Courtesy of Tom Brickman.
トム・ブリックマン(39)が不動産投資を始めたのは、弱冠21歳のときだった。複数世帯が入れる9万ドルの物件で、彼は1階の部屋に住んだ。以来、彼はテキサスとオハイオの両州で21の賃貸物件を持つポートフォリオを組んできた。
「他の投資家が目もくれないようなものに集中しました」とブリックマンは語る。すぐに入居できる物件よりも、修繕が必要な安い物件を購入するほうが性に合っているのだと言う。
ブリックマンのポートフォリオは、もはや9時5時の仕事をする必要がないほど成長したため、現在はすべての時間とエネルギーを不動産ポートフォリオと、ネットショップの副業に振り向けている。
「自分にとって大事なものを優先できるようになりました」とブリックマンは言う。仕事を辞めた理由は主に、自分でスケジュールを立てられるという柔軟さが気に入っているからだという。
Insiderが確認した資料によると、ブリックマンが得ている利益は保有不動産からのものだけで月に7400ドル(約108万円、1ドル=146円換算)を超える。
しかし、ここに至るまでの道のりは決して平坦ではなかった。ブリックマンは、このポートフォリオを築くのに18年かかったこと、その過程ではいくつもの手痛い失敗をしたことを繰り返し強調する。
以降では、ブリックマンが不動産投資を始めたばかりの頃に知っていればよかったと思う4つのこと、そしてこれらの失敗から学んだことを紹介する。
1. 購入の前にはきちんとした検査を
ブリックマンが手痛い経験から学んだ第一の教訓は、物件を購入する前に数百ドルを出して適切な検査をすることの大切さだ。初めて購入した物件ではそうしなかったことを後悔しているという。
「(最初の物件は)買って2カ月後には後悔していました。売り手は物件の外見だけをきれいに見せていたんです。でもいざ住んでみたら、地下室に水が溜まってしまったんです」
この問題は最終的に解決できたからいいものの、物件をきちんと検査しないというミスはもう二度と犯さないと肝に銘じたという。
「修復するにしても、完全に元通りにしようとすればその家の価値以上の費用がかかることもあります。基礎(の補修)も配管工事も大変なんです」
事前の検査に加え、その検査業者が不動産業者と手を結んでいないかどうかも重要なポイントだと指摘する。利益相反を避けるために、基本的にはその家の販売に関わっている不動産業者とは関係ない検査業者を探すことをブリックマンは勧める。
2. 借金を増やしすぎない
ブリックマンは2021年に5つも物件を増やしており、本人も「大きな決断だった」と言う。なお、5軒はすべて他の物件の売却益で購入し、住宅ローンは組まなかった。現在所有する21の物件のなかで、ローンを支払っているのは2つのみだという。
「私にとってはこれくらいがちょうどいいんです。新型コロナウイルスが流行り始めた当初もこの2つの住宅ローンを抱えていたのですが、『大丈夫、3人から家賃を集めればローンは払える』と思っていたのを覚えています。300戸も抱えているような不動産オーナーに比べれば事業の成長スピードは遅いですが、私にはそれでいいんです」
多額のローンをどんどん組んで物件を増やしているという他の不動産投資家の記事を読むと、ブリックマンは他人事ながら不安に感じずにはいられない。もちろんこの業界には、自分より多くの純資産を持ち、そういうやり方をする余裕のある投資家もいることは承知している。だが、もし自分だったらと考えると背筋が寒くなるのだ。
またポートフォリオが大きくなるにつれ、特定の物件で手を組もうと声をかけてくる投資家が増えたという。
「21の物件のうちパートナーと共同所有している2つは、管理が特に面倒な物件でもあります。正直、これ以上多くのパートナーと組むのは気が進みませんね」
ちなみに、これまでで最も損をしたのは、3軒目に買ったオハイオ州クリーブランドの8万5000ドルの物件だったそうだ。
「購入したのは2005年のことでしたが、2007年には価値が半分になってしまったんです」とブリックマンは言う。10年後に売却したときも6万3000ドルにしかならなかったという。
また、購入時に頭金の支払いを求められなかったことも、今にして思えば「そもそもビジネス的にも間違った購入」だったと振り返る。
「頭金を入れなかったせいで、毎月重いローン返済に追われました。信用情報に傷を付けたくなかったので、もちろん帳簿から消えるまで払い続けましたけど」
この物件には10年以上にわたって「消耗」させられ、会計士とこの物件の話をすることさえ嫌だったという。損は出したが、売却してようやく厄介払いができてよかったとブリックマンは言う。
「売却時には入居者に退去してもらわなければいけなくて。こんなお願いをしたのは、18年間で3回だけですよ。最初から最後までケチが付いた物件だったので、売却したことに後悔はありません」
3. 家賃は小切手で受け取らない
ブリックマンは入居者から家賃を受け取る際に、不渡り小切手や手数料の問題で失敗に直面したこともあった。
「ある入居者の小切手が不渡りになったことが3回あります。本当なら初回で気づいて、彼女に現金か郵便為替で払うように言うべきでした」
結果として、ブリックマンは家賃を回収し損ねたばかりか、不渡りになった小切手を現金化するつど銀行から30ドルの手数料を請求されたという。
ブリックマンは現在、家賃の支払い方法を限定している。不動産賃貸を始めた当初はモバイル決済など存在しなかったが、現在では家賃を受け取る際に非常に役立っているという。
「現金払いの入居者は2件だけで、ほとんどはデジタル決済ですね」
4. 入居者とプライベートな関係を持たない
ブリックマンは、入居者との関係性はポジティブでありながらも、ビジネスライクにとどめることも大切だと言う。
「入居者は友達じゃありませんから。あくまで取引先として接するべきです」
最初の物件を購入したときは、こんな問題が起きた。2階の入居者が部屋でマリファナを大量に吸っていたせいで、階下にまでニオイがしみ出し、ブリックマンの衣類までマリファナ臭くなってしまったのだ。
「本人が外で吸う分には全然構わなかったんですが、私の服までやられてさすがに頭にきましたね。こういうのを放っておくと人は何度も同じことを繰り返して、問題が徐々に大きくなっていくんです」
この教訓を得るまでには数年を要したが、現在は線引きをしてプロフェッショナルな関係を保つことで、入居者とはまるでお得意様のような関係を築けているという。
「すてきな入居者の方がいるんです。現金払いの方なんですが、畑で採れた折々の旬の野菜をくれるんですよ」
(編集・野田翔)