電通グループが実装を進める「グロースメカニズム」が、クライアント企業の成長サイクルを加速する

国内事業を担う約160社で構成される国内電通グループ。クライアント企業の事業課題解決だけでなくその先にある社会の持続的な発展までを視野に入れた統合的なソリューションを提供している。重視しているのは、事業構想・戦略設計で終わらず、その実行と運用までを含めてクライアント企業のビジネスに寄り添う姿勢だ。

従来、企業の課題解決は、課題を細分化して個々の問題を深掘りするアプローチで対応することが多かった。だが、環境変化が激しい時代、こうした手法では抜本的な解決が難しくなっている。

0→1でビジネスを創造するだけに留まらず、立ち上げたビジネスについて1→10→100の成長にまで伴走するには何が必要か。その観点から生まれたのが「グロースメカニズム」という発想である。

大規模IDとデータサイエンスを武器にマーケティング高度化を推進する「データマーケティングセンター」で、企業の事業グロースを支援している3人の話から、その要諦を紐解いた。

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「グロースメカニズム」を解明しクライアント企業の事業成長に伴走し続ける

宍戸氏の写真

宍戸潤岳(ししど・ひろたけ)氏/電通 データマーケティングセンター PDM推進6部。主にマーケティング領域でのコミュニケーションプランニングに長く従事し、統合ソリューション局を経て現職。統合的な顧客体験設計を絵に描いた餅にせず、データ基点でマネジメントするアプローチでクライアント企業ビジネスを支援。

クライアント企業の事業成長を支援するにあたっては、どのようなアクションが発生するのだろうか。宍戸潤岳氏によると、大きく「業界全体のグロースメカニズム解明」「クライアント企業固有の事業課題組み込み」「グロースサイクルの設計とマネジメント」の3つが要件になるという。

「グロースメカニズム解明は、クライアント企業が属する業界全体を俯瞰したマクロな視点で行います。業界全体の成長を左右するルールを「ID×行動データ」−−つまり、誰の・どのような体験・行動を促進すべきか−−といった視点で構造化するのです。ここを外したまま個別製品やサービスのマーケティングを行っても意味がありません。そして、業界全体のグロースメカニズムとクライアント企業固有の事業課題の突合から導かれる最適解をもとに、グロースサイクルの設計・実装、そしてその継続的なマネジメントまでをスコープとしてクライアント企業に伴走していきます」(宍戸氏)

重要なのは、最後の「クライアント企業に伴走」という言葉だ。宍戸氏は、「クライアント企業の事業成長にコミットするとは、設計図の提案だけでなくその実行とグロースサイクルのマネジメントに伴走し、最後までやり遂げる覚悟を意味します」と力を込める。

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小高雄一(こだか・ゆういち)氏/電通 データマーケティングセンターPDM推進2部。データドリブンな意思決定支援や、デジタルを組み合わせた新たな顧客体験および業務設計など、経営や事業課題に対するコンサルティングに従事。また、大規模ID×行動データでの機械学習アルゴリズムを活用した顧客マネジメントの実装による事業グロース支援や、データを活用した新たな収益創出の支援など、マーケティングサイエンスを武器としながら、様々な事業課題の解決に取り組んでいる。

小高雄一氏も「大規模ID×行動データを活用し、戦略から実行までをシームレスに連携した動的な顧客マネジメントを実現できることが我々の強みです。戦略と実行をシームレスに繋げることで、市場やお客様の実態を解像度高く捉えることができ、事業成長に貢献する戦略が立てられ、実行においても高いパフォーマンスが得られます。当初は、デジタルマーケティングと相性の良い業種で進んできた取り組みですが、ここ数年では、データ環境が整備されてきたこともあり、業種を問わずグロースメカニズムを構造化し、実装することが可能になってきています」と続けた。

数年にわたって実績を上げてきた取り組みを、グロースメカニズムとして形式知化するにあたって中心となるのは、大規模IDを用いた「グロースセグメント設定」と行動データ分析による「グロースKPI管理」だ。

