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「贈賄が疑われる行為だった」KADOKAWA、1時間半の記者会見で判明した10のポイント

記者会見の様子

記者会見で発言するKADOKAWA社長の夏野剛氏。

撮影:横山耕太郎

出版大手KADOKAWA前会長の角川歴彦被告(79)ら3人が東京五輪・パラリンピック大会のスポンサー選定で便宜を受けた見返りに大会委員会の元理事に賄賂を提供していた疑いで逮捕・起訴されたことを受けて、同社は10月5日に記者会見を開いた。

KADOKAWAの夏野剛社長は会見冒頭で、「関係する全ての皆さまの当社への信頼を裏切ることになってしまい、多大なるご心配とご迷惑をかけていることを深くお詫び申し上げます」「出場されたアスリートの皆さん、ボランティアの皆さん、全ての関係者の皆さまにつきましても深くお詫び申し上げます」と謝罪した。

また、夏野氏は今回の贈収賄事件について「(元理事の知人が代表のコンサルタント会社との)契約による支払いは、贈賄行為と評価されるうる疑わしい行為であった」と述べた。会見には弁護士で構成された調査チームも登壇した。

角川被告をめぐっては、大会組織委員会元理事の高橋治之被告に東京五輪・パラリンピック大会のスポンサー契約などで便宜を受けた謝礼として6900万円の賄賂を提供していた贈賄の疑いがあるとして、東京地検特捜部が10月4日に起訴している。

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Business Insider Japan

角川被告は10月4日に会長職を辞任する意向を発表。KADOKAWAは翌5日、角川被告の会長・執行役員辞任を承認した。

組織としてのKADOKAWAは、今回の贈収賄事件をどう捉えているのか。社内のガバナンス体制はどうなるのか。

当初1時間の予定だった会見は30分延長され、1時間半に及んだ。会見内容を10のポイントで整理する。



1. 大会スポンサーの契約後にコンサル料を分割で支払っていた。

記者会見の様子

会見の冒頭で頭を下げる夏野氏。

撮影:横山耕太郎

外部弁護士による調査チームによると、今回の贈収賄事件を受けて「のべ20数人に対し、合計数十時間のヒアリング」を実施したほか、約17万件のメールなどの精査したという。

その結果、KADOKAWAは「コモンズ2(※)」とのコンサルティング業務委託契約を大会組織委とのスポンサー契約後の2019年6月17日に締結。コモンズ2に対し、7665万円(消費税込み)を「350万円ずつなどの分割」で支払った事実を確認したという。

【※編注】高橋元理事の知人だった深見和政被告(受託収賄罪で起訴、再逮捕)が経営する会社。

調査チームの國廣正弁護士は、あえてスポンサー契約後に五輪とは切り離した将来に向けてのコンサルタントという体裁をとって、コンサル料を分割して振り込んでいる点を「作為」と表現。「不適切で上場企業として疑いを持たれる契約は認められることではない」とした。

2. 「法務部門が贈賄罪の可能性を伝えていた」

高橋被告側との契約が贈賄罪に該当する可能性について、調査チームは「KADOKAWAの法務部門から事前に指摘されていたにも関わらず、契約が締結され、実行されていた」という事実を認めた。

3.「コンサル」の成果物見当たらず

記者会見の様子

調査チームの國廣正弁護士

撮影:横山耕太郎

高橋氏側からコンサルの成果物として少数部数の冊子が納品されていたが、調査チームは「7000万円の価値がある成果物とは認め難い」(國廣弁護士)との認識を示した。

4. 調査チーム「贈賄行為と評価されうる疑わしい行為」

調査チームは、改めて「(高橋被告側との)契約による支払いは、贈賄行為と評価されうる疑わしい行為だった」と指摘。

國廣弁護士は、「コンプライアンス上、あるいはコーポレートガバナンス上、極めて問題の大きいものであった」と判断したと説明した。

5. 夏野社長「当時は社長職ではない。当時のことはわからない」

贈賄行為が疑われるKADOKAWAによる高橋被告側への支払いについて、夏野氏は「当時は社長職ではなく、検討事項についても存じ上げない」という趣旨の発言を繰り返し述べた。

違法性を指摘されながらも契約した事実について、夏野氏は「指摘があったのにも関わらず契約したことについては、担当者・決裁者が必然性を感じたのではないかと推測している」とした。

