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- アフターコロナのアメリカでは、家を持つことやコミュニティーに対する人々の考え方が変化している。
- 中には友人と一緒に生活を始めたり、一緒に家を購入する人もいる。
- コミュニティーを重視するZ世代が家を購入する年齢に差し掛かり始めたことで、こうしたトレンドはさらに広まりつつある。
50歳を目前に控え、Twin Cities Innovation Allianceの共同創業者でMidwest Center for School Transformationの事務局長を務めるマリカ・プフェファーコルンさんは、17歳の少年とバスルームを共有するというこれまで考えたこともなかった生活を送っている。
親しい友人とその2人の子どもたちと一緒に暮らしているからだ。友人が離婚した後、2016年からプフェファーコルンさんたちは共同生活をしている。
「これはともに子育てをし、ともに生計を立てる生活様式で、素晴らしい友情とサポートの生活様式でもあります」とプフェファーコルンさんは語った。
プフェファーコルンさんの友人はミネソタ州に4つの寝室、3つのバスルームがあるマンションを所有している。プフェファーコルンさんは家賃を払うだけでなく、光熱費の支払いや生活用品の調達、ガーデニング、家のメンテナンスなども手伝っている。プフェファーコルンさんと友人は、家の所有権をプフェファーコルンさんと半分ずつにすることも話し合っているという。
こうした生活は「困難もあるけれど、素晴らしいもの」だとプフェファーコルンさんは話している。中でも、子どもたちが成長し、1人が"孫"を連れてきたのは本当に素晴らしい経験だったという。この生活様式のおかげでプフェファーコルンさんは貯金を増やすこともできたし、プフェファーコルンさんも友人もそれぞれ経済的な恩恵を受けていると語った。
「この家族とコミュニティーにとって、自分が欠くことのできない一部であるように感じています。これは素敵なことです。コロナ禍では特に、多くの人々が孤立を経験しましたが、わたしはそうした経験をせずに済みました」
「友人にとっても、極めて重要なことでした。子育てにかけられる手が増えましたし、子どもたちが学校に戻って学位を取得するのを応援できましたから」
マリカ・プフェファーコルンさん。
Courtesy of Marika Pfefferkorn
家を持つことやコミュニティーに対する考えを変えたのは、プフェファーコルンさんだけではない。住宅価格の高い状況が続いているアメリカではこれまでになく独身者が増えていて、友人と一緒に暮らすこと —— 2010年代から台頭しているトレンドで、コロナ禍の孤立や住宅価格の高騰でさらに強まった可能性も —— を検討している人の割合も増えている。不動産分析会社Attom Data Solutionによると、ラストネームが異なる住宅の共同購入者の数は2014年から2021年で771%増えたという。
住宅ローンの金利上昇もこのトレンドを加速させた。連邦準備制度理事会(FRB)による複数回の利上げは、住宅取得能力を大幅に低下させている。アメリカ連邦住宅貸付抵当公社(フレディマック)によると、期間30年の住宅ローンの固定金利は先週6.7%と、2021年の2倍以上の水準になった。
「個人主義的な考え方から抜け出すことさえできれば、ともに働き、共有空間でともに生活することのメリットが理解できます。メンタルヘルスにとっても良いですし、地球にとっても良いことです」とTikTokのクリエイターで、不動産投資や友人とコミュニティーや家族を作ることを提唱しているシエラ・トンプソンさんはInsiderに語った。
「経済的にも道理にかなっています。十分な公共サービスの受けられないコミュニティーではなおさらです」
多くの若者の家を買ったり、学生ローンを完済したり、資産を確保するといった伝統的な夢を妨げているのは、住宅価格の高騰と経済だ。ただ、それはアメリカの核家族を形成してきた孤立主義的な規範に対する反発でもある —— アメリカの住宅や移動手段の見直しを求める声には、特にその傾向が見られる。
今は社会が非伝統的な人間関係 —— 中でも黒人やLGBTのコミュニティーに属している人々 —— を孤立させていると、トンプソンさんは指摘する。それを押し戻す1つの方法は、一緒に何かにお金を投じることだ。
