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Googleのクラウドゲーミング「Stadia」の致命的な失策……なぜYouTubeという最強カードを切らなかったか

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Cody Engel / Shutterstock

グーグルは、2019年にスタートしたクラウドゲーミング・サービス「Google Stadia」(グーグル ステーディア。以下、Stadia)を、2023年1月に終了する、と発表した

サービス終了が伝えられると、ゲーム業界関係者から聞こえてきたのは「残念」という声以上に「やっぱり」という声だった。

振り返れば、Stadiaには致命的な戦略ミスがあったとしか思えないのだ。

「Stadia」とはどんなサービスだったのか

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2019年、サンフランシスコで開催されたゲーム業界向けカンファレンス「GDC」の基調講演で話す、フィル・ハリソン副社長。

REUTERS/Stephen Lam

まず、Stadiaがどんなサービスだったかを解説しよう。

Stadiaはいわゆる「クラウドゲーミング」と呼ばれるタイプのサービスだ。

手元の機器でゲームソフトが動作する家庭用ゲーム機などと違い、クラウドゲーミングでは特別な機器を必要としない。

ゲームの実行そのものは、ネットの向こう側(クラウド側)にある「ゲームサーバー」で行われるからだ。

ユーザーは、手元のPCに接続したコントローラーを使い、映像と音声はネットを介して手元の機器に送られる。ちょうど、Zoomごしにゲームをプレイする様子をイメージするとわかりやすいかもしれない。

一定速度の安定した通信が行えるネット回線は必要になるが、ゲームをプレイする端末側に、高性能な性能は必要なくなる。

別の言い方をすれば、クラウドゲーミングとは「家庭用ゲーム機を買う必要がなくなるサービス」なのだ。

クラウドゲーミングでは誰も「大成功」していない

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プレイする機器を選ばないクラウドゲーミングの特徴を生かし、マルチプラットフォームで遊べることも訴求していた。

出典:Google

ゲーム機を買わなくてもリアルなゲームが遊べるなら、クラウドゲーミングは非常に魅力的にも思える。なぜStadiaがうまく行かなかったのが不思議に感じるほどだ。

だが、その認識は正しくない。実際には、Stadia「も」成功しなかった、というのが正しい。

クラウドゲーミングという概念は、実は古くからある。発想は1990年代後半からあり、2000年代に入ると複数の企業がサービスを始めている。

ゲーム関連企業としては、2013年にはNVIDIAが「GeForce Now」を、2014年にはソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)が「PlayStation Now」(注)を、2018年にはマイクロソフトが「Xbox Cloud Gaming」をスタートして、現在もサービスを続けている。

(編注:サービス開始当時はソニー・コンピュータエンタテインメント。2022年6月に「PlayStation Plus」にサービス統合

しかしどのサービスも「家庭用ゲーム機やゲーミングPCを不要にする」ことはできていない。もちろん、ゲーム機プラットフォーマーが運営するサービスだから、という部分は大きな要素だ。

ただ、そもそもゲーム機が必要になるほどの爆発力があるものなら、企業側もサービスの柱として高収益を期待するだろう。しかし、現状はそこまでの規模ではなく、特にSIEとマイクロソフトは、クラウドゲーミング単独でなく、サブスクリプション・サービスの一部としてビジネス化している状況にある。

「無料プラン」まで用意したがStadiaは失敗した

なぜクラウドゲーミングはビジネス化しづらいのか。

ゲームファンの中には、クラウドゲーミング特有の、「操作の遅延」と「接続の安定性」が問題だったのではないか、と指摘する人は多いかもしれない。

ただ、筆者はこの点は、実は決定的な問題ではないと思っている。

実際、ゲームが遊べなくなるほどの遅延は、(ゲームの種類にもよるが)そうそう頻繁に起きない。また、Stadiaも遅延対策などにかなりの技術的な配慮をしていた。筆者もアメリカでプレイしたことがあるが、そこまで大きな遅延や不安定さを感じたわけではなかった。

むしろ大きな問題は、「どこまでやっても、目の前にあるゲーム機やゲーミングPCより良い環境になることはない」という点にあるのではないか。

ゲームの体験にこだわるゲームファンは、「体験が劣る可能性がある」サービスにお金を払うだろうか?

Stadiaは2019年11月にスタートしたが、その際には、月額9.99ドルの「Stadia Pro」のみが提供された。2020年には無料の「Stadia Base」が提供されている。

ただし、大きな差はゲームプレイ時の「画質」で、結局ゲームをするにはゲーム自体の購入が必要な場合もあった。しかも、Stadiaでしかプレイできないゲームはなく、プレイ体験も家庭用ゲーム機に劣る。。「だったらゲーム機でプレイすればいいのでは」と、ゲームファンは考えてしまったわけだ。

一方、ゲーム機プラットフォーマーであるソニーやマイクロソフトは、クラウドゲーミングを、ネットサービスの「付帯物」に位置付けている。現時点では、毎月料金を払うような濃いゲームファンをクラウドゲーミングだけでは満足させられないと考えているためだろう。

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