夏野氏は東京オリンピック・パラリンピック大会組織委員会の参与を務めていたが、「本件に関しては一切関わっていません」「私自身も、なんで相談に来ないのかなと思ってたくらい何も関わっていませんでした」と強調した。

6. ガバナンス検証委員会を設置

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撮影:横山耕太郎

KADOKAWAは会見の中で、利害関係のない外部の専門家らで構成する「ガバナンス検証委員会」を10月5日付で設置したと発表。

今回の贈収賄事件を受けて、事実関係の調査や内部統制に関する原因の究明、再発防止を提言することが目的という。

7. 夏野氏、角川被告は「偉大な経営者」。ワンマン経営は否定

角川被告の人物像について、夏野氏は「業界のリーダーであり、偉大な経営者。代表権のない会長職として活躍され、会社は頼りにしていた」と述べた。

一方で、角川被告のワンマン経営などと報道されていることについては、会社の事業領域が多岐にわたっていることから、「全てのそんな事業に関して、会長のおうかがいを立てることはない」と否定した。

また夏野氏は「元会長が非常に関心を持っている(事業)範囲もあった」と発言。「非常に関心を持っている範囲」にオリンピック事業が含まれるのかについては、明言しなかった。

8. 角川被告は取締役に留まる「お気持ちを考えると、そんなに問題ないのかな」

記者会見の様子

撮影:横山耕太郎

記者会見では、会長を辞任した角川被告と、副会長を辞任した松原眞樹氏が取締役に残ることが明らかになった。

これについて夏野氏は「本人の辞意があるか、株主総会で解任するしか(職を解くことは)できない」と説明した。

一方で夏野氏は、角川被告らが役員であることについては「当時の意思決定プロセスに問題があるとすれば、むしろ一緒に『ここに問題があったんだ』と指摘していただいた方がいい」と発言。

また「元会長に関しては(嫌疑を)否認されてるとも聞いています。ご自分としては役職を辞めることも、もしかしたら不本意なのかもしれないというお気持ちを考えると、取締役として残っていただいていても、そんなに問題はないのかなと思っております」とした。

9. 角川被告の社員向けメッセージを送付

KADOKAWAは10月4日、社内の役職員に対して角川被告からのメッセージを伝えている。

Business Insider Japanが独自入手した社内向けメッセージには、「贈賄との指摘を受けたことは夢にも思わぬ驚きであり、もとよりそのような認識はありませんでした」「私は事実を全面的に争い、検察と徹底的に闘う所存であります」といった表現があった。

なぜ、会長職を辞した角川被告のメッセージを従業員に伝えたのか。

Business Insider Japanの質問に対し、夏野氏は「元会長を慕っている社員がたくさんいることも事実としてある。弁護人を通じて、元会長から社員のメッセージを届けてほしいと依頼があった以上、ちゃんと社員に届けなきゃいけないということで届けた」と説明。

また、メッセージには「きちんと会社の意見ではありませんという注釈をつけましたし、プレスの方にも同時に出されていた内容とほぼ同一だったので会社として妨げる理由はないと判断した」と述べた。

Business Insider Japanが入手した社員向けのメッセージは以下の通り。

 私は、今般、当社から私を含む3名が逮捕・起訴され、当社の業務運営に重大な支障をきたしたことと、世間をお騒がせしたことの責任を取る意味で、当社会長の職を辞任することとしました。かかる事態は、KADOKAWAにとって大変な試練であり、これを乗り越えていくには、新体制で臨む必要があると思います。

 当社がオリンピック・パラリンピックの事業にかかわったのは、半世紀に一度の大きな社会貢献をしたかったことにあり、その中で、今般、高橋氏に対する贈賄との指摘を受けたことは夢にも思わぬ驚きであり、もとよりそのような認識はありませんでした。

 したがいまして、私は事実を全面的に争い、検察と徹底的に闘う所存でありますので、この点、何卒、各位のご理解を頂戴したく存じます。

 なお、本日は、簡単にご報告させていただきましたが、いずれ改めてきちんとご説明させて頂くつもりです。

 令和4年10月4日 角川歴彦

10. 夏野社長、政府の規制改革推進会議の「議長職」辞任表明

夏野氏は、自身が務める内閣府の規制改革推進会議の議長職について「辞任をさせていただく」と表明。理由として「会社の信頼回復に専念するため」とした。

(文・横山耕太郎

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