10月3日、クレディ・スイスの株価が急落した。
Paulo Whitaker/Reuters
- クレディ・スイスの株価は、債務不履行の懸念が強まった10月3日に急落した。
- 同行は、財務の健全性に対する広範な懸念を払拭するために努力している。
- クレディ・スイスは今、事業の再構築が困難で、かなりの費用がかかると気づくかもしれない。
クレディ・スイスは財務の健全性に対する懸念を払拭しようとしている。しかし、一部の投資家は、このスイスの銀行がリーマン・ブラザーズのように破綻し、世界の金融システムを崩壊させる危険性があるとまで指摘している。ここでは、その実態を詳しく見てみよう。
市場は緊張感に包まれている
ここ数カ月、インフレの激化、金利の高騰、世界的な景気後退の兆候、資産価格の下落などが投資家を怯えさせ、次に何が起こるのかを心配させている。
イギリスの新政権も先週、減税と歳出のプログラムを発表して市場を混乱させ、インフレ悪化とさらなる利上げへの懸念を煽った。このニュースにより、英ポンドは対米ドルで史上最安値を更新し、イギリス政府の借入コストは急上昇し、イングランド銀行による異例の介入を促した。この反動で、リズ・トラス(Liz Truss)首相とそのチームは2022年10月3日、予定していた所得税の最高税率撤廃を取りやめることを発表した。
これだけの火種があるのだから、大きな火災が起こっても不思議ではない。今回のケースでは、クレディ・スイスのウルリッヒ・ケルナー(Ulrich Koerner)CEOは9月30日のメモで、10月27日の経営再建計画の発表を前にして、今は同行にとって「正念場」であり、市場のボラティリティがさらに高まることを予期すべきであると職員に伝えた。
このメモは人々を安心させるどころか、同行が破綻して世界金融システムの崩壊を引き起こすという荒唐無稽な予測でTwitterやRedditを熱狂させた。クレディ・スイスのある大口投資家は、Foxのレポーターに対し、同行の投資部門は「大惨事」が起こっていて、CDS(クレジット・デフォルト・スワップ)は「リーマン・ショックの瞬間が再び訪れようとしている」かのように取り引きされていると述べた。
フィナンシャル・タイムズ紙は、同行幹部が週末に大口顧客、取引先、投資家に流動性と資本の状況について安心させるために説明を急いだと報じている。また、クレディ・スイスのメモが市場の火種となった後、イングランド銀行はスイス当局と連絡を取ったとテレグラフ紙は報じている。
クレディ・スイスの株価は急落
クレディ・スイスの株価は10月3日の朝に12%も下落し、今年の下落率は60%になった。さらに、投資家が企業のデフォルトに対する保険としてよく購入する5年物のCDS(クレジット・デフォルト・スワップ)のスプレッドは、今年初めの約55bpから350bpまで上昇したとフィナンシャル・タイムズは報じている。このスプレッド拡大は、投資家が銀行の債務不履行の可能性を高く見ていることを示唆している。
クレディ・スイスが再建計画の資金調達のために株式の発行を決定した場合、既存株主に対して大きな希薄化をもたらすことになる。CDSスプレッドの拡大は、銀行の信用力に対する懸念の高まりを反映しているため、借入コストの上昇につながる可能性も高い。
ウォール・ストリート・ジャーナルが報じたところによると、同行は週末に職員向けの説明資料を更新し、1000億ドルの資本バッファーがあり、自己資本比率は今年末まで13%から14%を維持する見込みだと説明した。
約1兆1000億ドルの資産を運用するクレディ・スイスは、近年、いくつかの大失敗に見舞われている。2021年にはイギリスの金融会社、グリーンシル・キャピタル経営破綻に巻き込まれ、アルケゴス・キャピタル・マネジメントの破綻により50億ドルの損害を被った。
クレディ・スイスが破綻して2008年の金融危機が繰り返されると考える理由はまだない。しかし、すでに動揺している投資家が同行の短期的な見通しを深く憂慮していることは明らかであり、同社はその不安を解消することはできていない。
クレディ・スイスはInsiderからのコメント要請にまだ応じていない。
(翻訳・編集:Toshihiko Inoue)