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- アメリカ連邦議会予算局の新たなレポートは、富の分配についての現状を示している。
- アメリカでは2019年に、上位10%の世帯が国の富の72%を保有していたことが分かった。
- 富の成長は一様ではなく、裕福な人々がより裕福になるのは速い。そして、貧しい人々は後れを取っている。
過去30年にわたり、アメリカの裕福な世帯はさらに裕福になり、それ以外の人々は、いまだ大不況(Great Recession)から抜け出せていない。
アメリカで上位10%に入る世帯の富は、1989年から2019年で約60兆ドル(約8700兆円)増えた。一方、下位半分の世帯は、同期間でわずか1兆ドル(約140兆円)増だった。
これは連邦議会予算局(CBO:Congressional Budget Office)の新たなレポートによるもので、1989年から2019年の30年間に、アメリカの世帯の富がどのように変化したかを調べた結果だ。上院議員のバーニー・サンダース(Bernie Sanders)が要請したこのレポートは、アメリカにおける富の分配がいかに偏っているか、そして、いかに富裕層だけが豊かになったかを示すものだ。
「過去30年の富の増加は偏り、分布の上位に集中していた」とレポートは述べている。
「分布内の上位10%の世帯全体の富の増加は、それ以外の世帯に比べ速かった」
階層別の世帯資産の増加の推移。
Chart: Madison Hoff/Insider
アメリカでは過去数十年、上流階級が財産の驚異的な成長を経験してきた一方、中流階級は以前ほど富を築くことができていない。調査で分かったのは、1943年から1973年には、一般的な世帯が富を倍にするのに要したのは約23年だったが、1973年から現在まででは100年以上になっているということだ。
一方で、20年間の富のデータを分析した不平等に関する研究では、世界的に見ても同様の格差があり、上位半分が世界の富の約98%を占めていることが分かった。これは、50年間にわたる富裕層への減税の研究の結果、富が「トリクルダウン」することはなく、むしろ不平等を悪化させたことを示している。
CBOは、世帯のさまざまな金融資産の保有量を富として測定している。そのような富の分布の格差は、大不況でさらに拡大し、アメリカの世帯を100とした場合、下から25番目の世帯と50番目の世帯は2019年になっても不況前の水準に回復していない。一方で90番目の世帯は2007年以降、回復どころか、成長している状況だ。
階層別の世帯資産の分布の推移。
Chart: Madison Hoff/Insider
実際、1989年に上位10%が占めていた富は全体の63%だった。それが2019年には72%に急増している。さらに詳しく見ると、上位1%が全体の約3分の1を占めている(1989年には4分の1弱だった)。
「アメリカにおける所得と富の不平等の深刻さは、無視することも、一掃することもできない、深い道徳的な問題だ」とサンダース議員はレポートに関する声明で述べている。
「少数の人が多くを持ち、多数の人がほとんど持っていない社会は持続できない。 地球上で最も裕福な国が、わずか1%だけでなく、すべての人にとってよい政府と経済をつくる期日はすでに過ぎている」
(翻訳:Ito Yasuko、編集:Toshihiko Inoue)