「まず、“短期のセールス”よりも“持続的なグロース”という観点から、有望セグメントを設定します。次に、そのセグメントの行動・体験データからどのような変数が持続的事業成長(例えばLTVの向上)に影響度が高いのかを明らかにします。グロースにつながるセグメントとKPIを定めることで、おおよその成長試算も可能になります」(宍戸氏)

マーケティングリサーチを手掛ける電通マクロミルインサイトからジョインしてグロースメカニズムの解明に取り組んでいる松村佳織氏は、グロース初期仮説構築を実施したいくつかの業界事例を挙げた。

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松村佳織(まつむら・かおり)氏/電通マクロミルインサイト(現在、電通データマーケティングセンター PDM推進7部に出向中)。17年より電通マクロミルインサイトでマーケティングリサーチ業務に従事し、クライアント企業のコミュニケーションPDCAをサポート。特に、TVCMやWeb広告、サイト来訪ログなどの行動データとアスキング調査を組み合わせたリサーチプランニングを得意としている。22年5月よりデータマーケティングセンターに出向。

「例えば飲食業界では、約3,000万ID(290万人)の位置情報データを用いて来訪店舗や頻度・来訪時間帯などの行動分析を行い、コロナ禍からの回復が早いセグメントを特定しました。そして、それらのIDと調査データを連携させて、来店前後の様々な行動・体験データを取得し、来店の継続化に影響度の高いいくつかの行動・体験パターンをKPIとして明らかにしました。

また、ダイレクト型保険業界については、契約ページ遷移に至るまでにその人(ID)がとっている様々な行動データを分析しました。その結果、検討段階の獲得効率向上に重きを置く従来の定説とは異なり、日常期(検討開始前)における特定の行動パターンを軸としたシンプルなグロースメカニズムを明らかにすることができました」(松村氏)

これ以外にも、飲料業界・家電業界・ゲーム業界・金融業界など、様々な業種において「ID(人)×行動データ(体験)」による成長ルール解明が進んでいるという。そして、それぞれの業界のグロースメカニズムを基にクライアント企業へ統合グロース戦略を提供するのがデータマーケティングセンターのミッションだと3人は語った。

データを元にマーケティングの暗黙知を形式知化するグロースメカニズム

電通グループが、複数のソリューションを有機的に統合し、全ての事業の中心に置く「IGS(Integrated Growth Solutions:統合成長ソリューション)」。

複雑化・高度化する企業課題から本質的な課題を見極め、その解決を提案する統合的なソリューションだ。電通といえば広告やマーケティングを想像するかもしれないが、より広い領域で企業の事業成長をサポートし、社会全体の成長に貢献するという。

宍戸氏は、「グロースメカニズムを、IGSのど真ん中に位置づけていきたい」と語る。

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「広告キャンペーンを中心としたCX(顧客体験)設計は、一定期間の短いスパンで成果を捉えることも少なくありません。しかし、短期的な話題性を生むメカニズムと持続的な成長のメカニズムは異なる可能性があります。後者の視点を今まで以上に強く意識していきたいと考えています」(宍戸氏)

電通グループ内には、広告キャンペーンのような短期的な話題を喚起するノウハウはもちろん、事業の持続的な成長に必要なノウハウも存在している。しかし、それは暗黙知として属人化されていることが多いという。

「この暗黙知を可視化して形式知化したものがグロースメカニズムです」(宍戸氏)

形式知化が可能になったのには、大きな要因がある。ビッグデータの存在だ。プラットフォーム事業者が持っている大量のデータを、データクリーンルーム(※)などのセキュアな環境下で運用する体制を整えているという。

※データクリーンルーム(Data Clean Room):生活者個人を特定することなく、データサイエンティストがデータを安全に統合・分析できる“クラウド環境”のこと。

