暗闇の中で移動するアマゾンの家庭用ロボットAstro。
Amazon.com,Inc.
アマゾンは2022年9月末、2021年に発表した1000ドル(約14万4000円、1ドル=144円換算)の家庭用ロボットAstro(アストロ)の新しい機能として、猫・犬を感知する機能を公開した。ロボットがペットの様子をライブ配信したり、飼い主に写真や動画を送ったりすることができるというものだ。
アマゾンは Astroについて31件の特許をすでに取得している。その中には「人の叫び声」を利用してロボットを停止させる技術に関するものもある。
2021年12月から2022年9月の間に取得された特許は、いずれも「ロボット」または「自律型移動装置」に関するものである。特許には「Astro」と明記されておらず、アマゾンはこれらが Astroに帰属する特許なのか言及してはいないが、添付された写真はまさにAstroそのものだ。
アマゾンの特許取得済み家庭用ロボット「Astro」。
US Patent and Trademark Office
特許によると、Astroは「最小音閾値(最小の音によりオンとオフが切り替わる値)」を使ってロボットを停止させる安全機能を備えている。例えば、特許では「人の叫び声などの音を検知すると停止する」とされている。
「人の叫び声」によるロボット停止機能は安全対策として導入されたものだが、この特許を見る限り、Astroのようなロボットが恐怖心や危険を誘発することをアマゾンは分かっているようだ。とはいえ、アマゾンは家庭や公共の場をAstroの利用シーンとして想定している。
Astroは現在、アマゾンの「Day1プログラム」(供給を制限し、招待された購入者のみが製品のフィードバックをする段階)の一環として提供されている。多くの人がこのプログラムに申し込んでAstroを試したという事実は今のところ確認できていないが、2022年9月28日のアマゾンの公式ブログでは、これまでに「数十万件の申し込み」があったとしている。
同社の広報担当者は、Astroが実際に人間の叫び声でロボットを停止させる機能を備えているかどうかを含め、Insiderの質問への回答をかわして次のように述べた。
「他社と同様、当社も新技術の可能性を最大限に追求する前向きな特許出願を数多く行っています。特許は取得までに何年もかかるため、現在の開発状況が必ずしも製品やサービスに反映されているわけではありません」(広報担当者)
アマゾンはAstroを、「音声認識と顔認識によって感知した人に代わって家庭内の作業を行い、Alexaにも対応した『ホームモニタリング』ロボット」だと説明している。またAstroは「認識できない人物」が現れた場合、端末の持ち主に警告を送るという。
Amazonから米国特許商標庁に提出された図。
US Patent and Trademark Office
Astroの製品ページでは、「リマインダーの設定、買い物リストの管理、活動アラートの受信」などの機能で「大切なお年寄りを遠隔でケア」できると紹介されている。これは、Astroが「子どもや高齢者などの世話、家の世話、外部の人との連絡など」といった用途に使われることを説明した特許内容と一致する。
アマゾンはAstroを屋外用製品としては売り出していないが、特許のうち23件には屋外での使用例が記載されている。一例を挙げると「道路を移動する自律型地上車両」「空中を移動する自律型空中車両」「自律型海上車両」などだ。
Astroは、アマゾン傘下の家庭用監視カメラ会社リング(Ring)とも互換性がある。リングは据え置き型カメラに加え、自宅の周りを飛行して「あらゆる角度」から撮影できる「オールウェイズ・ホーム・カム(Always Home Cam)」も販売している。
なお、アマゾンはロボット掃除機を手がけるアイロボット(iRobot)社の買収に名乗りを上げており、現在は連邦取引委員会(FTC)による反トラスト法審査のプロセス待ちだ。
(編集・大門小百合)