「今、わたしたちが"成功"に期待するものは、大きく異なっています」とプフェファーコルンさんは言う。
「わたしにとっての成功は預金口座、定年後の収入、旅行ができること、安心や愛を感じられる家庭を持つことです」
住宅価格が高騰する中、費用を分担し、これまでとは異なる未来を描く人が増えている
フロリダ州にあるPosh Propertiesで不動産仲介をしているニック・ジョイスさん(22)は、初めて家を買う人 —— 中でもこれまで自分が家を買えるなどと考えたこともなかった人たち —— の手助けをしている。そして、ジョイスさんにも夢がある。親友と費用を折半し、一緒に住むことのできる二世帯住宅を手に入れることだ。
ニック・ジョイスさん。
Courtesy of Nick Joyce
子どもの頃、ジョイスさんたちはいつも、自分たちがそれぞれの家庭を持つようになったら隣同士で暮らしたいと話していた。そこへ一緒に家を買うというアイデアが降って来た。ジョイスさんが二世帯住宅を販売することになった時のことだ。
「ちょっと待ったという感じでした。素晴らしいアイデアだ、と。誰かに家賃を払ってルームメイトになるより、友人と一緒に二世帯住宅を買って費用を折半すればいいんだと思い付きました」とジョイスさんは語った。
「借りるよりも断然安いし、基本的には別々の生活をしながら、互いに行き来することもできます。子どもの頃にやりたいと言っていたことがその通りにできるんです」
ジョイスさんは自身のこの夢について、TikTokに投稿した。25万以上の「いいね」が付いたその動画は、100万回再生された。二世帯住宅はまだ購入できていないが、購入できるようになったらすぐにそうしたいと考えている。
「どうすれば賃貸の社会通念を打ち破ることができるのか、これまで誰も教えてくれませんでした」とジョイスさんは話している。
ジョイスさんにとって、次の夢は二世帯住宅を分け合うことだ。プフェファーコルンさんにとっては、寝室が8つある家を買って、いつかそれを地域社会の終の棲家にすることだ。
「友人の母親が自宅を売りに出しているんです。彼女は寝室が8つある家を持っています」とプフェファーコルンさんは言う。
「少し手を入れれば、リタイアした黒人女性たちのコミュニティーに最適の場所になると思います。アクセスがしやすければ、交通の便は問題になりません。これはリソースのシェアであり、年を取る中で自分たちのことは自分たちで世話をしなければならないと知ることです」
不動産仲介会社Redfinのチーフエコノミスト、ダリル・フェアウェザー(Daryl Fairweather)氏は、新型コロナウイルスのパンデミックが持ち家に対する伝統的な理想を変えたと話している。
「コロナ禍で世帯形成が増えました。つまり、より多くの人が家を手に入れているということです。人口動態の傾向も一部影響しています」とフェアウェザー氏はInsiderに語った。
「結婚する時期が遅くなり、ひとり暮らしの期間が長くなっています」
確かにRedfinが7月に行った調査の結果、多くのアメリカ人がルームメイトとの同居を検討していた。2000人の成人を対象に行われたこの調査では、どのようにして毎月の家賃を支払うつもりか尋ねていて、回答者の15%は1人以上のルームメイトと一緒に生活するつもりだと答えていた。
フェアウェザー氏はこの調査結果の背景に、経済的な不安があると話している。
「インフレと住宅価格の高騰で節約を模索する人が増え、ルームメイトを見つけることが1つの選択肢になっているのだと思います」
Z世代のジョイスさんは、経済を立て直そうとする最も若い世代にとって、非伝統的な生活は特に魅力的だと考えている。
「自分たちが好きなものをわたしたちはより重視しています。わたしたちが人生で追求したいことは(これまでの世代とは)全く違うんです。わたしたちは特定の物事を支持し、わたしたちの世代はより積極的に行動します」とジョイスさんは話している。
「それは友人や家族、あるいは自分と似ている人、自分とは違う人への感謝の気持ちを持つことと密接に関係しています」
特に数十年にわたる所得格差と住宅や大学にかかる費用の増大に影響を受けた世代としては、生活費を抑えなければならないため、共同生活は「要件を全て満たすもの」だという。
「親友と一緒に、わたしはわたしの人生を送っています。他人にお金を払うのではなく、自分の家で財産を築き、大幅に安い家賃を払います」とジョイスさんは話している。
(翻訳、編集:山口佳美)