小高氏は、こう指摘する。

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「デジタル化によって、企業の生存戦略は大きく変わりました。デジタル先進企業は、当たり前のように顧客と事業との間でデジタルを介したフィードバックサイクルを構築し、事業成長を続けています。我々もプラットフォーム事業者が保有するデータを活用させていただき、業種や商材の特性にカスタマイズしながら、事業成長に貢献するための仕組みづくりを行っています。

あらゆる企業でカスタマーデータを重視した取り組みが進められていますが、カスタマーデータの活用はブランディングやマーケティングに留まらず、今や企業全体の包括的な戦略にまで影響を及ぼしています。グロースメカニズムは、データから導いてきたコンシューマーインテリジェンスをもとに、事業の成長、社会変革を促す可能性を持っています」(小高氏)

加えて宍戸氏は、「ID基点のデータ活用でROI(投資利益率)に本気でコミットしたい」と続けた。

「IDを基点として人の行動を把握することにより、マーケティング活動に対する反応を推計値ではなく確定値として精度高く計測できます。そして、短期的な効果だけではなく、マーケティング投資に対する中長期的な成長がバランス良く機能しているのかという視点でROIが測れるようになります」(宍戸氏)

グロースメカニズムは、不確実な時代に未来に向けての一歩を踏み出す武器となる

グロースメカニズムでは、正しい仮説構築が欠かせない条件となる。そこには、正しいデータ収集と解析が必須だ。では、裏を返せば、優秀なデータサイエンティストさえいれば、どの企業でもグロースメカニズムで企業の成長に寄り添えるのか。小高氏は明確に「それは難しい」と否定する。

「多くの場合で、解くべき課題が明確になっていないケースが多く、課題を定義しながら、それを解決するためにどのような顧客体験を生み出していくべきか。事業成長に寄り添うためには、どうしてもマーケッターの視点が必要です。

また、データクリーンルームにおいて日本有数のデータを利用させていただき、データサイエンティストが機械学習で解析を行っていますが、データの中から真実のルールを見極めたり、小さな芽からチャンスを見つけ出したりするのは高いセンスが求められます。データドリブンのなかにもクリエイティビティが求められる要素は大きく、ハイブリッドで掛け合わされてこそ大きな力を発揮すると考えています」(小高氏)

マーケッターの視点とコンシューマーインテリジェンスにおけるクリエイティビティ。小高氏の言葉は、電通グループの強みそのものだ。宍戸氏も「電通グループが、課題解決のアイデアやクリエイティビティを競争優位性の源泉としていることは揺るがない」と語る。

「データドリブンなアプローチとアイデア、クリエイティビティが相反するとは、全く考えていません。両方の視点があるべきです。ただ、データによる検証可能性を伴わない直感的、肌感覚な仮説に偏重しすぎると、あとからそれが事業成長にどう寄与しているのかを十分に検証・説明できないといった事態が生じます。クライアント企業に提案・実行する施策には必ずどのような形で仮説を精度高く検証するかの設計も組み込んだ統合的なグロースシナリオを磨き上げていきたいと思います」(宍戸氏)

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松村氏も「多様な視点を大切にしながら、検証可能な仮説を構築していくことが大切。生活者の実感に近い、リアルなグロースのKPIを導きだすことで、クライアント企業に伴走していきたい」と意気込む。小高氏は、「現在のグロースメカニズムはマーケティング領域の高度化による事業成長への貢献が中心。今後は、サービス開発や事業変革まで応用できるように拡張していきたい」と展望を語った。

「グロースメカニズムは、マーケット全体に通底する、ある種の普遍的な成長のルールを明らかにすること」と宍戸氏は語る。そして、このように話を締めた。

「状況の変化が早く、先行き不透明な時代。不確実性が高まっても、普遍的なルールがあれば、未来に向けた次の一手を打つうえでの基盤になります。3年後、5年後といった中期的な視点で、未来に向けての一歩を手助けするための大きな武器として、グロースメカニズムをクライアント企業のマーケティング活動に実装し、確かな事業成長をお手伝いできたらと考えています」(宍戸氏)


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