欧州メディア最大手アクセル・シュプリンガー(Axel Springer)のマティアス・デップナー最高経営責任者(CEO)。Business Insiderを運営する米Insiderも傘下に置く。
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米電気自動車大手テスラ(Tesla)最高経営責任者(CEO)のイーロン・マスクによるツイッター(Twitter)株大量保有が判明する数日前から、マティアス・デップナーをはじめとするビジネス界の著名経営者たちは、マスクにツイッターを買収するよう働きかけていたようだ。
いま著名経営者として名前を挙げたデップナーは、ドイツの大衆紙ビルト(Bild)を運営する欧州メディア最大手アクセル・シュプリンガー(Axel Springer)のCEO。本記事の発行元、米Insiderの親会社でもある。
買収提案を撤回したマスクを相手取りツイッターが起こした訴訟の裁判資料として9月29日に開示されたプライベートなメッセージのやり取りの中で、デップナーはマスクに対してツイッターを買収するよう促している。
今年3月30日のメッセージで、デップナーはまず「なぜツイッターを買わないんだ?」とマスクに問いかけた。そしてこう続けた。
「買収後は、我々(アクセル・シュプリンガー)が代わりに運営しよう。言論の自由が確保される真のプラットフォームを打ち立てるんだ。そしてそれは、民主主義への真の貢献となるはずだ」
テキストログに従えば、マスクはその数分後に「面白いアイデアだ」と返信。
デップナーはさらに「私は本気だ。実現可能だ。楽しみにしている」と返している。
アクセル・シュプリンガーの広報担当はInsiderの取材に対し、このやり取りに関して「CEOのプライベートなテキストメッセージにはコメントしない」と回答した。
デップナーは自らを民主主義の支持者であるとことあるごとに強調・公言しており、今年3月にテスラのフリーモント工場を訪ねて対談した際も、ロシアのウクライナ侵攻に関する話題の中で民主主義と開かれた社会の重要性に言及している。
なお、上記のデップナーとマスクのやり取りは、マスクがツイッター株式の9%超を保有していることが判明(4月4日)する数日前に行われたもの。
今回開示された裁判資料により、マスクはデップナー以外にも、ツイッター創業者のジャック・ドーシーや現CEOのパラグ・アグラワル、オラクルのラリー・エリソン会長ら業界の著名人たちと数週間にわたって、ツイッター経営関与の可能性について議論していたことが分かっている。
マスクは4月14日、ツイッターに対して440億ドルでの買収を提案、下旬には同社と合意に至った。ところが、7月8日にマスクは提案を突如撤回。ツイッター側は合意内容の執行を求めてデラウェア州衡平法裁判所に訴訟を起こした。
マスクは対抗訴訟を起こし、同時に裁判の延期を求めたが、同裁判所のキャサリーン・マコーミック判事は延期要求を退けている。
裁判は現在のところ、当初の予定通り10月17日に開廷する見通しだ。
(翻訳・編集:川村力)