インデックスファンドは、長期的な視野を持ち、受動的なバイ・アンド・ホールド戦略を好む投資家に適している。
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- インデックスファンドは、特定の市場インデックスを模倣した証券ポートフォリオに、投資家の資金をまとめて投資する金融商品だ。
- インデックスファンドはパッシブ運用なので、手数料が低い。
- 設計上、インデックスファンドはさまざまな銘柄に分散投資をするため、比較的リスクは低いものの、値上がりもまた緩やかだ。
インデックスファンドは投資信託の一種で、投資家の資金を集めて、株式や債券、その他の証券ポートフォリオを購入する上場投資信託(ETF)だ。このポートフォリオは、金融市場の特定のインデックス(指数)、つまり厳選された証券グループを模倣するように設計されている。
インデックスファンドの投資戦略は、ほかのファンドと異なる。インデックスファンドは、ベンチマーク(特定の市場インデックス)に追随する戦略を採用しており、こうしたベンチマークとして、長期的に好調なパフォーマンスを上げる総合指数が選定されることが多い。
さまざまな市場のセクターに連動する数多くのインデックスがある。有名なS&P500種株価指数以外にも、次の指数を耳にしたことがあるかもしれない。
- ダウジョーンズ工業株30種平均指数(DJIA):大型株30銘柄で構成
- ラッセル2000指数(RUT):小型株2000銘柄で構成
- ブルームバーグ米国総合債券指数(LBUSTRUU):米ドル建て投資適格債券で構成
- MSCI EAFE指数(MXEA):米国とカナダを除く先進国の大型株で構成
- ニューヨーク証券取引所総合指数(NYA):ニューヨーク証券取引所に上場するすべての普通株で構成
インデックスファンドの仕組み
インデックスファンドに投資するということは、指数の構成企業すべての株式を購入することにほかならない。大半のファンドは、株式の合計金額、すなわち時価総額加重のインデックスファンドだ。
つまり、通常これらのファンドには、指数における時価総額が小さい企業よりも大きい企業が多く含まれている。
ベンチマークとなる指数の構成が、インデックスファンドの取引を決める。設計上、純粋なインデックスファンドはベンチマークに連動していなければならない。これは、ファンドマネージャーに、どの銘柄を取引するかを判断する裁量がないということだ。
インデックスファンドは、積極的(アクティブ)に銘柄を選別するのではなく、市場全体の値動きと同じ運用成果を追求する消極的(パッシブ)な運用なのだ。
そのため、インデックスファンドは「パッシブファンド」とか「パッシブ運用ファンド」と言われることもある。
一方、「アクティブインデックスファンド」と呼ばれるファンドは、概ね指数に連動するが、同時にファンドマネージャーは特定の個別銘柄を売買できる。
こうしたファンドは必ずしもインデックスに連動しないので、厳密に言えばインデックスファンドではない。長期的にこうしたファンドのポートフォリオは、ファンドが追随しようとしている指数から大きく乖離する可能性がある。
インデックスファンドの長所
多くの投資家、特に初心者はさまざまな理由から株式のインデックスファンドを選好する。インデックスファンドの主な利点を見てみよう。
1. たいてい分散投資が勝つ
アクティブファンドマネージャーの9割について、そのパフォーマンスはベンチマーク指数(つまり、アクティブマネージャーが緩やかに追随している市場部分)を下回っている。
プロのファンドマネージャーでさえベンチマークに打ち勝つのが難しいのに、素人投資家はなおのことだ。
値上がりしそうな銘柄を見極めようとしても、たいていは(資産運用業界の重鎮であるチャールズ・エリス[Charles D. Ellis]氏が著書『敗者のゲーム』で書いたように)負け戦に終わると、クレイトン大学ファイナンス学教授のロバートR.ジョンソン(Robert R. Johnson)教授は言う。「それを解決するのが、分散ファンドへの投資だ」。
インデックスファンドは株式の分散ポートフォリオを投資家に提供するが、こうしたポートフォリオは全体としては、長期的に好業績を上げることが多い。
例えば、米国初の個人向けインデックスファンドであるバンガード500インデックスファンド(Vanguard 500 Index Fund)の5年間の平均リターンは11%だ。
2. インデックスファンドは費用効果が高い
個別銘柄を使って自分で分散ポートフォリオを組もうとすると、コストがかかるだろう。インデックスファンドの方が努力に見合う価値を提供してくれる。
1つのファンドに投資するだけでそこに含まれるポートフォリオを購入できるのだから、こちらの方が費用対効果の高い分散投資と言えよう。最低手数料が1ドル(約140円)ほどのファンドもある。
