第2世代AirPods Proのパッケージ。アップルストアの価格は3万9800円(税込み)。
撮影:伊藤有
第2世代AirPods Proが発売されてまもなく1週間。
既報の実機レビューのとおり、外観はほぼ変更がないことから、いかに第1世代が3年前に発売された機種とはいえ、買い替えるだけの価値があるのか悩んでいる人もいるかもしれない。
出先で使う「集中のためのツール」としてのデキはどうなのか? この視点でレビューしてみよう。
充電器もかねるケース底面のスピーカー穴と、側面のストラップホールが新型と判別しやすいポイント。実用的な装備よりデザインを優先する印象のあるアップル製品のなかで、ストラップホールが付くというのは結構珍しい。
撮影:伊藤有
第2世代では、Apple Watchの充電器でも充電できるようになった。磁石が本体内に入っていて、ピタッと吸着して充電できる。
撮影:伊藤有
屋外テレワークの「集中ツール」としての実力
撮影:伊藤有
個人的に、第2世代AirPods Proで一番気になっていたのは、外出先のテレワーク(リモートワーク)などでの集中ツールとしての性能がどこまで向上したか、ということだった。
第1世代でもノイズキャンセル性能には満足していたが、より良い音質・遮音性になるなら、なお良い。
いくつかの屋外シチュエーションで試してみた。
撮影:伊藤有
まずそもそもの「音質」がどう変わったか。
イヤホンの内部は完全に新設計されている、とアップルは説明しているが、iPhone 14 Proと初ペアリングした直後の印象は、ポップス曲を聴くと「なんだか音がパワフルに感じる」ということ。
もう少し言語化してみると、
- 中低音の音圧が増している
- 音の精細度が向上して、耳とドライバー(スピーカー)の間にあった薄布が一枚、なくなったような印象
- それによって、音楽のノリが一層良く感じる
という感覚だ。
ピュアオーディオ的な細かな音楽表現の評価は横に置いておくとして、第1世代を上回る「楽しい音が聴ける優秀なイヤホン」であることは間違いない。
また使い勝手の面では、AirPods Proの小さな本体の「棒」の部分をスワイプすることでボリューム調整もできるようになった。これが結構便利で、ちょっとしたことながら実用性の高さを感じる。
ただ、あまりにも従来のスマホ側でボリューム調整になれすぎているので、音量調整は思わずスマホを触ってしまう。使い始めてしばらくは、自分の頭のアンラーンが必要だった。
鉄道の騒音、人混みの雑踏、カフェの騒音にどの程度効くか
撮影:伊藤有
第2世代のAirPods Proは、アップルによるとノイズキャンセルの性能は「2倍」だそうだ。
どういう変化があるのか、環境騒音がやや大きい環境で試した。
なお、たまたま第1世代のAirPods Proは2週間ほど前に、修理のため新品に交換したばかり。なので、長年の使用による音質のヘタりは除外して考えて良い。
ショッピングモールの雑踏は屋外で通行の多い連休中に、また電車の音は大きなショッピングモールがある東横線の急行停車駅で試した。数分おきに電車が入線してくるため、車両通過音は会話しづらいと感じるほど大きい。
第1世代:
モールの雑踏 ○ かなり小さい。ただ、人が行き交う雑踏の音が丸ごと消えるわけではない
電車のホーム入線音 △ 多少減衰はしているものの、「小さくなった」と明確に感じるレベルではない
電車内 ○ これまでは十分、抑えられていると思っていた。が、第2世代と比較すると、全体的にノイズが減衰(ボリュームダウン)してはいるものの、消えてはいない
大手ファストフード店 ○ 作業時に集中するには十分。ただし、BGMや周囲の音が全体的にボリュームダウンするような感覚。一方、会話の声はあまり消えない
第2世代:
モールの雑踏 ◎ 雑踏の音がかなり消える。第1世代とは明らかに別モノ。性能の良い耳栓を使っているような感覚
電車のホーム入線音 △+ ゆっくり入線してくる際の音は結構消える印象。一方、大きな入線音(車輪とレールが擦れる音)はあまり変わりない
電車内 ◎ 非常によく効く。走行音は車両全体でガタガタと鳴るレベルの音は聞こえるが、ゴーっというような低音系のノイズをかなり上手に消す印象。室内アナウンスはしっかり聞こえる一方、車外のアナウンスはあまり聞こえない
大手ファストフード店 ◎ 第1世代に比べて、周囲の会話の声もかなり消える。まったく聞こえなくなるわけではないが、壁の向こうの会話がうっすら聞こえる感覚に近い
今回試したシチュエーションでは、金属的な音はあまり消えないが、そのほかはほぼ全て、第2世代のほうが圧倒的に環境騒音が消える印象がある。
特に室内空間でのノイズキャンセルの効きが良い。集中ツールとしての実力は第2世代AirPods Proは間違いなく「良い性能向上がある」と言えそうだ。4.5時間→6時間までのびたバッテリー駆動時間もメリットになる。
「探す」機能対応
撮影:伊藤有
最後に、第2世代AirPods Proならではの「探す」機能への詳細な対応について。
この機能は、アップルのU1チップを内蔵すること実現している。
第1世代でも似た機能は使えたが、Bluetoothの電波強度をもとに距離を算出していると思われるので、第2世代ほど正確さはない(それでも、かなり助かる機能だが)。機能的には、以前レポートしたAirTagの機能が入ったと考えるとわかりやすい。
U1チップのためだけに買い替える必要はまったくないが、ポケットからポロッと落ちてしまいかねないサイズ感なので、実用性は極めて高い機能だと思う。
また、第2世代では充電ケース自体から音を鳴らすことができるようにもなった。
これも、室内などで紛失したときにはかなり有用だ。AirTagと比べると、はるかに大きな音が自分の位置を知らせてくるので、「もしも」のときに安心感を実感できるはずだ。
既存ユーザーの「買い替え」はアリかナシか
右が第2世代のAirPods Pro。左が第1世代モデルだ。
撮影:伊藤有
紹介してきたとおり、単純比較では、第2世代はすべての点において音質・使い勝手が勝っている。
だから、初めてAirPods Proを買う人に「新品の第2世代か、中古で少し安い第1世代のどちらがいいか」と聞かれたら、自分なら迷わず第2世代を奨める。
一方、既存ユーザーが「買い替え」るほどかというと、少し悩むところだ。
第2世代は円安影響のため、価格が4万円近くになった。もちろん、第1世代を初期から使っている人で、よっぽどヘタっているなら、悩まず買い替えて良いと思う。
ただ、今も第1世代を不自由なく使えているなら、劇的に体験が変わるというほどではない。
もっとも、イヤホンはデスクワーク中心のビジネスパーソンなら、ほぼ毎日使うという人もいる。少なくとも3年程度は実用的に使えるだろうことを考えると、年間コストで考えればメリットが上回るという見方もできるだろう。
結局のところ最後のひとおしは第2世代AirPods Proの体験価値をどう評価するか次第。既存ユーザーは店頭で体験してみることを推奨しておきたい。
(文・伊藤有)
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