、妻が家にいる時間はなるべく外にでるようにしたという。

「仕事のない生活が辛かったのかも」

子供たちと遊ぶ平松さんの写真

家族と過ごす時間を増やすため、平松さんはフリーランスとして独立した。2022年7月撮影。

提供:平松さん

「育児うつ」を経験した平松さんだったが、育休明けが近づき、会社と連絡を取り始めると気持ちが安定したという。

仕事の復帰ができるイメージが持てたことは大きかった。子どもができるまで仕事中心の生活だったので、急に仕事がなくなり、人と関わりのない生活が苦しかったのかもしれません」

動画制作の仕事に復帰した平松さんは、残業時間を減らすため効率的に業務することを徹底し、できるだけ在宅勤務を続けた。

2020年11月には、家族との時間を優先するためにフリーランスとして独立の道する道を選んだ。

「今フリーランス2年目ですが、仕事を受けすぎると家庭の時間が取れませんし、仕事をセーブしすぎると発注が減ってしまうのでそのバランスを模索しているところです。個人的には、今はたとえ収入が減っても、子どもと長くいる時間を大切にしたいと思っています」

増える「悩める子育てパパ」

安藤さんの写真

イベントに登壇した安藤哲也氏。2020年2月撮影。

撮影:横山耕太郎

平松さんのように、育児に悩みを抱える男性は少なくない。

「育休中の男性の産後うつ、育児や夫婦関係によるストレス、職場復帰後の働き方などの悩みを聞く機会が増えた」

子育て中の父親が多く加入し、男性育休の普及活動などを取り組むNPOファザーリング・ジャパンの安藤哲也氏はそう話す。

ただ子育ての悩みは、新しい問題ではなく「もともと女性が多く抱えていた課題」とも指摘する。

「男性育休の法律が変わって取得する父親が増え、パパにも新しい悩みが生まれたように見えますが、これは子育てをしてきた女性が通ってきた道でもあります。子育てするパパが増えれば、ママと同じ悩みが増えるのは当然のことです」(安藤さん)

一方で安藤氏は、子育てするパパを孤立させないことも大切だという。

「男性の場合は、『父親が稼がないといけない』というバイアスを感じがちで、今は収入があまり増えない社会状況もあって、ストレスの一因になっている。

父親が抱えるのは子育てだけでなく、パートナーとの関係、キャリアの不安などが絡み複雑になっていて、解決の正解があるものではありません。

気をつけるべきは、周囲が子育てするパパを孤立させないようにし、パパ側としても相談できる友人や地域のつながりを持てるといいと思います」(安藤さん)

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