3. インデックスファンドはパッシブ運用である
漫然と投資をしている人の多くは、運用にさほど興味がなく、資産を着実に増やしたいだけだ。インデックスファンドなら投資判断が必要ないので、お任せ運用を求める投資家に最適である。
4. コストと手数料が最も低い
インデックスファンドマネージャーはさほど投資判断を下さないため、リサーチャーやアナリストを雇う必要がない。こうした費用削減は低い運用手数料や経費といった形で投資家に還元される。
インデックスファンドの平均経費率は約0.49%であり、低いものでは0.03%のファンドもある。
インデックスファンドの短所
だがインデックスファンドにも、短所やリスクはある。
1. 短期的な利益には適していない
分散戦略では、個別銘柄が下落しても損失額を制限できるが、同時にパフォーマンスが好調な株式から利益を享受する機会も制限されてしまう。一部の投資家が望む大きな値上がりが、インデックスファンドで期待できないのはそのためだ。
大化けする銘柄に投機したいならば、仕手株など他のタイプの商品が良いだろう。
2. インデックスファンドは市場の影響を受けやすい
インデックスファンドは本質的にベンチマーク指数に連動する。ベンチマークが下落すれば、投資しているインデックスファンドの価値も下がる。
運用会社ができることも限られている。
「一般的にインデックスファンドのマネージャーは、相場動向や市場価格の歪み(ミスプライス)を生かすためであっても、インデックスの保有銘柄から逸脱できない」と、アクセス・ファイナンシャル・プランニング(Access Financial Planning)のトリシア・ローゼン(Tricia Rosen)代表は言う。同様に、保有銘柄が割高であっても売却できない。
3. 見かけほど分散されていない
バーチ・インベストメント・マネージメント(Birch Investment Management)のブライアン・ベルケンホフ(Brian Berkenhoff)氏は次のように言う。
S&P500種株価指数に連動するファンドに100万ドル(約1億4400万円)投資をしている人は、500銘柄を所有しているのだからうまく分散しているように見えるだろう。
だが、たいていのインデックスファンドは時価総額加重平均のため、そのうち22%(22万ドル:約3100万円)が5銘柄に集中しているのだ。
つまり、S&P500種株価指数の上位5銘柄は、アップル、マイクロソフト、アマゾン、フェイスブック、アルファベットであり、どれもハイテクセクターの企業だ。つまりこのセクターが下落すると……。
ローゼン氏によると、インデックスファンドを検討する人は、ファンドの目論見書に目を通して次の項目を確認すると良い。
ベンチマークとなるインデックス:数多くのさまざまなインデックスがあり、ファンドによっては複数のインデックスを組み合わせて利用することもある。
どのくらい厳密に指数に連動するか:真のインデックスファンドならば指数に厳密に連動するが、リターンを向上させるために指数からの逸脱をポートフォリオマネージャーに認めているファンドもある。
ファンドの手数料と経費率:通常インデックスファンドのコストは低い。だが、ポートフォリオマネージャーがよりアクティブに運用できるファンドでは、手数料が高いことがある。
まとめ
インデックスファンドは、長い目で見て着実にリターンを上げられる低リスク・低メンテナンス・低コストの投資方法のため人気がある。だが、すべての人に当てはまる万能な投資などない。インデックスファンドが自分に合うかどうかを確認するために、次の質問に自答してみよう。
求めているのは将来のための投資か?:インデックスファンドは長期投資家に最適だ。過去を振り返ると、市場は長期的には上昇するが、荒れ相場を切り抜けるには時間が必要だ。
バイ・アンド・ホールド(買い持ち)投資家か?:インデックスファンドは、銘柄選定に関心のない投資家には理想的な投資手法である。
急いで金持ちにならなくても構わないか?:長期的に見ればインデックスファンドはアクティブファンドを上回るパフォーマンスを上げるが、儲かるペースは緩やかだ。短期的にはアクティブファンドのリターンがインデックスファンドを上回ることもある。
もちろんどの投資にも多少のリスクを伴う。だが、インデックスファンドは比較的リスクが低く、自分で株式を買うよりも費用効果が高いことはたしかだ。
ジョンソン氏は言う。
投資家は個別銘柄に過度に賭けるべきではない。幅広く分散された証券バスケットに投資する方が、賢明な投資戦略なのだ。
[原文:What is an index fund? A low-cost, low-risk way to invest in the stock market]
(翻訳・中山桂、編集・長田真)