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ジブリパークが初公開、宮崎吾朗監督が構想当時をふり返る。「宮崎駿にハシゴを外され…」と苦笑いも。

宮崎吾朗監督と大村知事。(2022年10月12日、ジブリパーク)

宮崎吾朗監督と大村知事。(2022年10月12日、ジブリパーク)

撮影:小林優多郎

スタジオジブリの世界を再現した「ジブリパーク」(愛知県長久手市)が11月1日にオープンする。10月12日、メディア向けの内覧会が開かれ内部が初めて公開された。

現地では制作指揮を担った宮崎吾朗監督と愛知県の大村秀章知事が会見し、大村知事はスタジオジブリの作品を「現代日本が生んだ文化の最高峰」と表現。「人・生き物・地球に対する愛という意味で、愛・地球博とジブリは見事にシンクロする」「スタジオジブリのコンテンツがギュッと詰まったジブリパークを一日でも早くお見せしたい」と意気込みを語った。

宮崎吾朗監督はジブリパークの設立構想が生まれた5年前当時を振り返り、動機の一つが宮崎駿監督の“長編映画からの引退宣言”だったと話す。

その後、駿監督が長編映画の制作に復帰したこともあり、吾朗監督は「ところが相変わらず、また裏切られまして……」「ハシゴを外された気持ちでいっぱいなんですけれども……(笑)」とぼやきを交えて会場の笑いを誘いつつ、「たくさんの方に楽しんでいただけたらなと思っております」と期待を語った。

宮崎吾朗監督の冒頭コメント全文と質疑応答は以下の通り。

会見する宮崎吾朗監督。(2022年10月12日、ジブリパーク)

会見する宮崎吾朗監督。(2022年10月12日、ジブリパーク)

撮影:小林優多郎

宮崎吾朗監督:我々が知事からお話を頂いて5年以上の月日が立ちました。ちょうどこのジブリの大倉庫というのはかつて温水プールだったのですけど、その現場に最初に立ち入らせていただいたのが今からちょうど丸5年前。そこから5年経って今日の日を迎えられて本当に嬉しく思っています。

5年というのは長いのか短いのかよくわかりませんけど、私の経験でいうとジブリ美術館が丸3年だったんですね。

知事に最初「何年でできる?」と聞かれまして、「美術館が3年だったんで、5年ぐらいですかねぇ」と割と口からでまかせだったんだけれど、約束を守れてよかったなと思っています。

ジブリパークをつくることの動機の一つが宮崎駿監督という人が長編作品から引退すると宣言をしたの一つのきっかけになっていまして。

スタジオジブリが長編映画を作らないのだと。それを後世に残していくためにどうするんだろう……みたいな発想からジブリパークになっていったというところもあります。

なのでジブリのいろいろなものをギュッと詰め込んで多くの人にジブリ作品を忘れられないようにしたいという思いが当時はありました。

ところが相変わらず、また裏切られまして……(笑)

宮崎駿はいま長編映画を作っておりまして……。なんだろう……。ハシゴを外された気持ちでいっぱいなんですけれども……(笑)。

1期工事が終わってほっとして11月にオープンですが、まだ2期工事も残っています。すでに佳境でありまして、ぼーっとしている暇は我々にはないのですが、無事に知事との約束を果たして後期に間に合うと良いなと思っております。

ジブリパーク第1期オープンですが、沢山の方に楽しんでいただけたらなと思っております。宜しくお願いします。

── 建築素材でこだわった部分は。

宮崎:愛知県という場所で公共工事としてやるわけですから、そこは最初から意識していました。

木造の建築物がかなりありますが、そういったものはなるべく県産材を。特産品の瓦、タイル、焼き物も可能なものは地場のものを使うよう心がけてきました。

ジブリの大倉庫の中央階段にもタイルが沢山貼ってありますが、タイル作家の方が地元の瀬戸や常滑のタイル屋さんで焼かれたタイル。愛知のものがぎゅっと詰まった建物になっていると思います。

ジブリの大倉庫の「中央階段」

ジブリの大倉庫の「中央階段」

撮影:吉川慧

──パークへの今後の期待。持続可能性。(宮崎駿監督の)引退発言がきっかけの一つとあったが、拡張の予定は。

宮崎:まずは作ったものをきちんと維持していくことだと思うんですね。愛知万博のとき2005年に我々が最初にこの場所に関わったのはパビリオンとして「サツキとメイの家」を建てて、それが結果的に万博後も残していくということだった。

今回のお話も「サツキとメイの家」がきちんと残っていたからだと思うんですね。あんな小さな家ですけど毎年かなりの方が訪れてくださって、その関係が今回のパークにつながっていると思っています。

あまり拡大主義に走らずに、あるものをいい状態で維持していくことを心がけたほうが良いと思います。

その先に何か拡張とかがあるとすれば、大村知事であったり愛知県の皆さんが「3期も4期もやれ」というご要望があれば、やらざるを得ないのかなぁ……大変だなぁ……という風に思っていますが。それはまた将来の話だと思います。

『もののけ姫』でシシ神に首を返すシーンを体験できる展示より。

『もののけ姫』でシシ神に首を返すシーンを体験できる展示より。

撮影:小林優多郎、(C)Studio Ghibli

大村:ようやく1期オープンにこぎつけることができ、嬉しく思っています。

それと同じくらいのボリュームの2期工事もあるので、しっかり完成させて……。

その後、先々はスタジオジブリさんのコンテンツは本当にボリュームが巨大ですし、宮崎駿監督も新たな映画を作っておられるし、吾朗監督もこれかれいろいろな作品をつくられると思いますが。

