有害な社会規範、拙いリーダーシップ、不明確な職務分担などが、有害な職場カルチャーを助長している。
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- マサチューセッツ工科大学の調査によると、アメリカ人のおよそ9人に1人が、自分の職場は有害だと考えている。
- 有害な社会規範、拙いリーダーシップ、不明確な職務内容が、有害な職場カルチャーを助長しているという。
- この調査に携わったチャーリー・サルは「本当に有害な空気が蔓延している」とInsiderに語っている。
マサチューセッツ工科大学(MIT)スローン経営大学院が行った調査によると、アメリカの労働者の約3000万人(およそ9人に1人)が職場を有害だと感じているという。
この調査を行った2人の研究者のうちの1人、チャーリー・サル(Charlie Sull)は「本当に有害な空気が蔓延している」とInsiderに語っている。
「アメリカだけでも数千万人が影響を受けているということになる」
彼らの調査によると、組織内でこうした有害なカルチャーを生み出す主な要因は、有害な社会規範、拙いリーダーシップ、不明確な職務内容の3つだという。
これらの主要因を特定するにあたり、チャーリー・サルはMITの上級講師ドナルド・サル(Donald Sull)とともに、1000件の先行研究を分析し、グラスドア(Glassdoor)が収集した匿名の従業員による企業レビュー400万件以上のデータを用いた。
チャーリー・サルはInsiderの取材に応じ、これら3つの要因が職場でどのように現れるかを説明した。
有害な社会規範
企業内では、ある種の行動が従業員の間で常態化することがある。
サルは、有害な社会規範の中でも軽度な例として、社員が会議に時間通りに出席しなくても気にしないというカルチャーを挙げている。
「組織の誰もが人の時間を軽視し、時間を守らないとしたら、それは不健全であり、職場の有害性を助長する社会規範だ」とサルは言う。
「これこそまさに有害な社会規範というのは、例えば、従業員が何かに反対したら怒鳴ってもいいという考え方だ」
職場の社会規範は、幹部や管理職によって確立され、維持されることが多い。
しかし調査によると、それを始めた幹部とは関係なく、独自に生き永らえる規範もあることがわかったという。
「有害な規範は、それを始めた幹部がいなくなって長い時間を経ても、存続していることがある」と彼は指摘する。
「10年、15年前に有害なカルチャーが生まれ、その世代の幹部が去ったにもかかわらず、彼らが始めた社会規範が根強く残っているケースを見たことがある」
拙いリーダーシップ
幹部のみならず中間管理職も職場カルチャーの形成に一役買っていることも、この調査で明らかになった。
「もしこの2つのレベルのリーダーのうちいずれかが、態度が無礼、あるいは虐待的、えこひいき、人種や性別による差別など、不健全な社会規範を示した場合、企業カルチャーに非常に悪い影響を与えるだろう」
大規模な組織では、有害なカルチャーはサブカルチャーとして存在することがよくある。サルのこれまでの研究によると、このような有害性は、小規模なチーム内で不健全な社会規範を奨励する虐待的な管理職によって生まれることがあるという。
「幹部が必ずしも有害である必要はない。無関心や無知、無能によって、有害なカルチャーが育まれるのだ」
不明確な職務内容
従業員の役割が不明確な場合、過剰な仕事量につながる可能性がある。その結果、不確実性が高まり、多忙な業務に追われることになる。
職務内容がきちんと定義されていないと、従業員は自分の仕事にどのような責任やタスクが含まれているのか、上司は誰なのかが分からなくなる。これは従業員にとってストレスであり、燃え尽き症候群につながる可能性がある。
「職務が本質的に曖昧な場合、それが原動力の一つになって、有害な仕事のやり方を作り出す」
サルによると、健全な企業カルチャーが育つには、従業員自身が自分の仕事は自分で管理できると感じられることが重要だという。
「もし従業員が上司に逐一行動を管理され、自ら仕事をする自律性がなければ、それもまた苦痛や有害なカルチャーにつながる可能性がある」
(翻訳:仲田文子、編集:Toshihiko Inoue)