サステナブル投資は儲かるのか? 否定的な日本と肯定的な海外、個人投資家の意識に格差

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サステナブル投資を否定的に捉える投資マインドは、日本の今後にどのような影響を及ぼすのだろうか。

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サステナブル投資(ファンド)は儲けが見込めない——。

そんな見方が、日本人をサステナブル投資から遠ざける要因になっていることが、イギリスの投資運用会社シュローダーの調査で分かった。

同社は毎年、個人投資家を対象に「シュローダー・グローバル投資家意識調査」を実施。今年は2022年2〜4月、世界33カ国・地域の個人投資家約2万3000人(うち日本は1000人)を対象に行った。

9月28日に公表した今回の調査結果は、個人投資家の影響力に着目した発表に続く第2弾で、サステナブル投資をテーマに分析している。

「高いリターン見込めない」と否定的な日本人

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【図1】サステナブル投資に魅力を感じる理由と感じない理由(複数回答可)。

出所:シュローダー・インベスト・マネジメント

今回の調査によると、サステナブル投資の魅力について、世界全体で最も多かったのは「環境に対するプラスの影響」(52%)。さらに「社会に対するプラスの影響」(43%)、「高いリターン」(36%)と続いた。

一方、魅力を感じない理由としては、世界全体の11%が「高いリターンを見込めないから」と答えている。注目は、その3倍に相当する36%の日本人が「高いリターンを見込めないから魅力を感じない」と回答していることだ。

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【図2】投資したいサステナブルファンド(複数回答可)。

出所:シュローダー・インベスト・マネジメント

投資したいサステナブルファンドに関する回答(【図2】)を見ると、世界、日本ともサステナビリティとリターンの両立を目指すファンドが最も人気が高く、どちらもリターンを重視していることには変わりない。

ただ、環境・社会に対するプラスの影響が期待できるという見方でサステナブル投資を肯定的に捉える世界に比べ、日本では儲けが期待できないからという理由で否定的に捉える傾向が強いことが見て取れる。

日本の投資家に関する同様の傾向は、フィデリティ投信が2022年6月に発表した調査でも指摘されていたが、今回のシュローダーの調査でサステナブル投資の捉え方が日本と海外で大きく異なることが浮き彫りになった。

「サステナ投資していない」日本は世界の6倍

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【図3】運用資産全体に占めるサステナブル投資の割合。

出所:シュローダー・インベスト・マネジメント

そうした世界と日本の意識の差は、当然ながら実際の投資行動にも影響。サステナブル投資を全く行っていない個人投資家は、世界全体ではわずか6%なのに対し、日本ではその約6倍の35%に上った。

また、運用資産全体の1割以上をサステナブル投資に回している個人投資家は、世界では73%を占める一方、日本はその約半分の38%。5割以上を振り向けている投資家が16%もいる世界に対し、日本は5%に過ぎなかった。

海外投資家は透明性を重視

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【図4】個人投資家がサステナブル投資を躊躇する理由トップ3(複数回答可)。

出所:シュローダー・インベスト・マネジメント

サステナブル投資を躊躇する要因に関しても、日本と世界の意識に差が見られた(【図3】)。

世界では「サステナブル投資が及ぼす影響に関する透明性・データが不足」(51%)が最も多く、次いで「明確で合意されたサステナブル投資の定義がないこと」(45%)、「パフォーマンス(運用成績)に対する懸念」(37%)が上位を占めた。

トップ3は日本も同じ項目だったが、日本ではパフォーマンスへの懸念が最も多く(38%)、次いで透明性・データの不足(34%)、サステナブル投資の定義がないこと(30%)の順となった。

この結果からは、海外の個人投資家はサステナブル投資に対して透明性を求める傾向が強いのに対し、日本は運用成績、つまり儲けをより重視していることが分かる。

「金融リテラシー」向上がカギ

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【図5】投資知識レベルとサステナビリティ投資の関係(世界、投資知識レベル別)。

出所:シュローダー・インベスト・マネジメント

日本では、投資などの金融に関する知識・判断力といういわゆる「金融リテラシー」が海外に比べて浸透しておらず、それが個人投資家の裾野が広がらない大きな要因にもなっている。

今回のシュローダーの調査では、投資知識レベルの高い投資家ほど、社会課題を解決する手段としてのサステナブル投資に期待し、また長期的な収益を確保する方法として捉える傾向が明らかになった(【図5】)。

サステナブル投資に限らず、日本ではそもそも、相場変動を利用して短期的に収益を得ようとする「投機」を「投資」だと誤解されていることが問題だという指摘もある。

その意味では、投資とは、短期的ではなく長期的に保有・運用することで企業活動や新しい社会・経済のムーブメントを後押しする行為だという基礎知識の浸透も、サステナブル投資への理解を高める重要なカギになると言えそうだ。

(文・湯田陽子


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