そうした内容も含めて将来発展型でさらに進化・発展していくことはあり得るべきだと思います。そのためにもしっかり維持していきいたい。

県内外、世界中の皆さんから反響をいただいている。コロナもようやく少し収まってきて、昨日からインバウンド観光客もはいってきたので、世界中の方に楽しんでもらえるようジブリパークをつくり、育てていきたいと思っています。

「天空の城ラピュタ」のシーンを再現した体験展示。

「天空の城ラピュタ」のシーンを再現した体験展示。

撮影:小林優多郎、(C)Studio Ghibli

── 三鷹の森ジブリ美術館との連携は。

宮崎:ジブリ美術館って僕らにとってみると一つの御本山。大事な場所だと思う。ジブリ美術館というのはジブリ作品を扱っているというよりも、アニメーション映画をつくるということはこういうことだと宮崎駿が表現した空間だと思うんですね。

ジブリ美術館発の展示もたくさんありますので、それをより拡大・拡張したかたちでジブリパークでやるかたちでの連携がとれていくといいなと思っています。

ジブリの大倉庫をつくったきっかけが、スタジオジブリの色々な展示会・展覧会で色々な造形物をつくってしまって、それが溜まっている。ジブリ美術館で展示をやるたびに造形物をつくってしまってそれがやたらと倉庫に溜まって困っていたというのが原点なんですね(笑)。

今後もジブリ美術館ではやたらと造形物をつくってここに持ち込むんだと思うんですけど、そういう意味では既に連携が図られていると思います。

── 関東圏からのアクセスは不便という声も。

宮崎:直接運営に携わるものでは恐らくないと思うので、なんとも答えづらいところではあるですが。仕事も含めてしょっちゅう往復していますと東京から十分日帰りできる範囲だと思うんですね。駆け足だと思いますが。リニアができればなおのこと近くなる。

なんとなく遠いような気がしていますが「実は近いんだよ」というところがあるはず。大村知事はじめ愛知県の方々にぜひアピールしていただきたいところですし、「泊まる場所がもっと欲しいなあ」という意見も耳にしますのでそれはぜひたくさん用意していただきたい、というのが我々の願いです。


どんどこ森の「どんどこ堂」

どんどこ森の「どんどこ堂」

(C)Studio Ghibli


── ジブリ作品では自然と環境が重要な要素。今回の公園と映画、自然、デザインとの関係性についてどのようなことを考えたか。

宮崎:ジブリパークは、すでに公園としてある「愛・地球博記念公園」に、それ以前は愛知青少年公園という公園だったのですが、その場所につくることになったんですね。

まず考えたことは、ジブリパークをつくることが、すでにある公園の利用をどかしてしまったり、なくしてしまったり、やたら木を切ったり、開発したり、地形を改変することにつながってはいけないと思いました。なるべく影響が少なくて済む場所を選んでいます。

建物を建てるにあたってどうしても木が邪魔になる場合は、木そのものを移植することを含め、なるべく周りに負荷をかけないように心がけました。

私たちの考えとしては、建物は建物としてあるだけで美しいのではなく、横に木の一本でもあることによって初めて風景になっていくと思う。それも宮崎駿も常々言っていることで、私もそう思います。

ジブリパークをつくってみて、改めて周りが公園であることの恩恵。周りに木々があることで、建物がよく見える。まるで昔からあったようによく見えることは本当に素晴らしいことだと思います。

我々が気を遣ったというより、「我々が助けてもらっている」といったほうが正確だと思います。

『耳をすませば』に登場する「地球屋」のバイオリン工房。

『耳をすませば』に登場する「地球屋」のバイオリン工房。

撮影:吉川慧

はじまりは「愛・地球博」の“サツキとメイの家”だった。

どんどこ森の「サツキとメイの家」

どんどこ森の「サツキとメイの家」

撮影:吉川慧

2005年に愛知県長久手市で開かれた「愛・地球博(愛知万博)」の広大な跡地「モリコロパーク」。この中にジブリパークはつくられた。

ジブリと愛知県の関係が深まるきっかけとなったのも「愛・地球博」だった。『となりのトトロ』に登場する「サツキとメイの家」が再現され、万博終了後も保存されたこと。これが愛知県とジブリの関係性を深める経緯にもなった。

ジブリパークでは各地でジブリが開催している展覧会の造形物・展示物を保存する「ジブリの大倉庫」や、三鷹の森ジブリ美術館で上映されている短編作品が鑑賞できる「オリヲン座」、ジブリ作品の登場人物のような体験ができる展示などもある。

公式サイトではコンセプトについて、こう記している。

森と相談しながらつくっているスタジオジブリの世界を表現した公園です。

ジブリパークには、大きなアトラクションや乗り物はありません。

森や道をそのままに、自分の足で歩いて、風を感じながら、秘密を発見する場所です。

(「ジブリパーク」より)

パークは5つのエリアに分かれ、11月1日の“第1期開園”では「ジブリの大倉庫」エリア、『耳をすませば』の「地球屋」が再現された「青春の丘」エリア、『となりのトトロ』の世界観を表現した「どんどこ森」の3つがオープンする。入園にはエリアごとに日時指定の予約が必要

(取材・文:吉川慧、撮影:小林優多郎)

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