企業の「気候変動リスク」を丸裸にする。スタンフォード大ベンチャーが日本で新サービスを発表

9月末、静岡県を中心に深刻な被害をもたらした台風15号。

台風をはじめ、洪水や地震など、日本は「災害大国」だ。どこに住むのかを決めるにしても、自然災害のリスクを予測しておかなければ、生命や財産を左右するような事態になりかねない。

これは、企業の事業活動を継続する上でも重要な視点だ。

デジタルツインで企業の災害リスクを可視化

One Concern Domino のサービスイメージ。洪水が発生した場合に、周辺のインフラへの影響を可視化している。

One Concern Domino のサービスイメージ。洪水が発生した場合に、周辺のインフラへの影響を可視化している。

提供:ワン・コンサーン

10月4日、スタンフォード大学発スタートアップの「One Concern(ワン・コンサーン)」が、自然災害などによって企業の事業運営に生じるリスクを可視化する新サービスの提供を日本で開始した。

気候変動によって生じるリスクを可視化し、それに備えることは、いまや世界中の企業に求められていることだ。日本でもプライム市場の上場企業に対して、TCFD(※)に準拠した気候変動の影響で生じる事業リスクなどに関する情報開示が求められている。

※TCFDとは:気候関連財務情報開示タスクフォース。G20の要請を受けて金融安定理事会(FSB)により設置された、情報開示に関する国際的な枠組み。

財務諸表だけを見ていては分からない、気候変動による企業の潜在的リスクを見える化することは、投資家の信頼を得るためにも必須となっているのだ。

ただ、いざリスクを考慮しようにも、これまで企業ができることと言えばハザードマップなどからリスクを評価することぐらいだった。科学的に妥当性のある「評価」は多くの企業にとっての課題だった。

今回、ワン・コンサーンが発表した「DNA」は、国内だけも3900万の建物、5000の変電所、11万66000の道路に54の空港といったインフラデータや、機械学習で補完したデータを元に仮想空間上に現実世界の企業活動を再現する「デジタルツイン」を構築。自然災害や異常気象などの災害が直接企業に与える影響を可視化する。

他方、「Domino」では、電力網、道路、空港などビジネスインフラに与える影響の可視化することで、企業が抱えている隠れた(二次的な)自然災害リスクの発見や対策に役立てることができるという。

ワン・コンサーンの共同創業者兼最高経営責任者(CEO)であるアマッド・ワニ氏は、

「物理的な気候変動リスクを測定して、開示するという動きは世界的に広がっています。One Concernは、初めて気候変動などに関する物理的リスクと財務的リスクを関連付け、マーケットにおける財務の透明性を高めることを可能にしました。私たちは、データに基づいて、一貫性があり、比較可能な指標を作成しています。また、レジリエンスを測定するための事実上の世界基準となり、レジリエンス・ソリューションの新しい扉を開いたのです」

と日本版のサービス提供開始に伴いメッセージを寄せている。

重要なのは直接リスクよりも「依存リスク」

紫:リスクありのロケーションの数。グレー:リスクなしのロケーションの数。

Dominoのサービスイメージ。紫はリスクありのロケーションの数。グレーはリスクなしのロケーションの数。

提供:ワン・コンサーン社

これまでも自然災害の予測データは存在していた。

ただ、あくまでも「この地域は浸水する」「この地域で地震が起きやすい」といった直接リスクのみの場合が多かった。一方、「『DNA』と『Domino』は、外部要因に起因する『依存リスク』を可視化する点が特徴だ」とワン・コンサーン日本法人代表の秋元比斗志氏は記者会見で強調した。

例えば、地震が発生した時には、建物が地震の揺れに耐えたとしても、周辺の発電所が被害を受けて電気が使えなくなったり、水道やガスが使えなくなったりした場合、その建物で事業活動を継続することは不可能となる。

単に自分の家や会社が無事だったからといって、「災害を乗り切った」とは言えない。ワン・コンサーンが提供するサービスでは、こうした災害発生時にインフラなどの被害によって間接的に生じるリスクを可視化できる。

秋元氏によると、日本ではまず洪水時のリスクを可視化するサービスが提供され、年内に地震と台風にも対応を進めていく予定だという。

料金の詳細や売上見込については非公表だが、サブスクリプションモデルを採用しているといい、現時点で複数の事業者と導入の話し合いが進んでいる。

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